ヴァリアー編
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何者にも捕われる事のない、
孤高の浮き雲。
その言葉を聞いた時、
檸檬しかいねぇと思った。
本気になった檸檬は、
相手のリズムなんて聞きゃしねぇ。
自分のリズムを叩き込む。
相手の動きに捕われる事なく。
雲雀恭弥VS.本当の雲
「ふぅん。」
しばらくの沈黙の後、恭弥が口火を切った。
そして、雲のハーフリングをチェルベッロから受け取る。
でも、
あたしの手はまだ握られてる。
『恭弥………』
「檸檬、次は勝つから。」
『え………?』
何で?
何で戦う気満々でトンファー握ってるの?
なのに…
どうして手を繋いだままなの?
「檸檬様。」
チェルベッロはあたしにリングを差し出す。
隣の恭弥を見ると、リングを首から下げていた。
あたしは…
ボスの方を見る。
「やんねーのか?」
どうしてあたしを選んだの?
あたしは……
「檸檬様?」
『ふふっ……』
気が付いたら、口角が上がってた。
あたしは、逃げてたんだね。
中立でいる事で、逃げてた。
分かってた。
ツナ達が勝てば、みんな助かるんだって事くらい。
分かってた。
ボスが勝ったら、みんなが消えてしまう事くらい。
あたしは、
恭弥に勝って欲しい。
そんな思いに、
今更気付かされた。
『恭弥、』
「何?」
『いい勝負をしましょーね♪』
「…………勿論だよ。」
笑顔でそう言ったら、恭弥はあたしの手を放した。
ここで、道が分かれるんだ。
それぞれの、雲の守護者として。
『引き受けます。』
「「「檸檬!!?」」」
隼人、武、了平さんの声がして、やっぱりちょっと不安になったけど、
信じる事にしたの。
「リングです。」
『ありがと♪』
リングを首に掛けて、恭弥と向かい合って立つ。
信じるよ。
恭弥があたしに勝つって。
「それでは改めて。雲のリング:雨宮檸檬VS雲雀恭弥、勝負開始!!」
コールがかかった。
バッ、
あたしはすぐ空中に舞い上がる。
あぁ、
だからボスはあたしにこの服を渡したんだね。
戦えるように。
『真面目に行くよ♪』
CRAZY DANCER & six abilities
発動-----
空中から恭弥に向かってナイフを投げた。
やっぱり上手にかわしてる。
でも……
シュシュッ、
「!?」
恭弥の腕に縦の切り傷が出来た。
それは、間違いなくあたしのナイフが作ったモノ。
『(あ……)』
自分でやった事なのに、
罪悪感を感じる。
やっぱりあたし…
恭弥を傷つけるのが怖いよ。
それでも、やるって決めた。
だから、舞い踊る。
「おい……どーゆー事だ?さっきから檸檬、空中にい続けてる!!?」
「獄寺にもそう見えっか?」
「どうなっているのだ!!?」
3人の言う通り、檸檬は初めに跳躍してから地面に降り立ってなかった。
その様子を見て、レヴィとベルも。
「流石、“浮き雲”だな。檸檬が地に足を付く事はない。」
「うししっ♪お姫さまステキーっvV」
『もたもたしてると、傷が増えるよ?恭弥。』
「うるさいよ、檸檬。それより、そんな事してると疲れない?」
「「「そんな事!!?」」」
恭弥の言葉に隼人達が驚いてた。
『別にあたしは疲れないよ♪』
「ふぅん。」
「雲雀の奴、檸檬の動きが見えてると言うのか!?」
---
------
空中に、まるで見えない壁があるみたいな俊敏な動き。
多分、それは檸檬の力。
下降の際と着地の際に速さを上げて、瞬間移動をする。
僕には見えるけど、あの草食動物達は檸檬のスピードに追いつけないみたいだね……。
とりあえず、この状況下じゃ攻撃しにくい。
まずは檸檬を地上に引き戻さなきゃね。
僕はトンファーを1つ、檸檬の足付近に投げ上げた。
檸檬は“見えない壁”の代わりに、僕のトンファーを踏み台にする。
けど、それが狙い。
トンファーに蹴る力が吸収されて、檸檬の空中での動きが鈍る。
『あ。』
そして、通常のスピードで降下するしかなくなる。
『Oh, It's end of flying ?』
(あら、飛ぶのは終わり?)
