ヴァリアー編
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髑髏を包み込んだ
分厚い霧が晴れた時、
目の前に見えるのは、
本当の霧の守護者
骸来る!
「クフフ…クフフフ………」
「ムム?男の声………?」
白い霧の中から、特徴的な笑い声。
来たんだ………
再生したトライデントが床を突き、そこから亀裂が走り、バイパーに衝撃波が伝わる。
「ムギャ!!」
倒れるバイパー。
そこでようやく霧が晴れて、中の人物の姿が見える。
「クフフフ、随分いきがっているじゃありませんか。」
『(ホントに……ホントに本物だ………!)』
「マフィア風情が。」
骸だった。
復讐者に連れてかれたあの日と、
変わらないまま。
『骸………!』
「だ、」
「誰だ……?」
了平さんとバジルだけでなく、
「んー?」
「娘が…」
ヴァリアーも驚いていた。
ボスは無言で骸を睨む。
「六道骸……!!間違いない。」
「骸……無事だったんだ。」
複雑な表情を浮かべるツナと隼人。
そんな2人に、骸はこう返す。
「お久しぶりです。舞い戻って来ましたよ………輪廻の果てより。」
その雰囲気に、ツナは一瞬身震いする。
すると今度は骸があたしの方を向いた。
「檸檬……」
『骸………』
名前を呼ばれたその感覚が、
すごくすごく懐かしくて、
『久しぶり。』
ふと、笑みがこぼれた。
「檸檬、僕は………檸檬をあちらに渡すつもりはない。」
『え…?』
「あちらに行く覚悟をしているのなら、それはムダですよ。」
勝つ、って事?
アルコバレーノに?
「そこで見ていて下さいね、檸檬。」
やんわりと微笑む骸に、
一瞬見愡れた。
『うん……』
すると、それまで倒れていたバイパーが、起き上がりながら話し始めた。
「思い出したよ、六道骸。」
バイパーによると、
一月程前、復讐者の牢獄で脱走を試みた人物、
それが、六道骸。
「あの鉄壁と言われる、復讐者の牢獄を………」
「まっ、また脱走したのーー!!?」
でも、脱走は失敗に終わったらしい。
骸はもっと脱走が困難な最下層の牢獄に入れられたそうだ。
だとしたら……
今ここにいる骸は………?
「クフフフ、ボンゴレが誇る特殊暗殺部隊ヴァリアーの情報網も、たかが知れてますね。」
「ム。」
「現に僕はここにある。」
余裕な笑みを絶やさない骸。
でも、犬ちゃんと千種の表情からして、絶対何かあったはず。
『(あとで聞けるかな……?)』
「面倒臭い奴だなぁ。いいよ、はっきりさせよう。君は女についた幻覚だろ?」
バイパーのフードの中から再び吹雪が。
それは、骸の足を瞬時に凍らせる。
「おや?」
「うわぁ!!」
「吹雪です!」
「寒い!凍えて死んでしまうぞ!」
「檸檬が………!」
獄寺の言葉にツナも檸檬の方を向く。
上はヴァリアーのジャケットだが、下は同じような黒いキュロットだ。
寒さに耐えきれる服装ではない。
「檸檬………!!」
『平…気……』
あたしは霧戦をちゃんと見てなくちゃいけない。
これが、あたしの行く先を決めるかもしれないから。
「おやおや?」
『(骸……)』
骸の下半身が凍ってしまった。
「幻覚で出来た術士に負けてあげる程、僕はお人好しじゃないんだ。」
北極に行ったみたいな寒さが襲う。
そしてついに、
骸の全身が凍ってしまった。
「完全に凍ってしまったぞ!!」
「じゃぁあの骸は………幻覚?!」
「そんな……」
違う、
幻覚じゃないよ。
だって、
だってあたしには、
---「檸檬、心配要りませんよ。」
骸の声が聞こえる。
