ヴァリアー編
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不思議なの。
嬉しいの。
あたし………変なの。
最後の守護者戦
雲雀が負けるという自分の夢によって、不安になってしまったツナ。
眠れなくなるツナの前で、リボーンはいつものように眠っていた。
その姿に呆れながらも、ツナはディーノに会おうと病院に向かった。
--
----
『髑髏……?』
「もう、行かなくちゃ。」
病院の一室で、髑髏が荷物をまとめ始める。
『そっか。またね♪』
「うん。」
バタン、
ドアが閉まると、檸檬は力が抜けたようにベッドに座り込んだ。
今日で決まるんだもん。
怖くてたまらない。
どうしよう、どうしよう、
誰かが傷付いたらどうしよう。
『恭弥……』
心配だよ。
会いに行きたい。
会えないとしても、せめて…
『ちょっとぐらいなら、いいよね。』
窓から飛び出す。
向かう先は、大好きな並中。
---
------
-----------
「昨日は用があったみたいだけど、帰って来てるかな………?」
ディーノに雲雀の事を聞こうと思ったツナが病院のドアを開けようとした瞬間、ドアが開いて頭をぶつけた。
ガンッ、
「いでっ」
「……………ボス。」
ドアを開けたのは、髑髏だった。
「あ!(そーいえば戦いのあと気を失って運ばれたんだ……)」
通り過ぎようとする髑髏に、ツナは尋ねる。
「何て呼べばいいかな?クロームさん?髑髏さん?」
「どっちでも。」
「あ、あの、どこ行くの?」
ツナの2つ目の問い掛けに、髑髏は少し俯いてから振り向く。
「犬と千種がどっか行っちゃって………。」
その答えを聞き、昨晩置き去りにされて檸檬に運ばれた事を思い出す。
「そ、そっか。あの、昨日は戦ってくれて………」
お礼を言おうとするツナを後目に、髑髏はトタトタ走り去る。
「(聞いちゃいねえ!!しかも全速力ーー!!?)」
ひとまず、病院内に入る事にした。
ツナが病室の前に着くと、ディーノとロマーリオの声が聞こえて来た。
「どーだロマーリオ。」
「変化はねーな。だがボス、どのみちこれ以上ここには………」
「わーってる!今日中、いや昼までには何とかする。」
「(ディーノさん仕事かな?)」
恐る恐る扉を開けてみる。
「誰だ!?」
「あの………さ、沢田です。」
サッと武器を構える2人だが、ツナの姿を捉えると、笑顔を見せた。
「なんだよ、ツナか!早ぇじゃねーか!」
「おはようございます!眠れなくて、あの………」
「どーせオレから恭弥の調子でも聞き出そうってんだろ?」
「い"っ!」
ディーノの鋭い指摘にツナは驚く。
「茶でも入れてやる、来い。」
「あの、でも忙しそうだし………」
「弟分と話す時間ぐらいあるぜ。ん?クロームって娘、消えてら。」
「あ、さっきでていきましたけど………」
「そか。」
髑髏の事にはあまり触れずに、本題に入るディーノ。
「そりゃあ恭弥が負けたら全部終わっちまうんだし心配だよな。こいつらも心配なのか暇なのか…………同じこと聞きにきたぜ♪」
ディーノが開けた扉の向こうには、眠っている守護者3人の姿。
「んなーーー!!?獄寺君に山本にお兄さん!!」
ソファーに仰向けに寝転ぶ山本、
背もたれに寄りかかり机に足を乗せてる獄寺、
床に正座して椅子を枕代わりにしている了平。
「全員が自分のケガを見てもらいてーなんてもっともらしい口実作って来たがな。」
「みんな………」
「それで安心したのか寝ちまいやがった。」
「え?じゃ、じゃあ………」
ツナの不安を追い払うかのように、ディーノはしっかりと言った。
「恭弥は完璧に仕上がってるぜ。家庭教師としての贔屓目なしにも強ぇぜあいつは。」
その言葉にホッとし、ツナはうとうとし始める。
しかし………
「おまえは修行だぞ。」
突如聞こえて来た声に、二人同時にギクッとする。
恐る恐る窓の方を向いてみると、
「今日中に死ぬ気の零地点突破を完成させるぞ。」
「リボーン!!」
リボーンは、忍者のような恰好をしていた。
その声にディーノが驚かされるのは、生徒の時からのクセのようだ。
「つか何言ってんだよ!!」
ツナが反論する。
「今日の勝負で決まるんだぞ!!もうオレが修業する意味なんてないんじゃ………」
「最終決戦だからこそだぞ。おまえもしもの時どーすんだ?」
「(もしも………?)」
---
------