そう言ってスタッと着地した檸檬に、すかさず攻撃を開始する。
まぁ、避けられるけどね。
『(やるじゃん、恭弥♪)』
今度は地上戦。
あたしが全力を出しつつ恭弥に勝たせる方法……
飛びながら考えたけど、やっぱりなかった。
恭弥が強くなった事を信じるしかない。
ここで手を抜いたら、ツナ達の負け。
ここであたしが勝ったら、ツナ達の負け。
そんなの、絶対絶対ダメだと思うから。
ってか、さっきから恭弥の攻撃が甘い………?
あたしが相手だから?
もう一度空中に上がろうとした。
その時。
「もう、それはさせないよ。」
『え?』
恭弥の呟きに、一瞬注意を引かれたあたし。
でも次の瞬間、何かが落ちて来る気配がした。
『わっ…と。』
あたしはギリギリでそれを避ける。
落ちて来たのは、
少し前に恭弥が投げ上げて、あたしが空中で踏み台にしたトンファーだった。
「これ、何気に頭脳戦だね♪」
ベルの言葉に疑問符を浮かべるレヴィ。
「ぬ?何故だ?」
「アンポンタンにはわかんねーよ。」
「レヴィ・ア・タンだ!!」
「黙れムッツリ。」
---
------
------------
その頃、ツナの修業場では。
ポオオ…
フッ、
「お。」
「え……」
「あ………」
大きな光が広がって消えて、
その中にいたリボーン、ツナ、バジルはそれぞれ驚きの声をあげる。
「今…俺………」
「やったなツナ。それが死ぬ気の零地点突破だ。」
「やりましたね!!すごいですよ沢田殿!!」
駆け寄るバジルに、
「1人じゃ絶対無理だった、バジル君のおかげだよ!ありがとう!」
お礼を言うツナ。
そして、リボーンが言う。
「よしツナ、行くぞ。」
「うん。」
頷いたツナの瞳は、決意に満ちあふれていて。
「行こう、並中へ。」
---
------
----------
恭弥はトンファーを拾った。
「自分で蹴ったのに忘れてたのかい?檸檬。」
『うん!忘れてた♪』
そう言いながら、ナイフを握り直した。
やっぱ恭弥相手じゃ、一筋縄で行かないよね。
いつの間にか、
戦いを楽しみ始めてる自分がいた。
『(よしっ!)』
あたしはまた、恭弥の目に向かってナイフを投げる。
そう、あの日と同じように。
一瞬恭弥の視界が埋まり、あたしはその隙に恭弥の真上に飛び上がる。
あの日は後ろに回ったけど、今日は真上。
同じ攻め方なんて絶対にしない。
「(上………いや…違う。)」
目を閉じた恭弥。
そうそう、あたしの動きを追っちゃダメ。
あたしの動きを読まなくちゃ。
でも………
本当に読める?