骸の消えてないリズムが聞こえる。
「さて、化けの皮を剥がそうか。」
バイパーのフードから、大きな金属製のハンマーが出て来る。
そしてそのまま、骸の方へ突っ込んで行く。
「もっとも砕け散るのは、さっきの女の体だろうけどね。」
「ああっ!」
「やべぇ!」
凍った骸は動かない。
動かないままだった、
けど、
右目の数字が“一”に変わったのが見えた。
と、次の瞬間、
ズバッ、
『あっ………!』
地面から勢い良く飛び出したのは、何かの蔓。
それはバイパーを束縛する。
そして…
フワッ、
つるに付いていた蕾が、花開いた。
「蓮の……花………」
「クフフフ。」
再び骸の笑い声。
同時に、骸を覆っていた氷はみるみるうちに消え去っていく。
「誰が幻覚ですか?」
その口調に、怒りとか敵対心とかは全く表れてない。
だけど、
反比例するかのように、
バイパーを締め付ける蓮の力は強まって。
「何て………力だ……!く…苦しい!」
「うわ、アイツ何者……?」
ベルが呟く。
「あのバイパーを圧倒してるぜ。」
「あれがツナの霧の守護者、六道骸だ。」
リボーン曰く、骸と髑髏を分けて考えちゃいけないらしい。
そして、今は2人を共存させるしかない、と言う。
『骸……』
何があったの?
何してたの?
どうして来たの?
聞きたい事がありすぎて、全然まとまらないよ。
「さぁ、どうします?アルコバレーノ。のろのろしてるとグサリ………ですよ。」
骸に挑発され、バイパーはおしゃぶりを光らせる。
すると蓮の花ははじかれて、バイパーは再び宙に浮いた。
「図に乗るな!!」
分身をたくさん作り出し、一気に骸に攻め寄るバイパー。
しかし骸は…
「惰弱な。」
一言言うだけ。
右目の数字が“四”に変わる。
炎のようなオーラが見える。
ズババッ、
分身したバイパーを、すごい早さで叩き落としていく骸。
その姿を見てツナが思い出したように叫ぶ。
「あの目の炎は、格闘能力の修羅道だ!!」
バイパーの分身の残骸、常備する特殊な巻き紙のちぎれた物が、花びらのように辺りに散る。
「ムムゥ!!格闘の出来る術士なんて邪道だぞ!!輪廻だって僕は認めるものか!!」
「ほう。」
「人間は何度も同じ人生を無限に繰り返すのさ。だから僕は集めるんだ、金をね!!」
バイパーの上にいた巻きガエルが大きな金の円盤に変化した。
多分それは、力全開の証。
その証拠に、円筒状にねじ曲がり始める体育館。
『きゃあっ!!』
「ああっ!檸檬のカプセルが!!」
幻覚だって分かってるけど、やっぱり気持ち悪い。
あたしの入ってるカプセルはほぼ球体。
だから、体育館内を転がり始める。
「バイパーの奴、力全開だぜ。」
『(やっぱり…)』
「そーするしかねーだろーな。」
カプセルの動きがだんだん大人しくなって、あたしはようやく目を開ける。
まだちょっと……気持ち悪いかも。
自分を潰すように収縮する体育館の真ん中で、骸は笑っていた。
「クハハハ!強欲のアルコバレーノですか。面白い………だが、欲なら僕も負けません。」
トライデントを両側の壁につっかえ棒のように差す。
すると次の瞬間、
ドドドド…
「なに!?」
蓮が巻き付いた火柱が、体育館の至る所から吹き出して来た。
「す、すんげっ!」
「夢でも見ているのか?」
「ぐむ…ふらつく。」
「吐き気がするぜ……」
「幻覚汚染が始まってるぜ、コラ。」
「ああ、脳に直接作用する幻覚を、これだけ立続けに喰らってんだからな。」
ちょうどその時、周りと違う異変がツナに起こった。
「ぐっ…!」
同時に、檸檬にも。
『な…に……?』
.
