ヴァリアー編
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非情な思惑、
現ボスの言葉、
少女の涙、
全てに背中を押され、
彼は覚悟を決める。
XANXUSの企み
「な、何と………中から人が!!」
了平さんの声。
その場にいる誰もが、言葉を失う程驚いていた。
ボス、以外は。
超死ぬ気モードから戻ったツナが、やっとの事で口を開く。
「え………こ…この人………9代目!?」
「そんな………何故ここに!?」
バジルが叫ぶと同時に、救急箱を持ったリボーンが飛び出す。
あたしも…
行かなくちゃ。
『きゅ、9代目ぇっ!!!』
「何で、モスカから?」
座り込むツナ。
その左に降り立つリボーン。
あたしはツナの右に。
「おい、しっかりしろ!」
『9代目っ!!』
リボーンが呼びかけて、
あたしは手を握ったけど、
9代目は起きない。
「ちっ………モスカの構造、前に一度だけ見た事がある。」
『まさか、動力源に……?』
「あぁ………」
「ど、どーして!?」
ツナの言葉に反応したのは、ボスだった。
「どーしてじゃねーだろ!てめーが9代目を手にかけたんだぞ。」
「お、俺が……?」
ツナが自分の手を見つめ、
目を閉じた9代目を見つめ、
「応急処置で何とかなる傷じゃねぇ………」
リボーンの言葉を聞き、
震え始めた。
そんなツナに、ボスは尋ねる。
「誰だ?じじぃを容赦なくぶん殴ったのは。」
違う、
ツナのせいじゃないよ……
「誰だぁ?モスカごとじじぃを真っ二つに焼き切ってたのはよぉ。」
「そ、そんな………俺が…9代目を…………」
「違う…………」
自分を責めるツナの言葉を遮ったのは、
『9代目!!』
みんなが再び驚く。
「悪いのは、私だ。」
あたしの手を少しだけ握り返す9代目。
その弱々しさが、余計に涙を誘う。
「やっと会えたね、綱吉君………」
「9代目!!」
「久しぶりだね、檸檬。」
『はい……』
9代目はすぐに目線を逸らし、話し始める。
「すまない、こうなったのは全て私の弱さ故………私の弱さが、ザンザスを長い眠りから、目覚めさせてしまった。」
“眠り”……?
あたしと同じ疑問を持ったリボーンが、9代目に問いかける。
「眠りとはどーいう事だ?ザンザスは揺りかごの後ファミリーを抜け、ボンゴレの厳重な監視下に置かれたはずだぞ。」
「『揺りかご?』」
首をかしげるあたしとツナに、リボーンは説明してくれた。
揺りかごとは、8年前に起きたボンゴレ史上最大のクーデターの事で、
その首謀者は……
『ボス……?』
「あぁ。この事を知るのは、上層部と戦った超精鋭のみだがな。」
「ザンザスは止まったまま、眠り続けていたのだよ。恐ろしい程の、怒りと執念を増幅させて…………」
「え?ど、どーゆー……」
「一体何が……」
「ゴホッ…」
『9代目っ!!!無理なさらないで下さい!すぐ病院にお運びして………』
弱りきった9代目の手を、しっかりと握って。
放さないように。
「大丈夫ですか!?しっかりして下さい!!」
『9代目!』
荒い息をしつつ、9代目は再び口を開く。
「檸檬…………」
『はいっ……』
「この戦いに………よく耐えてくれたね。檸檬は強くなった。」
『いえ……』
「護りたいと思うモノと…自分の心を…護れる程に……」
『やめて下さい、あたしはっ…………!』
「檸檬が人を好きになってくれて………私は嬉しいよ。」
違う、
違うんです。
確かに、全部護りたい。
あたしの好きなモノ、
あたしの好きな場所、
あたしの好きな人達。
その為に強くなった。
だけど、
だけど……
『9代目、あたしはっ…………!貴方を護れなきゃ意味がないっ!!』
どうしてだろう。
あたしの護りたいモノは、
場所は、
人は、
いつも簡単に傷付いて……
あたしに、
それを未然に防ぐ事は出来ないままで。
そんなの、イヤなのに。
9代目の手を更に強く握る。
消えないで。
温かさを、失わないで。
「綱吉君………」