そろそろ着地。
前と後ろ、どっちに降りるかギリギリまで悩む。
『(決めたっ♪)』
あたしが恭弥の後ろに舞い降りた、その時。
ヒュンッ、
『え!??』
あたしの首にあったチェーンが割れて、
指輪が宙に浮いた。
時間は何故か、
ゆっくりゆっくり流れる。
「もらうよ。」
『恭弥っ………!!』
恭弥のトンファーからは、いつの間にか針が出てて、
それがあたしのリングのチェーンを壊したみたい。
『(リング………守らなきゃ!)』
突然とは言え、ボスがあたしを雲の守護者に選んだんだ。
弾け飛ぶリングに向かって、
腕を伸ばす。
『(取らなきゃ………!)』
けど、
恭弥の手の方が、5センチくらい長かった。
パシッ……
カチッ……
リングをキャッチして、1つにはめた。
『あ………』
力が、抜けた。
ペタッとその場に座り込む。
何でだろ。
あたしのナイフで数カ所に切り傷がある恭弥が勝って、
負けたはずのあたしは無傷なまま。
呆然としてたら、
いつの間にか泣いてる事に気が付いた。
「勝者、雲雀恭弥。」
「やっぱコレ、いらない。」
恭弥はまたチェルベッロにリングを渡し、あたしに歩み寄る。
「怪我、無いよね。」
『……………うん。』
恭弥のバカ。
思いっきり手ぇ抜かれた気分。
「これで、お合いこだね。」
『…………そうだね。』
あたしは力なく笑った。
と、次の瞬間。
『きゃっ!?』
ドサッ、
急に恭弥に押し倒される。
『きょ、恭弥??』
吃驚して恭弥を見ると、
少し表情を歪ませていた。
まさかと思って見てみると、恭弥の足に傷が………
『恭弥っ!!!』
頑張って起き上がり、恭弥を座らせる。
そして、横を見ると………
『モスカ!!?』
壊れたはずのモスカが、再び動いて暴走していた。
急いで恭弥の止血をして、俊足でグラウンドの隅に運ぶ。
『(あっ………!)』
ベル、確か松葉杖じゃん!
隼人達は………足は大丈夫だよね………
『ここにいて、恭弥。』
あたしは俊足でベルの方に向かった。
『ベルっ!!』
「檸檬!!」
『あたしに掴まって!レヴィ、こっち!』
横にいたレヴィにも声を掛けた、その時。
シュルルル…
モスカの撃った弾がこっちに来た。
「何だ?」
レヴィは途中で立ち止まる。
あたしは気付かず俊足で遠くに非難した。
『ベル、怪我ない?』
「しし♪サンキュー檸檬♪」
ベルはあたしのおでこにキスをした。
「大丈夫スか?笹川兄!!」
「何が起きているのだ!?」
並盛メンバーが驚く中、ボスは1人微笑を浮かべる。
「何てこった………俺はてっきり壊れたかと思ってたが………どうやら制御不能になったみたいだな。」
「暴走だと!!?」
モスカは、一気に弾を発射する。
その姿はまさしく、戦闘用兵器だった。
『モスカ………!!』
---
------
------------
イタリアにて。
ボンゴレ本部の地下水道を歩いて行く門外顧問とモレッティ。
「連れて来ましたよ………」
モレッティが止まり、そこにいた人物に光が当てられる。
「「「親方様!!!」」」
家光の腹部からはおびただしい量の血が出ていて、息も荒かった。
「笑え………このザマだ。」
「動かないで下さい!」
「俺とした事が………弾が急所をかすめた所でやっと、こいつが影だと気づくとはな…………」
家光の視線の先には、動きを封じられて気を失ってる9代目、らしき男。
「偽者!!?」
門外顧問のメンバーとモレッティは驚きを隠せない。
「では、9代目は何処へ?」
「部屋で1週間前の9代目専用ジェット機のスケジュールを見つけた。」
「………確かその頃、9代目専用機はエンジン整備の為ドッグに………」
「そいつは違う。」
モレッティの言葉を遮り、家光は言った。
「日本に、飛んでいる。」
---
------
-----------
モスカの暴走で、学校は火と煙の海になった。
爆発音も絶えない。
「あ、圧縮粒子砲!?」
「無差別攻撃ではないか!このままでは全員オダブツだぞ!!」
隼人と了平さんが叫ぶ。
そんな中ボスは、やっぱり笑っていた。
「ぶはーはっは!!こいつは大惨事だな!!!」
『ボス………!』
何で?