物凄い頭痛が2人を襲う。
その間に、バトルは更に白熱する。
「ムッ、これ程の幻術能力……一体何処で………」
「地獄界にて。」
「ふざけるな!!」
バイパーのフードの奥が光り、再び吹雪が。
骸が出した火柱と蓮は全て凍り、その中で2人は攻防を繰り返す。
「ううっ………頭が……」
『痛い……』
「大丈夫か!?2人とも!」
「10代目!!檸檬!!」
「ツナ?檸檬!?」
「何だ……?」
『この感じ………』
頭痛は収まらない。
あたしの意志で収まらないって事は、外部からの干渉による頭痛って事。
---「檸檬……」
『骸?』
---「僕の事を………知っていて欲しい。」
『え…?』
---
------
視界に飛び込んで来たのは、真っ暗な闇。
円柱状のカプセル。
『あ…!!』
その中に入っているのは他でもない、骸だった。
大きな鎖が体中に巻かれていて、カプセルの中は何かの液体で満たされている。
『む……くろ………』
これが、
脱獄未遂者への懲罰。
『つっ………!!』
再び頭痛がして、頭の中に流れ込んで来る映像。
---「骸様、もう追っ手が……」
---「ダメれす!逃げられないびょん!!」
千種と犬ちゃんだった。
---「クフフ………さすが鉄壁と言われる復讐者の牢獄……伊達じゃありませんね。」
そう言う骸の背後からは、複数の復讐者が。
---「ここからは別れて各々で逃走しましょう。僕1人なら何とかなりますが、お前達がいては足手纏いだ。」
『骸…』
そのすぐ後、骸は単身復讐者に掴まった。
---「ナカマヲタスケルタメオトリニナルトハ……」
---「マアイイ、シュハンハコノオトコダ………」
『うっ………!!』
そこでまた場面が変わる。
今度は、廃屋の中。
---「いいだろう。逃走中の柿本千種と城島犬の保護は私が責任を持つ。」
『(この声………!)』
---「クフフ、物好きですねぇ。僕は全ての能力を取り上げられてしまいましてね、特異なこの娘の躯を借りても、」
『(髑髏………!!)』
---「僅かな時間しかこちらにとどまる事はできませんよ。」
---「それでも構わない。」
『(家光さん……)』
---「君にツナの霧の守護者になってもらいたい、六道骸。」
全部分かった。
髑髏の内臓は骸の幻覚でまかない、
骸の意志を髑髏が受け取って伝える。
その条件を飲んだのはきっと……
---「檸檬……」
『骸、教えてくれて……ありがとう。』
あたしがそう言うと、骸の気配が消えていき、頭痛も収まった。
「骸…」
どうやらツナも、同じものを見てたみたい。
複雑な顔をしていた。
---
------
どうしても君に会いたかった。
どうしても約束を果たしたかった。
君が僕を此処に呼び戻したも同然ですよ、檸檬。
ドドドドッ…
たくさんの敵の分身をトライデントで弾く。
不意に一匹横に逸れて来る。
「とった。」
あれが、本物ですね。
「死ね!」
彼のフードがブラックホールのように広がり、僕を飲み込もうとする。
檸檬、
たとえ相手がアルコバレーノだろうと、僕は負けませんよ。
君の行く場所がかかっているんですから。
---
------
------------
復讐者の牢獄の中。
「檸檬が、また会おうって言ったんれす。」
犬のその言葉を聞いた時、僕がどんなに驚き、安心したか。
「俺らは檸檬を騙したのに、、、檸檬は優しかったんれす。」
困惑したような犬に、千種が言う。
「檸檬は、そういう人だから。」
「柿ピー、、、」
“またいつか、会おう”か。
その言葉を反芻し、檸檬の笑顔を思い出す。
「骸さん、、、?」
「会いたいですね。」
僕は天井を見上げる。
こんな薄暗い場所に居ても、檸檬には会えない。
それは分かってる。
では、どうすれば会えるのか。
そんなの簡単だ。
「骸様?」
僕が急に立ち上がって、千種が驚いたようだった。
犬はまたもや困惑している。
「約束、果たしに行きませんか?」
牢獄からも、
一応月は見えるのですね。
優しい光を見ていると、
優しい貴女を思い出す。
「行くびょん!」
「行きます!」
2人の返事を聞いて、僕は思わず口角を上げた。
---
------
------------
骸がバイパーのフードに包み込まれ、周りには棘の生えたファンタズマ。
それがそのまま、マジックショーのように突き刺される。
グチャッ、
「ああ!!」
「お、おい!!」
「骸さん!」
骸が不利だとみんなが思った、
その時。
「…………バカな!!」
バイパーの焦ったような声。
直後に、骸を包んでいた物は全てちぎれ飛んで。
中からは無傷の骸と、
彼を護ったであろう蓮の花。
『(すごい………!)』
これが全部幻覚なんて、信じられない!!