「無茶しないで下さいっ!!」
「君の事はいつもリボーンから聞いていたよ。」
その言葉に、ツナは目を見開く。
「好きな女の子の事や、学校の事、友達の事………君はマフィアのボスとしては、あまりにも不釣り合いな心を持った子だ。」
握っている9代目の手に力がかかり、
あたしはそうっと放す。
その手は、ツナの額へ向かう。
「君が一度だって望んで戦っていない事も知ってるよ。いつも眉間にシワを寄せ……祈るように拳を振るう。」
今、この時も、
人を想う為に出来るシワが、ツナの額に。
「だからこそ私は君を…ボンゴレ10代目に選んだ………そして…檸檬を託した。」
次の瞬間、9代目の人差し指から死ぬ気の炎。
ツナの脳内に流れる映像が、
何故かあたしにも分かった。
「(あったかくて、懐かしい………)」
家光さんと、
奈々さんと、
9代目。
その膝に乗っているのは、
小さい小さいツナ。
「(俺………この人を知ってる……!!)」
『(ツナ……)』
直後に弱まる9代目の炎。
ツナとあたしの目尻には既に涙が溜まり、
溢れて来た。
「すまない………」
かなり弱った9代目の声。
「だが君で……良かった………」
「あ………」
9代目の指が、ツナの額から離れる。
ツナはその手を受け止めて、握りしめる。
「待って………!!」
それでも、閉じられた目は開かない。
「そんな、待って下さい!!」
『イヤだっ!9代目!!』
「9代目ーーー!!!」
『いやっ…………いやーっ!!!』
涙が、止まらない。
ホントにあたしは、無力だ。
泣く事しか出来ないなんて。
ショックで震えが止まらないツナに、ボスから非情な言葉が。
「よくも9代目を!!!」
吃驚して、あたしとツナはボスの方を見る。
「9代目のへの卑劣な仕打ちは実子であるザンザスと、崇高なるボンゴレの精神への挑戦と受け取った!!」
「な!??」
『ボス!!?』
「父の胸の焼き傷が動かぬ証拠だ!!ボス殺しの前にはリング争奪戦など無意味!!」
まさか…
「俺はボスである我が父の為、そしてボンゴレの未来の為に、」
まさか……
「貴様を殺し、仇を討つ!!」
『え……?』
「な、なに!?」
どうして?
信じられないよ、ボス。
嘘だって言って。
どうして9代目にこんな事したの?
「何言ってやがる!あいつが9代目を!!」
「これが狙いだったんだな。」
「え!?」
リング争奪戦で普通に勝っても、
揺りかごの事を知ってる人が反抗する。
だから、
ツナを悪役にして仇を討つ事で、
みんなから絶対の信頼を得ようと…
同時に、
自分が最も強いと証明出来る。
「ではザンザスは、ボスになるのと同時に独裁体勢を作る為に!?」
「あぁ、仕掛けられた罠だったんだ。」
モスカの暴走を利用して、
ツナに9代目を傷つけさせる……
「そんな……」
『そんなの………』
「そんな事の為に………!!」
『9代目ぇ………』
悲しみで包まれるその場を、チェルベッロが切り裂く。
「憶測での発言は慎んで下さい、リボーン。」
「全ての発言は我々が公式に記録しています。」
「あいつら……」
「やはりチェルベッロはザンザス側に付いてやがったんだ!!」
武と隼人が驚いたけど、リボーンは静かにこう言っただけ。
「好きにしやがれ、俺はもうキレてんだ。」
その雰囲気に、チェルベッロも背筋を凍らせる。
あたしは、思い切ってボスに聞いた。
『ボス、どうして………?』
あたし、信じてたのに。
9代目も、ボスも、信じてたのに。
「どうして、だぁ?檸檬、その老いぼれはお前が思ってる程イイ奴じゃねぇ。」
『何言って………!!』
「檸檬なら分かるだろ?親ってのは、実の子供にとっては最低な存在なんだぜ?」
『な……!』
「檸檬の親だって、そうだったろ?」
『やめて………』
そんな事、言わないで。
心臓の鼓動が早くなる。
息苦しくなる。
「檸檬が稼いだ金を奪って、」
『いや………』
「賭け仲間に奢って、太っ腹って評判だったらしいぜ?」
『やめてぇ………』
震えが止まらない。
ぎゅっと目を瞑る。