嫌だ、嫌だよ。
『止めなくちゃ……!』
「檸檬、行っちゃダメ。」
『ベル!?』
ベルがあたしの手を掴んで、放してくれない。
『ベルお願い、行かせて。』
「俺、檸檬が危ない目に合うのヤだし。」
『あたしはいいの!早く止めなくちゃみんなが……!』
「いいワケないじゃん。檸檬が怪我すんのが、俺は一番ヤなんだよ。」
ベルは、更に強くあたしの手を掴む。
『でも……』
「お願い檸檬、俺の側から離れないでよ。」
『ベル……』
何故か、動けなくなってしまった。
「おい!!フィールド内は危険だぞ!!」
了平さんが叫ぶ声が聞こえて、あたしはそっちを向いた。
すると…
『髑髏っ!!』
モスカの弾から逃れようと走っていた髑髏は、崩れた有刺鉄線を抜けて、フィールド内に入っていた。
そして、恐れていた事態が起きる。
ピーッ…
『危ない!!』
地雷の警報音が辺りに響く。
それでもベルは、あたしの手を放してくれなかった。
『髑髏!逃げて!!』
ドガンッ、
新たに立ち上る黒い煙。
その横から現れた3つの影。
「千種………犬………!」
「ったく、世話のかかる女らびょん。」
犬ちゃんと千種が、髑髏を守るように覆いかぶさっていた。
ほっと胸を撫で下ろす。
でも、
ウィィィィ……
「ゲッ!」
ガトリングが3人を捉え、発射用意をする。
そして、もう一方の煙の向こうからは、
『モスカ!!』
「しまった!!」
「やべぇ!」
「挟まれた!!」
圧縮粒子砲の発射準備が始まる。
「くそっ!」
3人は縮こまれるだけ縮こまる。
けど、それでかわせる砲撃じゃない。
『髑髏!犬ちゃん!千種!』
と、その時、
一瞬だけ視界に入った、見覚えのある炎。
ガガガガ、
ブオッ、
容赦なく放たれた2つの攻撃は、炎のバリアにぶち当たった。
モスカの攻撃は流れを変え、
ガトリングの弾は溶けて落ちる。
その場にいる誰もが、その光景に驚く。
勿論、ボスも。
「あの炎………!」
制止したモスカとガトリング。
髑髏が振り向き救世主を見る。
「………………ボス。」
そのグローブに宿した炎は、
瞳に宿した炎に似ていた。
孤高の浮き雲。
その言葉を聞いた時、
檸檬しかいねぇと思った。
本気になった檸檬は、
相手のリズムなんて聞きゃしねぇ。
自分のリズムを叩き込む。
相手の動きに捕われる事なく。
雲雀恭弥VS.本当の雲
「ふぅん。」
しばらくの沈黙の後、恭弥が口火を切った。
そして、雲のハーフリングをチェルベッロから受け取る。
でも、
あたしの手はまだ握られてる。
『恭弥………』
「檸檬、次は勝つから。」
『え………?』
何で?
何で戦う気満々でトンファー握ってるの?
なのに…
どうして手を繋いだままなの?
「檸檬様。」
チェルベッロはあたしにリングを差し出す。
隣の恭弥を見ると、リングを首から下げていた。
あたしは…
ボスの方を見る。
「やんねーのか?」
どうしてあたしを選んだの?