檸檬、
少しでも檸檬の近くにいる為に、
僕は勝つ。
このアルコバレーノには、
僕が味わって来た輪廻を。
「堕ちろ。そして巡れ。」
分厚い霧が晴れた時、
目の前に見えるのは、
本当の霧の守護者
骸来る!
「クフフ…クフフフ………」
「ムム?男の声………?」
白い霧の中から、特徴的な笑い声。
来たんだ………
再生したトライデントが床を突き、そこから亀裂が走り、バイパーに衝撃波が伝わる。
「ムギャ!!」
倒れるバイパー。
そこでようやく霧が晴れて、中の人物の姿が見える。
「クフフフ、随分いきがっているじゃありませんか。」
『(ホントに……ホントに本物だ………!)』
「マフィア風情が。」
骸だった。
復讐者に連れてかれたあの日と、
変わらないまま。
『骸………!』
「だ、」
「誰だ……?」
了平さんとバジルだけでなく、
「んー?」
「娘が…」
ヴァリアーも驚いていた。
ボスは無言で骸を睨む。
「六道骸……!!間違いない。」
「骸……無事だったんだ。」
複雑な表情を浮かべるツナと隼人。
そんな2人に、骸はこう返す。
「お久しぶりです。舞い戻って来ましたよ………輪廻の果てより。」
その雰囲気に、ツナは一瞬身震いする。
すると今度は骸があたしの方を向いた。
「檸檬……」
『骸………』
名前を呼ばれたその感覚が、
すごくすごく懐かしくて、
『久しぶり。』
ふと、笑みがこぼれた。
「檸檬、僕は………檸檬をあちらに渡すつもりはない。」
『え…?』
「あちらに行く覚悟をしているのなら、それはムダですよ。」
勝つ、って事?
アルコバレーノに?
「そこで見ていて下さいね、檸檬。」
やんわりと微笑む骸に、
一瞬見愡れた。
『うん……』
すると、それまで倒れていたバイパーが、起き上がりながら話し始めた。
「思い出したよ、六道骸。」
バイパーによると、
一月程前、復讐者の牢獄で脱走を試みた人物、
それが、六道骸。
「あの鉄壁と言われる、復讐者の牢獄を………」
「まっ、また脱走したのーー!!?」
でも、脱走は失敗に終わったらしい。
骸はもっと脱走が困難な最下層の牢獄に入れられたそうだ。
だとしたら……
今ここにいる骸は………?