-----------
「雨宮さん!!」
『草壁さんだー、お久しぶりです。』
一礼して応接室に入る檸檬。
「あの、委員長は今………」
『知ってます。留守でしょう?何か、余ってるお仕事ありませんか?』
「いえ。委員長が全て終わらせていたので………」
『あらら。』
すごいじゃん、恭弥。
ふと目に止まったのは、
いつも恭弥が座ってる大きな椅子。
何だか妙に、座ってみたくなって。
『へへっ♪』
「雨宮さ………」
『恭弥には内緒にして下さいね、ここにあたしが座ったの。』
何気に怒りそうだからさ。
椅子は意外とフカフカだった。
くるっと回転させれば、窓の外の景色が見える。
いつも……こんな景色を見てるんだね。
並盛の街を見てから自分の恰好を見ると、突き落とされた感じがする。
『草壁さん、』
「はい。」
『外してもらっていいですか?』
「……………はい。」
ドアが閉められた。
草壁さんがドアの外に立ってる気配がする。
優しいなぁ。
あたしは今、完全に並中の生徒じゃなくなってる。
ヴァリアーの服を着てるんだもん。
真っ黒い服を。
『どうしよ……』
みんなに会えなくなるなんて、嫌だよ。
どっちも大切なんだもん。
捨てられないんだもん。
どうすればいいの?
あたしはどうしたいの?
机に突っ伏してみる。
ひんやりしてる。
僅かに開けられた窓から入る風も、
ひんやりしてる。
『恭………弥ぁ…………』
体に、ぽっかりと穴が空いたみたい。
寂しかった。
---
------
------------
同じ頃、イタリアにて。
「そっちはどーだオレガノ!」
「ダメ!誰もいないわ!!」
オレガノ、ターメリック、ラル・ミルチの3人が、長い廊下を走って行く。
「まさか再度突入することになろーとはな。家光の奴どこで油売ってやがる。」
「親方様のことだ、ドンパチやってりゃ今に顔を出すさ。」
2人とは逆に、口を閉ざすオレガノ。
「心配なのか?」
ターメリックの問いに答えず、オレガノは1つの扉の前で立ち止まる。
「何かしら?」
扉の向こうは暗く、謎の機械がたくさん置いてあった。
「何なの?これは……」
近くにあった研究ノートらしき物を見る。
「塗りつぶしてはいるが、こいつは旧イタリア軍の兵
器に関するレポートだな。」
「何故そんな物が………?」
「噂だとばかり思っていたが………大戦後、イタリア軍が隠滅しようとしたワケありの研究を裏でマフィアが買いとったと聞いたことがある。」
つい最近まで稼動してたらしき施設。
しかも、出来上がったモノはヴァリアーに届けられたようだ。
「何を考えているの?9代目は。こんなものを何に使おうっていうの!?」
オレガノが持つ紙に描かれていのは、
他でもないゴーラ・モスカ。
---
------
------------
同じ頃、 ヴァリアーのアジト。
グォングォングォン………
モスカの独特の機械音が響く中、レヴィがザンザスに言う。
「ボス、そろそろ時間です。」
ザンザスはそれに答えずに、
「フッ、血が騒ぐかゴーラ・モスカ。期待している。」
と。
---
------
------------
今晩僕は戦うらしい。
良く分からないけど、これだけは確かだ。
僕が負ければ、檸檬が敵チームの誰かの彼女になるって事。
金髪の彼からそう言われた時、時間が止まったかと思った。
何て反応すればいいのか、本当に分からなかった。
ただ、檸檬を取られたくない………そう思った。
「お帰りなさい、委員長。」
「まだいたの、草壁。」
「はい、まぁ……」
何故か曖昧に答える草壁に疑問を持ちつつ、応接室のドアのぶを握る。
「委員長、」
「何?」
「お、お静かに願います………」
ますます変だ。
「気が向いたらね。」
僕はそのままドアを開けた。
そしたら……
スースー………
「え……?」
ドアを開けて、真正面に見える机。
僕の机。
そこに突っ伏して、
自分の腕を枕にして眠ってるのは、
僕がずっと気に掛けていた、
檸檬だった。
「昼間から、全く起きないので……」
草壁が後ろで言う。
「そう……」
よほど疲れたんだね、檸檬。
アイツの話じゃ、僕にとっての敵も檸檬の仲間だとか。
「ドア、閉めて。もう帰っていいよ。」
「はい。では、お先に失礼します。」
草壁を帰らせて、僕は静かに机に近付いた。
やっぱり起きない。
「檸檬………」
僕がどれだけ君の事考えたか、知ってる?