「その老いぼれのように、周りの奴からは絶対の信頼を得て、」
掘り返される、つらい日々。
閉じ込めた記憶。
もう、イヤなのに。
---
------
-----------
アメリカの、裏の路地。
1人で暮らしていたあたし。
バンッ、
突然開かれるドア。
---『誰!?』
---「よぉ、檸檬。」
---『お父さんっ………!』
途端に震え上がる体。
あたしは、父に逆らう術を知らない。
---「こないだの賞金、半分よこせ。」
---『そんなの……!』
---「イヤなら、7割だ。」
向けられたのは、一丁の黒いピストル。
あたしは、父に逆らう術を知らなかった。
いつもなら、リズムを読んで倒せる。
けど、
父に限ってはそれも無理だった。
だって、
---「俺に逆らおうなんざ思うなよ、檸檬。」
---『はい………』
だって父は、
---「お前のリズムを読む事なんざ、簡単に出来るんだからな。」
この世界で唯一、
あたしと同じ戦い方をする人だったから。
---
------
-----------
甦る記憶に、震えが止まらない。
ボスは尚も、あたしに揺さぶりをかける。
「相当な暴力、受けたんだよなぁ?」
『やめてぇっ!!!』
「XANXUS!!!」
あたしは頭を抱え込んで耳を塞ぐ。
同時に、ツナがボスの名を呼んだ。
すっと立ち上がって、
あたしとボスの間に立つ。
「これ以上…檸檬を傷つけるな………」
『ツナ………』
涙が止まらなくて、
視界が滲む中に見えた、
ツナの姿。
「そのリングは、返してもらう。」
いつもと違う。
2本の足で、地面をしっかり踏みしめて。
あたしを、
庇うように立ってくれてる。
いつの間に、
こんなに強くなったの?
そんな思いもあったけど、
同時に、
あぁだから、
9代目はツナを選んだんだ。
って思った。
「お前に9代目の跡は、継がせない!!」
涙は止まらない。
荒い息もそのまま。
だけど、
心の何処かで安堵している自分がいた。
現ボスの言葉、
少女の涙、
全てに背中を押され、
彼は覚悟を決める。
XANXUSの企み
「な、何と………中から人が!!」
了平さんの声。
その場にいる誰もが、言葉を失う程驚いていた。
ボス、以外は。
超死ぬ気モードから戻ったツナが、やっとの事で口を開く。
「え………こ…この人………9代目!?」
「そんな………何故ここに!?」
バジルが叫ぶと同時に、救急箱を持ったリボーンが飛び出す。
あたしも…
行かなくちゃ。
『きゅ、9代目ぇっ!!!』
「何で、モスカから?」
座り込むツナ。
その左に降り立つリボーン。
あたしはツナの右に。
「おい、しっかりしろ!」
『9代目っ!!』
リボーンが呼びかけて、
あたしは手を握ったけど、
9代目は起きない。
「ちっ………モスカの構造、前に一度だけ見た事がある。」
『まさか、動力源に……?』
「あぁ………」
「ど、どーして!?」
ツナの言葉に反応したのは、ボスだった。
「どーしてじゃねーだろ!てめーが9代目を手にかけたんだぞ。」
「お、俺が……?」
ツナが自分の手を見つめ、
目を閉じた9代目を見つめ、
「応急処置で何とかなる傷じゃねぇ………」
リボーンの言葉を聞き、
震え始めた。
そんなツナに、ボスは尋ねる。
「誰だ?じじぃを容赦なくぶん殴ったのは。」
違う、
ツナのせいじゃないよ……
「誰だぁ?モスカごとじじぃを真っ二つに焼き切ってたのはよぉ。」
「そ、そんな………俺が…9代目を…………」
「違う…………」
自分を責めるツナの言葉を遮ったのは、
『9代目!!』
みんなが再び驚く。
「悪いのは、私だ。」
あたしの手を少しだけ握り返す9代目。
その弱々しさが、余計に涙を誘う。
「やっと会えたね、綱吉君………」
「9代目!!」
「久しぶりだね、檸檬。」
『はい……』
9代目はすぐに目線を逸らし、話し始める。
「すまない、こうなったのは全て私の弱さ故………私の弱さが、ザンザスを長い眠りから、目覚めさせてしまった。」
“眠り”……?