あたしは……
「檸檬様?」
『ふふっ……』
気が付いたら、口角が上がってた。
あたしは、逃げてたんだね。
中立でいる事で、逃げてた。
分かってた。
ツナ達が勝てば、みんな助かるんだって事くらい。
分かってた。
ボスが勝ったら、みんなが消えてしまう事くらい。
あたしは、
恭弥に勝って欲しい。
そんな思いに、
今更気付かされた。
『恭弥、』
「何?」
『いい勝負をしましょーね♪』
「…………勿論だよ。」
笑顔でそう言ったら、恭弥はあたしの手を放した。
ここで、道が分かれるんだ。
それぞれの、雲の守護者として。
『引き受けます。』
「「「檸檬!!?」」」
隼人、武、了平さんの声がして、やっぱりちょっと不安になったけど、
信じる事にしたの。
「リングです。」
『ありがと♪』
リングを首に掛けて、恭弥と向かい合って立つ。
信じるよ。
恭弥があたしに勝つって。
「それでは改めて。雲のリング:雨宮檸檬VS雲雀恭弥、勝負開始!!」
コールがかかった。
バッ、
あたしはすぐ空中に舞い上がる。
あぁ、
だからボスはあたしにこの服を渡したんだね。
戦えるように。
『真面目に行くよ♪』
CRAZY DANCER & six abilities
発動-----
空中から恭弥に向かってナイフを投げた。
やっぱり上手にかわしてる。
でも……
シュシュッ、
「!?」
恭弥の腕に縦の切り傷が出来た。
それは、間違いなくあたしのナイフが作ったモノ。
『(あ……)』
自分でやった事なのに、
罪悪感を感じる。
やっぱりあたし…
恭弥を傷つけるのが怖いよ。
それでも、やるって決めた。
だから、舞い踊る。
「おい……どーゆー事だ?さっきから檸檬、空中にい続けてる!!?」
「獄寺にもそう見えっか?」
「どうなっているのだ!!?」
3人の言う通り、檸檬は初めに跳躍してから地面に降り立ってなかった。
その様子を見て、レヴィとベルも。
「流石、“浮き雲”だな。檸檬が地に足を付く事はない。」
「うししっ♪お姫さまステキーっvV」
『もたもたしてると、傷が増えるよ?恭弥。』
「うるさいよ、檸檬。それより、そんな事してると疲れない?」
「「「そんな事!!?」」」
恭弥の言葉に隼人達が驚いてた。
『別にあたしは疲れないよ♪』
「ふぅん。」
「雲雀の奴、檸檬の動きが見えてると言うのか!?」
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空中に、まるで見えない壁があるみたいな俊敏な動き。
多分、それは檸檬の力。
下降の際と着地の際に速さを上げて、瞬間移動をする。
僕には見えるけど、あの草食動物達は檸檬のスピードに追いつけないみたいだね……。
とりあえず、この状況下じゃ攻撃しにくい。
まずは檸檬を地上に引き戻さなきゃね。
僕はトンファーを1つ、檸檬の足付近に投げ上げた。
檸檬は“見えない壁”の代わりに、僕のトンファーを踏み台にする。
けど、それが狙い。
トンファーに蹴る力が吸収されて、檸檬の空中での動きが鈍る。
『あ。』
そして、通常のスピードで降下するしかなくなる。
『Oh, It's end of flying ?』
(あら、飛ぶのは終わり?)
そう言ってスタッと着地した檸檬に、すかさず攻撃を開始する。
まぁ、避けられるけどね。
『(やるじゃん、恭弥♪)』
今度は地上戦。
あたしが全力を出しつつ恭弥に勝たせる方法……
飛びながら考えたけど、やっぱりなかった。
恭弥が強くなった事を信じるしかない。
ここで手を抜いたら、ツナ達の負け。
ここであたしが勝ったら、ツナ達の負け。
そんなの、絶対絶対ダメだと思うから。
ってか、さっきから恭弥の攻撃が甘い………?
あたしが相手だから?