僕がどれだけ君が好きだか、分かってる?
静かな寝息を立てている檸檬に向かって、ため息をつく。
すると……
『………………ぁ』
「ん?」
『恭弥ぁ……』
「…………!!?///」
寝言で僕の名前を呼んだ檸檬。
でもその表情は、何処か哀しげで。
「檸檬……」
僕の夢、見てるの?
僕の事、考えてるの?
僕に会いたいから、ここに来たの?
ずっとずっと見つめていたい。
檸檬がずっと此処にいればいい。
そう思ってるのに、
それは叶わない。
もどかしくなった。
『ん………?』
夕陽が雲に隠されて、部屋が少し暗くなる。
すると、檸檬がうっすら目を開けた。
ぼんやりと机の木目を見つめて、
やがて視線が上に向かって。
『恭…弥………?』
「おはよう、檸檬。」
僕が答えた次の瞬間、檸檬は飛び起きて僕に抱きついた。
吃驚したけど、咄嗟に受け止める。
「どしたの?」
『何で此処にいるの?あたし……会えないかと思ってたのに。』
「会えて嬉しいの?」
『うんっ!嬉しい!』
いつもの檸檬だ。
僕の事なんてお構い無しに、こんな台詞を言うなんて。
「檸檬、聞きたい事があるんだけど。」
『何?』
首をかしげた檸檬だったが、僕の目を見て何の話だか察したらしい。
『ベルとの、事?』
「ふぅん、ベルって言うんだ。」
途端に檸檬は、真っ赤になって目を逸らす。
そんなにそいつが好きなの?
檸檬はそいつを選ぶの?
色んな気持ちが押し寄せて、僕の口を勝手に動かした。
「だったら、今日で決まるんだよね?覚悟は出来てるの?」
『ベルの彼女になるって?』
「違う。こっちが勝った時、僕の彼女になる覚悟。」
『へ……?』
目を見開く檸檬を、強く強く抱きしめた。
「僕は…誰にも檸檬を渡したくない。」
『恭弥………///』
不思議。
どんどん顔が熱くなって来る。
「行かないでよ、檸檬。」
ベルの時はね、
“愛してる”
って言われてドキドキしたのに、
「僕の側にいて。」
恭弥の言葉を聞く度に、
ドキドキするの。
これは……
おんなじ事なのかな?
そんな事を考えてたら、恭弥が最後に言った。
「檸檬に拒否権は無いから。」
え?
思考回路がフリーズする。
だけど、
伝わって来る恭弥のあったかさが、
あたしを安心させて。
『…………我が儘王子。』
「うるさいよ。」
『ふふっ♪』
何でかな?