あたしと同じ疑問を持ったリボーンが、9代目に問いかける。
「眠りとはどーいう事だ?ザンザスは揺りかごの後ファミリーを抜け、ボンゴレの厳重な監視下に置かれたはずだぞ。」
「『揺りかご?』」
首をかしげるあたしとツナに、リボーンは説明してくれた。
揺りかごとは、8年前に起きたボンゴレ史上最大のクーデターの事で、
その首謀者は……
『ボス……?』
「あぁ。この事を知るのは、上層部と戦った超精鋭のみだがな。」
「ザンザスは止まったまま、眠り続けていたのだよ。恐ろしい程の、怒りと執念を増幅させて…………」
「え?ど、どーゆー……」
「一体何が……」
「ゴホッ…」
『9代目っ!!!無理なさらないで下さい!すぐ病院にお運びして………』
弱りきった9代目の手を、しっかりと握って。
放さないように。
「大丈夫ですか!?しっかりして下さい!!」
『9代目!』
荒い息をしつつ、9代目は再び口を開く。
「檸檬…………」
『はいっ……』
「この戦いに………よく耐えてくれたね。檸檬は強くなった。」
『いえ……』
「護りたいと思うモノと…自分の心を…護れる程に……」
『やめて下さい、あたしはっ…………!』
「檸檬が人を好きになってくれて………私は嬉しいよ。」
違う、
違うんです。
確かに、全部護りたい。
あたしの好きなモノ、
あたしの好きな場所、
あたしの好きな人達。
その為に強くなった。
だけど、
だけど……
『9代目、あたしはっ…………!貴方を護れなきゃ意味がないっ!!』
どうしてだろう。
あたしの護りたいモノは、
場所は、
人は、
いつも簡単に傷付いて……
あたしに、
それを未然に防ぐ事は出来ないままで。
そんなの、イヤなのに。
9代目の手を更に強く握る。
消えないで。
温かさを、失わないで。
「綱吉君………」
「無茶しないで下さいっ!!」
「君の事はいつもリボーンから聞いていたよ。」
その言葉に、ツナは目を見開く。
「好きな女の子の事や、学校の事、友達の事………君はマフィアのボスとしては、あまりにも不釣り合いな心を持った子だ。」
握っている9代目の手に力がかかり、
あたしはそうっと放す。
その手は、ツナの額へ向かう。
「君が一度だって望んで戦っていない事も知ってるよ。いつも眉間にシワを寄せ……祈るように拳を振るう。」
今、この時も、
人を想う為に出来るシワが、ツナの額に。
「だからこそ私は君を…ボンゴレ10代目に選んだ………そして…檸檬を託した。」
次の瞬間、9代目の人差し指から死ぬ気の炎。
ツナの脳内に流れる映像が、
何故かあたしにも分かった。
「(あったかくて、懐かしい………)」
家光さんと、
奈々さんと、
9代目。
その膝に乗っているのは、
小さい小さいツナ。
「(俺………この人を知ってる……!!)」
『(ツナ……)』
直後に弱まる9代目の炎。
ツナとあたしの目尻には既に涙が溜まり、
溢れて来た。
「すまない………」
かなり弱った9代目の声。
「だが君で……良かった………」
「あ………」
9代目の指が、ツナの額から離れる。
ツナはその手を受け止めて、握りしめる。
「待って………!!」
それでも、閉じられた目は開かない。
「そんな、待って下さい!!」
『イヤだっ!9代目!!』
「9代目ーーー!!!」
『いやっ…………いやーっ!!!』
涙が、止まらない。
ホントにあたしは、無力だ。
泣く事しか出来ないなんて。
ショックで震えが止まらないツナに、ボスから非情な言葉が。
「よくも9代目を!!!」
吃驚して、あたしとツナはボスの方を見る。
「9代目のへの卑劣な仕打ちは実子であるザンザスと、崇高なるボンゴレの精神への挑戦と受け取った!!」
「な!??」
『ボス!!?』
「父の胸の焼き傷が動かぬ証拠だ!!ボス殺しの前にはリング争奪戦など無意味!!」
まさか…
「俺はボスである我が父の為、そしてボンゴレの未来の為に、」
まさか……
「貴様を殺し、仇を討つ!!」
『え……?』
「な、なに!?」
どうして?