もう一度空中に上がろうとした。
その時。
「もう、それはさせないよ。」
『え?』
恭弥の呟きに、一瞬注意を引かれたあたし。
でも次の瞬間、何かが落ちて来る気配がした。
『わっ…と。』
あたしはギリギリでそれを避ける。
落ちて来たのは、
少し前に恭弥が投げ上げて、あたしが空中で踏み台にしたトンファーだった。
「これ、何気に頭脳戦だね♪」
ベルの言葉に疑問符を浮かべるレヴィ。
「ぬ?何故だ?」
「アンポンタンにはわかんねーよ。」
「レヴィ・ア・タンだ!!」
「黙れムッツリ。」
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その頃、ツナの修業場では。
ポオオ…
フッ、
「お。」
「え……」
「あ………」
大きな光が広がって消えて、
その中にいたリボーン、ツナ、バジルはそれぞれ驚きの声をあげる。
「今…俺………」
「やったなツナ。それが死ぬ気の零地点突破だ。」
「やりましたね!!すごいですよ沢田殿!!」
駆け寄るバジルに、
「1人じゃ絶対無理だった、バジル君のおかげだよ!ありがとう!」
お礼を言うツナ。
そして、リボーンが言う。
「よしツナ、行くぞ。」
「うん。」
頷いたツナの瞳は、決意に満ちあふれていて。
「行こう、並中へ。」
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恭弥はトンファーを拾った。
「自分で蹴ったのに忘れてたのかい?檸檬。」
『うん!忘れてた♪』
そう言いながら、ナイフを握り直した。
やっぱ恭弥相手じゃ、一筋縄で行かないよね。
いつの間にか、
戦いを楽しみ始めてる自分がいた。
『(よしっ!)』
あたしはまた、恭弥の目に向かってナイフを投げる。
そう、あの日と同じように。
一瞬恭弥の視界が埋まり、あたしはその隙に恭弥の真上に飛び上がる。
あの日は後ろに回ったけど、今日は真上。
同じ攻め方なんて絶対にしない。
「(上………いや…違う。)」
目を閉じた恭弥。
そうそう、あたしの動きを追っちゃダメ。
あたしの動きを読まなくちゃ。
でも………
本当に読める?
そろそろ着地。
前と後ろ、どっちに降りるかギリギリまで悩む。
『(決めたっ♪)』
あたしが恭弥の後ろに舞い降りた、その時。
ヒュンッ、
『え!??』
あたしの首にあったチェーンが割れて、
指輪が宙に浮いた。
時間は何故か、
ゆっくりゆっくり流れる。
「もらうよ。」
『恭弥っ………!!』
恭弥のトンファーからは、いつの間にか針が出てて、
それがあたしのリングのチェーンを壊したみたい。
『(リング………守らなきゃ!)』
突然とは言え、ボスがあたしを雲の守護者に選んだんだ。
弾け飛ぶリングに向かって、
腕を伸ばす。
『(取らなきゃ………!)』
けど、
恭弥の手の方が、5センチくらい長かった。
パシッ……
カチッ……
リングをキャッチして、1つにはめた。
『あ………』
力が、抜けた。
ペタッとその場に座り込む。
何でだろ。
あたしのナイフで数カ所に切り傷がある恭弥が勝って、
負けたはずのあたしは無傷なまま。
呆然としてたら、
いつの間にか泣いてる事に気が付いた。
「勝者、雲雀恭弥。」
「やっぱコレ、いらない。」
恭弥はまたチェルベッロにリングを渡し、あたしに歩み寄る。
「怪我、無いよね。」
『……………うん。』
恭弥のバカ。
思いっきり手ぇ抜かれた気分。
「これで、お合いこだね。」
『…………そうだね。』
あたしは力なく笑った。
と、次の瞬間。
『きゃっ!?』
ドサッ、
急に恭弥に押し倒される。
『きょ、恭弥??』
吃驚して恭弥を見ると、
少し表情を歪ませていた。
まさかと思って見てみると、恭弥の足に傷が………
『恭弥っ!!!』
頑張って起き上がり、恭弥を座らせる。
そして、横を見ると………
『モスカ!!?』
壊れたはずのモスカが、再び動いて暴走していた。
急いで恭弥の止血をして、俊足でグラウンドの隅に運ぶ。
『(あっ………!)』
ベル、確か松葉杖じゃん!