ぽっかり空いた体の穴は、
いつの間にか塞がってるよ。
『恭弥、』
「何?」
『………………ありがと。///』
そう言って笑った檸檬は、
とっても綺麗だった。
でも次の瞬間、僕から離れてサッと隠れる。
「何して……」
『しっ!』
窓の外を警戒する檸檬。
見ると、変なカッコした女が2人、何かを探して飛び回っていた。
『ごめん、嗅ぎつかれたみたい。もう行かなきゃ。』
残念そうに笑って、檸檬は消えた。
『また今夜ね♪』
最後に、そう聞こえた。
---
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------------
ボウッ
炎のようなものが上がり、また消える。
「さ、沢田殿!!大丈夫ですか!!」
「あ、あっぶね~~~」
地面を這うツナは、ぼろぼろだった。
「ヘタしたら死ぬとこだったぞ、バカツナ。」
リボーンにより、ツナは顎を蹴り上げられる。
「蹴るなっての!つーかまだやんの!?もう行かないと雲雀さんの試合が始まっちゃうよ!!」
「雲雀の勝負は獄寺や山本達にまかせて、おまえは技を完成させることだけに集中しろ。」
「そんな!!本気で言ってんのか!?」
「オレは本気(マジ)だ」
「え?リボーン……」
リボーンの真剣な目に、ツナは戸惑った。
---
------
------------
夜の並盛。
「いいかてめーら!!何が何でも勝つぜ!!」
「おい何言ってんだ?戦うの雲雀だぜ?」
「お前がいきり立ってどーするのだ?」
物凄く意気込む獄寺に、山本と了平が言う。
「んな事わーってんだよ!!けどな、10代目は俺らを信頼して留守にしてんだ。俺らの目の前で黒星を喫するワケにはいかねーだろーが!!」
「ハハハ!変な理屈だな。」
「てめーには一生わかんねーよ!!このっバカッ!!」
笑う山本に、獄寺は突っかかる。
「それにな!これで檸檬の事も決まるんだ。普通に見てられっかよ!」
「そうだなタコヘッド!!オレも極限燃えてきたぞ!!」
了平が言い終わると同時に、歩いて来る人影。
近付くと共に、はっきり雲雀だと認識できるようになる。
「君達、何の群れ?」
「んだとてめー!」
「まーまー、えーと俺達は………」
「応援に来たぞ!!」
そうは言っても、やはり雲雀は群れるのが嫌いで。
「ふうん…………。目障りだ、消えないと殺すよ?」
「なんだその物言いは!!極限にプンスカだぞ!!」
「まーまー落ち着けって。俺達はぐーぜん通りかかっただけだから。気にすんな雲雀、なっ!」
了平と雲雀の仲裁をする山本。
そこに……
ザッ
降り立ったのは、モスカを筆頭にしたヴァリアー達。
「そうか。あれを……」
振り向いた雲雀は、ゆるやかに口角を上げる。
「咬み殺せばいいんだ。」
絶対に、負けない。
絶対に、渡さない。
ただもう一度、
もう一度、君の笑顔を。
============
いよいよ始まる、
ラストの戦い。
ラストにならない気がするのは、
あたしの思い違い………
だといいな………。
『(行かなくちゃ。)』
黒い衣装に身を包み、
黒い世界へ身を投げ出す。
これから起こる事は、誰にも分からない。
嬉しいの。
あたし………変なの。
最後の守護者戦
雲雀が負けるという自分の夢によって、不安になってしまったツナ。
眠れなくなるツナの前で、リボーンはいつものように眠っていた。
その姿に呆れながらも、ツナはディーノに会おうと病院に向かった。
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『髑髏……?』
「もう、行かなくちゃ。」
病院の一室で、髑髏が荷物をまとめ始める。
『そっか。またね♪』
「うん。」
バタン、
ドアが閉まると、檸檬は力が抜けたようにベッドに座り込んだ。
今日で決まるんだもん。
怖くてたまらない。
どうしよう、どうしよう、
誰かが傷付いたらどうしよう。
『恭弥……』
心配だよ。
会いに行きたい。
会えないとしても、せめて…
『ちょっとぐらいなら、いいよね。』
窓から飛び出す。
向かう先は、大好きな並中。
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「昨日は用があったみたいだけど、帰って来てるかな………?」
ディーノに雲雀の事を聞こうと思ったツナが病院のドアを開けようとした瞬間、ドアが開いて頭をぶつけた。
ガンッ、
「いでっ」
「……………ボス。」