信じられないよ、ボス。
嘘だって言って。
どうして9代目にこんな事したの?
「何言ってやがる!あいつが9代目を!!」
「これが狙いだったんだな。」
「え!?」
リング争奪戦で普通に勝っても、
揺りかごの事を知ってる人が反抗する。
だから、
ツナを悪役にして仇を討つ事で、
みんなから絶対の信頼を得ようと…
同時に、
自分が最も強いと証明出来る。
「ではザンザスは、ボスになるのと同時に独裁体勢を作る為に!?」
「あぁ、仕掛けられた罠だったんだ。」
モスカの暴走を利用して、
ツナに9代目を傷つけさせる……
「そんな……」
『そんなの………』
「そんな事の為に………!!」
『9代目ぇ………』
悲しみで包まれるその場を、チェルベッロが切り裂く。
「憶測での発言は慎んで下さい、リボーン。」
「全ての発言は我々が公式に記録しています。」
「あいつら……」
「やはりチェルベッロはザンザス側に付いてやがったんだ!!」
武と隼人が驚いたけど、リボーンは静かにこう言っただけ。
「好きにしやがれ、俺はもうキレてんだ。」
その雰囲気に、チェルベッロも背筋を凍らせる。
あたしは、思い切ってボスに聞いた。
『ボス、どうして………?』
あたし、信じてたのに。
9代目も、ボスも、信じてたのに。
「どうして、だぁ?檸檬、その老いぼれはお前が思ってる程イイ奴じゃねぇ。」
『何言って………!!』
「檸檬なら分かるだろ?親ってのは、実の子供にとっては最低な存在なんだぜ?」
『な……!』
「檸檬の親だって、そうだったろ?」
『やめて………』
そんな事、言わないで。
心臓の鼓動が早くなる。
息苦しくなる。
「檸檬が稼いだ金を奪って、」
『いや………』
「賭け仲間に奢って、太っ腹って評判だったらしいぜ?」
『やめてぇ………』
震えが止まらない。
ぎゅっと目を瞑る。
「その老いぼれのように、周りの奴からは絶対の信頼を得て、」
掘り返される、つらい日々。
閉じ込めた記憶。
もう、イヤなのに。
---
------
-----------
アメリカの、裏の路地。
1人で暮らしていたあたし。
バンッ、
突然開かれるドア。
---『誰!?』
---「よぉ、檸檬。」
---『お父さんっ………!』
途端に震え上がる体。
あたしは、父に逆らう術を知らない。
---「こないだの賞金、半分よこせ。」
---『そんなの……!』
---「イヤなら、7割だ。」
向けられたのは、一丁の黒いピストル。
あたしは、父に逆らう術を知らなかった。
いつもなら、リズムを読んで倒せる。
けど、
父に限ってはそれも無理だった。
だって、
---「俺に逆らおうなんざ思うなよ、檸檬。」
---『はい………』
だって父は、
---「お前のリズムを読む事なんざ、簡単に出来るんだからな。」
この世界で唯一、
あたしと同じ戦い方をする人だったから。
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甦る記憶に、震えが止まらない。
ボスは尚も、あたしに揺さぶりをかける。
「相当な暴力、受けたんだよなぁ?」
『やめてぇっ!!!』
「XANXUS!!!」
あたしは頭を抱え込んで耳を塞ぐ。
同時に、ツナがボスの名を呼んだ。
すっと立ち上がって、
あたしとボスの間に立つ。
「これ以上…檸檬を傷つけるな………」
『ツナ………』
涙が止まらなくて、
視界が滲む中に見えた、
ツナの姿。
「そのリングは、返してもらう。」
いつもと違う。
2本の足で、地面をしっかり踏みしめて。
あたしを、
庇うように立ってくれてる。
いつの間に、
こんなに強くなったの?
そんな思いもあったけど、
同時に、
あぁだから、
9代目はツナを選んだんだ。
って思った。
「お前に9代目の跡は、継がせない!!」
涙は止まらない。
荒い息もそのまま。
だけど、
心の何処かで安堵している自分がいた。