隼人達は………足は大丈夫だよね………
『ここにいて、恭弥。』
あたしは俊足でベルの方に向かった。
『ベルっ!!』
「檸檬!!」
『あたしに掴まって!レヴィ、こっち!』
横にいたレヴィにも声を掛けた、その時。
シュルルル…
モスカの撃った弾がこっちに来た。
「何だ?」
レヴィは途中で立ち止まる。
あたしは気付かず俊足で遠くに非難した。
『ベル、怪我ない?』
「しし♪サンキュー檸檬♪」
ベルはあたしのおでこにキスをした。
「大丈夫スか?笹川兄!!」
「何が起きているのだ!?」
並盛メンバーが驚く中、ボスは1人微笑を浮かべる。
「何てこった………俺はてっきり壊れたかと思ってたが………どうやら制御不能になったみたいだな。」
「暴走だと!!?」
モスカは、一気に弾を発射する。
その姿はまさしく、戦闘用兵器だった。
『モスカ………!!』
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イタリアにて。
ボンゴレ本部の地下水道を歩いて行く門外顧問とモレッティ。
「連れて来ましたよ………」
モレッティが止まり、そこにいた人物に光が当てられる。
「「「親方様!!!」」」
家光の腹部からはおびただしい量の血が出ていて、息も荒かった。
「笑え………このザマだ。」
「動かないで下さい!」
「俺とした事が………弾が急所をかすめた所でやっと、こいつが影だと気づくとはな…………」
家光の視線の先には、動きを封じられて気を失ってる9代目、らしき男。
「偽者!!?」
門外顧問のメンバーとモレッティは驚きを隠せない。
「では、9代目は何処へ?」
「部屋で1週間前の9代目専用ジェット機のスケジュールを見つけた。」
「………確かその頃、9代目専用機はエンジン整備の為ドッグに………」
「そいつは違う。」
モレッティの言葉を遮り、家光は言った。
「日本に、飛んでいる。」
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モスカの暴走で、学校は火と煙の海になった。
爆発音も絶えない。
「あ、圧縮粒子砲!?」
「無差別攻撃ではないか!このままでは全員オダブツだぞ!!」
隼人と了平さんが叫ぶ。
そんな中ボスは、やっぱり笑っていた。
「ぶはーはっは!!こいつは大惨事だな!!!」
『ボス………!』
何で?
嫌だ、嫌だよ。
『止めなくちゃ……!』
「檸檬、行っちゃダメ。」
『ベル!?』
ベルがあたしの手を掴んで、放してくれない。
『ベルお願い、行かせて。』
「俺、檸檬が危ない目に合うのヤだし。」
『あたしはいいの!早く止めなくちゃみんなが……!』
「いいワケないじゃん。檸檬が怪我すんのが、俺は一番ヤなんだよ。」
ベルは、更に強くあたしの手を掴む。
『でも……』
「お願い檸檬、俺の側から離れないでよ。」
『ベル……』
何故か、動けなくなってしまった。
「おい!!フィールド内は危険だぞ!!」
了平さんが叫ぶ声が聞こえて、あたしはそっちを向いた。
すると…
『髑髏っ!!』
モスカの弾から逃れようと走っていた髑髏は、崩れた有刺鉄線を抜けて、フィールド内に入っていた。
そして、恐れていた事態が起きる。
ピーッ…
『危ない!!』
地雷の警報音が辺りに響く。
それでもベルは、あたしの手を放してくれなかった。
『髑髏!逃げて!!』
ドガンッ、
新たに立ち上る黒い煙。
その横から現れた3つの影。
「千種………犬………!」
「ったく、世話のかかる女らびょん。」
犬ちゃんと千種が、髑髏を守るように覆いかぶさっていた。
ほっと胸を撫で下ろす。
でも、
ウィィィィ……
「ゲッ!」
ガトリングが3人を捉え、発射用意をする。
そして、もう一方の煙の向こうからは、
『モスカ!!』
「しまった!!」
「やべぇ!」
「挟まれた!!」
圧縮粒子砲の発射準備が始まる。
「くそっ!」
3人は縮こまれるだけ縮こまる。
けど、それでかわせる砲撃じゃない。
『髑髏!犬ちゃん!千種!』
と、その時、
一瞬だけ視界に入った、見覚えのある炎。
ガガガガ、
ブオッ、
容赦なく放たれた2つの攻撃は、炎のバリアにぶち当たった。
モスカの攻撃は流れを変え、
ガトリングの弾は溶けて落ちる。
その場にいる誰もが、その光景に驚く。
勿論、ボスも。
「あの炎………!」
制止したモスカとガトリング。
髑髏が振り向き救世主を見る。
「………………ボス。」
そのグローブに宿した炎は、
瞳に宿した炎に似ていた。