ドアを開けたのは、髑髏だった。
「あ!(そーいえば戦いのあと気を失って運ばれたんだ……)」
通り過ぎようとする髑髏に、ツナは尋ねる。
「何て呼べばいいかな?クロームさん?髑髏さん?」
「どっちでも。」
「あ、あの、どこ行くの?」
ツナの2つ目の問い掛けに、髑髏は少し俯いてから振り向く。
「犬と千種がどっか行っちゃって………。」
その答えを聞き、昨晩置き去りにされて檸檬に運ばれた事を思い出す。
「そ、そっか。あの、昨日は戦ってくれて………」
お礼を言おうとするツナを後目に、髑髏はトタトタ走り去る。
「(聞いちゃいねえ!!しかも全速力ーー!!?)」
ひとまず、病院内に入る事にした。
ツナが病室の前に着くと、ディーノとロマーリオの声が聞こえて来た。
「どーだロマーリオ。」
「変化はねーな。だがボス、どのみちこれ以上ここには………」
「わーってる!今日中、いや昼までには何とかする。」
「(ディーノさん仕事かな?)」
恐る恐る扉を開けてみる。
「誰だ!?」
「あの………さ、沢田です。」
サッと武器を構える2人だが、ツナの姿を捉えると、笑顔を見せた。
「なんだよ、ツナか!早ぇじゃねーか!」
「おはようございます!眠れなくて、あの………」
「どーせオレから恭弥の調子でも聞き出そうってんだろ?」
「い"っ!」
ディーノの鋭い指摘にツナは驚く。
「茶でも入れてやる、来い。」
「あの、でも忙しそうだし………」
「弟分と話す時間ぐらいあるぜ。ん?クロームって娘、消えてら。」
「あ、さっきでていきましたけど………」
「そか。」
髑髏の事にはあまり触れずに、本題に入るディーノ。
「そりゃあ恭弥が負けたら全部終わっちまうんだし心配だよな。こいつらも心配なのか暇なのか…………同じこと聞きにきたぜ♪」
ディーノが開けた扉の向こうには、眠っている守護者3人の姿。
「んなーーー!!?獄寺君に山本にお兄さん!!」
ソファーに仰向けに寝転ぶ山本、
背もたれに寄りかかり机に足を乗せてる獄寺、
床に正座して椅子を枕代わりにしている了平。
「全員が自分のケガを見てもらいてーなんてもっともらしい口実作って来たがな。」
「みんな………」
「それで安心したのか寝ちまいやがった。」
「え?じゃ、じゃあ………」
ツナの不安を追い払うかのように、ディーノはしっかりと言った。
「恭弥は完璧に仕上がってるぜ。家庭教師としての贔屓目なしにも強ぇぜあいつは。」
その言葉にホッとし、ツナはうとうとし始める。
しかし………
「おまえは修行だぞ。」
突如聞こえて来た声に、二人同時にギクッとする。
恐る恐る窓の方を向いてみると、
「今日中に死ぬ気の零地点突破を完成させるぞ。」
「リボーン!!」
リボーンは、忍者のような恰好をしていた。
その声にディーノが驚かされるのは、生徒の時からのクセのようだ。
「つか何言ってんだよ!!」
ツナが反論する。
「今日の勝負で決まるんだぞ!!もうオレが修業する意味なんてないんじゃ………」
「最終決戦だからこそだぞ。おまえもしもの時どーすんだ?」
「(もしも………?)」
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「雨宮さん!!」
『草壁さんだー、お久しぶりです。』
一礼して応接室に入る檸檬。
「あの、委員長は今………」
『知ってます。留守でしょう?何か、余ってるお仕事ありませんか?』
「いえ。委員長が全て終わらせていたので………」
『あらら。』
すごいじゃん、恭弥。
ふと目に止まったのは、
いつも恭弥が座ってる大きな椅子。
何だか妙に、座ってみたくなって。
『へへっ♪』
「雨宮さ………」
『恭弥には内緒にして下さいね、ここにあたしが座ったの。』
何気に怒りそうだからさ。
椅子は意外とフカフカだった。
くるっと回転させれば、窓の外の景色が見える。
いつも……こんな景色を見てるんだね。
並盛の街を見てから自分の恰好を見ると、突き落とされた感じがする。
『草壁さん、』
「はい。」
『外してもらっていいですか?』
「……………はい。」
ドアが閉められた。
草壁さんがドアの外に立ってる気配がする。
優しいなぁ。
あたしは今、完全に並中の生徒じゃなくなってる。
ヴァリアーの服を着てるんだもん。
真っ黒い服を。
『どうしよ……』
みんなに会えなくなるなんて、嫌だよ。
どっちも大切なんだもん。
捨てられないんだもん。
どうすればいいの?
あたしはどうしたいの?
机に突っ伏してみる。
ひんやりしてる。
僅かに開けられた窓から入る風も、
ひんやりしてる。
『恭………弥ぁ…………』
体に、ぽっかりと穴が空いたみたい。
寂しかった。
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同じ頃、イタリアにて。
「そっちはどーだオレガノ!」
「ダメ!誰もいないわ!!」
オレガノ、ターメリック、ラル・ミルチの3人が、長い廊下を走って行く。
「まさか再度突入することになろーとはな。家光の奴どこで油売ってやがる。」
「親方様のことだ、ドンパチやってりゃ今に顔を出すさ。」
2人とは逆に、口を閉ざすオレガノ。
「心配なのか?」
ターメリックの問いに答えず、オレガノは1つの扉の前で立ち止まる。
「何かしら?」
扉の向こうは暗く、謎の機械がたくさん置いてあった。
「何なの?これは……」
近くにあった研究ノートらしき物を見る。
「塗りつぶしてはいるが、こいつは旧イタリア軍の兵
器に関するレポートだな。」
「何故そんな物が………?」
「噂だとばかり思っていたが………大戦後、イタリア軍が隠滅しようとしたワケありの研究を裏でマフィアが買いとったと聞いたことがある。」
つい最近まで稼動してたらしき施設。
しかも、出来上がったモノはヴァリアーに届けられたようだ。
「何を考えているの?9代目は。こんなものを何に使おうっていうの!?」
オレガノが持つ紙に描かれていのは、
他でもないゴーラ・モスカ。
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同じ頃、 ヴァリアーのアジト。
グォングォングォン………
モスカの独特の機械音が響く中、レヴィがザンザスに言う。
「ボス、そろそろ時間です。」
ザンザスはそれに答えずに、
「フッ、血が騒ぐかゴーラ・モスカ。期待している。」
と。
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今晩僕は戦うらしい。
良く分からないけど、これだけは確かだ。
僕が負ければ、檸檬が敵チームの誰かの彼女になるって事。
金髪の彼からそう言われた時、時間が止まったかと思った。
何て反応すればいいのか、本当に分からなかった。
ただ、檸檬を取られたくない………そう思った。
「お帰りなさい、委員長。」
「まだいたの、草壁。」
「はい、まぁ……」
何故か曖昧に答える草壁に疑問を持ちつつ、応接室のドアのぶを握る。
「委員長、」
「何?」
「お、お静かに願います………」
ますます変だ。
「気が向いたらね。」
僕はそのままドアを開けた。
そしたら……
スースー………
「え……?」
ドアを開けて、真正面に見える机。
僕の机。
そこに突っ伏して、
自分の腕を枕にして眠ってるのは、
僕がずっと気に掛けていた、
檸檬だった。
「昼間から、全く起きないので……」
草壁が後ろで言う。
「そう……」
よほど疲れたんだね、檸檬。
アイツの話じゃ、僕にとっての敵も檸檬の仲間だとか。
「ドア、閉めて。もう帰っていいよ。」
「はい。では、お先に失礼します。」
草壁を帰らせて、僕は静かに机に近付いた。
やっぱり起きない。
「檸檬………」
僕がどれだけ君の事考えたか、知ってる?
僕がどれだけ君が好きだか、分かってる?
静かな寝息を立てている檸檬に向かって、ため息をつく。
すると……
『………………ぁ』
「ん?」
『恭弥ぁ……』
「…………!!?///」
寝言で僕の名前を呼んだ檸檬。
でもその表情は、何処か哀しげで。
「檸檬……」
僕の夢、見てるの?
僕の事、考えてるの?
僕に会いたいから、ここに来たの?
ずっとずっと見つめていたい。
檸檬がずっと此処にいればいい。
そう思ってるのに、
それは叶わない。
もどかしくなった。
『ん………?』
夕陽が雲に隠されて、部屋が少し暗くなる。
すると、檸檬がうっすら目を開けた。
ぼんやりと机の木目を見つめて、
やがて視線が上に向かって。
『恭…弥………?』
「おはよう、檸檬。」
僕が答えた次の瞬間、檸檬は飛び起きて僕に抱きついた。
吃驚したけど、咄嗟に受け止める。
「どしたの?」
『何で此処にいるの?あたし……会えないかと思ってたのに。』
「会えて嬉しいの?」
『うんっ!嬉しい!』
いつもの檸檬だ。
僕の事なんてお構い無しに、こんな台詞を言うなんて。
「檸檬、聞きたい事があるんだけど。」
『何?』
首をかしげた檸檬だったが、僕の目を見て何の話だか察したらしい。
『ベルとの、事?』
「ふぅん、ベルって言うんだ。」
途端に檸檬は、真っ赤になって目を逸らす。
そんなにそいつが好きなの?
檸檬はそいつを選ぶの?
色んな気持ちが押し寄せて、僕の口を勝手に動かした。
「だったら、今日で決まるんだよね?覚悟は出来てるの?」
『ベルの彼女になるって?』
「違う。こっちが勝った時、僕の彼女になる覚悟。」
『へ……?』
目を見開く檸檬を、強く強く抱きしめた。
「僕は…誰にも檸檬を渡したくない。」
『恭弥………///』
不思議。
どんどん顔が熱くなって来る。
「行かないでよ、檸檬。」
ベルの時はね、
“愛してる”
って言われてドキドキしたのに、
「僕の側にいて。」
恭弥の言葉を聞く度に、
ドキドキするの。
これは……
おんなじ事なのかな?
そんな事を考えてたら、恭弥が最後に言った。
「檸檬に拒否権は無いから。」
え?
思考回路がフリーズする。
だけど、
伝わって来る恭弥のあったかさが、
あたしを安心させて。
『…………我が儘王子。』
「うるさいよ。」
『ふふっ♪』
何でかな?
ぽっかり空いた体の穴は、
いつの間にか塞がってるよ。
『恭弥、』
「何?」
『………………ありがと。///』
そう言って笑った檸檬は、
とっても綺麗だった。
でも次の瞬間、僕から離れてサッと隠れる。
「何して……」
『しっ!』
窓の外を警戒する檸檬。
見ると、変なカッコした女が2人、何かを探して飛び回っていた。
『ごめん、嗅ぎつかれたみたい。もう行かなきゃ。』
残念そうに笑って、檸檬は消えた。
『また今夜ね♪』
最後に、そう聞こえた。
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ボウッ
炎のようなものが上がり、また消える。
「さ、沢田殿!!大丈夫ですか!!」
「あ、あっぶね~~~」
地面を這うツナは、ぼろぼろだった。
「ヘタしたら死ぬとこだったぞ、バカツナ。」
リボーンにより、ツナは顎を蹴り上げられる。
「蹴るなっての!つーかまだやんの!?もう行かないと雲雀さんの試合が始まっちゃうよ!!」
「雲雀の勝負は獄寺や山本達にまかせて、おまえは技を完成させることだけに集中しろ。」
「そんな!!本気で言ってんのか!?」
「オレは本気(マジ)だ」
「え?リボーン……」
リボーンの真剣な目に、ツナは戸惑った。
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夜の並盛。
「いいかてめーら!!何が何でも勝つぜ!!」
「おい何言ってんだ?戦うの雲雀だぜ?」
「お前がいきり立ってどーするのだ?」
物凄く意気込む獄寺に、山本と了平が言う。
「んな事わーってんだよ!!けどな、10代目は俺らを信頼して留守にしてんだ。俺らの目の前で黒星を喫するワケにはいかねーだろーが!!」
「ハハハ!変な理屈だな。」
「てめーには一生わかんねーよ!!このっバカッ!!」
笑う山本に、獄寺は突っかかる。
「それにな!これで檸檬の事も決まるんだ。普通に見てられっかよ!」
「そうだなタコヘッド!!オレも極限燃えてきたぞ!!」
了平が言い終わると同時に、歩いて来る人影。
近付くと共に、はっきり雲雀だと認識できるようになる。
「君達、何の群れ?」
「んだとてめー!」
「まーまー、えーと俺達は………」
「応援に来たぞ!!」
そうは言っても、やはり雲雀は群れるのが嫌いで。
「ふうん…………。目障りだ、消えないと殺すよ?」
「なんだその物言いは!!極限にプンスカだぞ!!」
「まーまー落ち着けって。俺達はぐーぜん通りかかっただけだから。気にすんな雲雀、なっ!」
了平と雲雀の仲裁をする山本。
そこに……
ザッ
降り立ったのは、モスカを筆頭にしたヴァリアー達。
「そうか。あれを……」
振り向いた雲雀は、ゆるやかに口角を上げる。
「咬み殺せばいいんだ。」
絶対に、負けない。
絶対に、渡さない。
ただもう一度、
もう一度、君の笑顔を。
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いよいよ始まる、
ラストの戦い。
ラストにならない気がするのは、
あたしの思い違い………
だといいな………。
『(行かなくちゃ。)』
黒い衣装に身を包み、
黒い世界へ身を投げ出す。
これから起こる事は、誰にも分からない。