「クフフフ、ボンゴレが誇る特殊暗殺部隊ヴァリアーの情報網も、たかが知れてますね。」
「ム。」
「現に僕はここにある。」
余裕な笑みを絶やさない骸。
でも、犬ちゃんと千種の表情からして、絶対何かあったはず。
『(あとで聞けるかな……?)』
「面倒臭い奴だなぁ。いいよ、はっきりさせよう。君は女についた幻覚だろ?」
バイパーのフードの中から再び吹雪が。
それは、骸の足を瞬時に凍らせる。
「おや?」
「うわぁ!!」
「吹雪です!」
「寒い!凍えて死んでしまうぞ!」
「檸檬が………!」
獄寺の言葉にツナも檸檬の方を向く。
上はヴァリアーのジャケットだが、下は同じような黒いキュロットだ。
寒さに耐えきれる服装ではない。
「檸檬………!!」
『平…気……』
あたしは霧戦をちゃんと見てなくちゃいけない。
これが、あたしの行く先を決めるかもしれないから。
「おやおや?」
『(骸……)』
骸の下半身が凍ってしまった。
「幻覚で出来た術士に負けてあげる程、僕はお人好しじゃないんだ。」
北極に行ったみたいな寒さが襲う。
そしてついに、
骸の全身が凍ってしまった。
「完全に凍ってしまったぞ!!」
「じゃぁあの骸は………幻覚?!」
「そんな……」
違う、
幻覚じゃないよ。
だって、
だってあたしには、
---「檸檬、心配要りませんよ。」
骸の声が聞こえる。
骸の消えてないリズムが聞こえる。
「さて、化けの皮を剥がそうか。」
バイパーのフードから、大きな金属製のハンマーが出て来る。
そしてそのまま、骸の方へ突っ込んで行く。
「もっとも砕け散るのは、さっきの女の体だろうけどね。」
「ああっ!」
「やべぇ!」
凍った骸は動かない。
動かないままだった、
けど、
右目の数字が“一”に変わったのが見えた。
と、次の瞬間、
ズバッ、
『あっ………!』
地面から勢い良く飛び出したのは、何かの蔓。
それはバイパーを束縛する。
そして…
フワッ、
つるに付いていた蕾が、花開いた。
「蓮の……花………」
「クフフフ。」
再び骸の笑い声。
同時に、骸を覆っていた氷はみるみるうちに消え去っていく。
「誰が幻覚ですか?」
その口調に、怒りとか敵対心とかは全く表れてない。
だけど、
反比例するかのように、
バイパーを締め付ける蓮の力は強まって。
「何て………力だ……!く…苦しい!」
「うわ、アイツ何者……?」
ベルが呟く。
「あのバイパーを圧倒してるぜ。」
「あれがツナの霧の守護者、六道骸だ。」
リボーン曰く、骸と髑髏を分けて考えちゃいけないらしい。
そして、今は2人を共存させるしかない、と言う。
『骸……』
何があったの?
何してたの?
どうして来たの?
聞きたい事がありすぎて、全然まとまらないよ。
「さぁ、どうします?アルコバレーノ。のろのろしてるとグサリ………ですよ。」
骸に挑発され、バイパーはおしゃぶりを光らせる。
すると蓮の花ははじかれて、バイパーは再び宙に浮いた。
「図に乗るな!!」
分身をたくさん作り出し、一気に骸に攻め寄るバイパー。
しかし骸は…
「惰弱な。」
一言言うだけ。
右目の数字が“四”に変わる。
炎のようなオーラが見える。
ズババッ、
分身したバイパーを、すごい早さで叩き落としていく骸。
その姿を見てツナが思い出したように叫ぶ。
「あの目の炎は、格闘能力の修羅道だ!!」
バイパーの分身の残骸、常備する特殊な巻き紙のちぎれた物が、花びらのように辺りに散る。
「ムムゥ!!格闘の出来る術士なんて邪道だぞ!!輪廻だって僕は認めるものか!!」
「ほう。」
「人間は何度も同じ人生を無限に繰り返すのさ。だから僕は集めるんだ、金をね!!」
バイパーの上にいた巻きガエルが大きな金の円盤に変化した。
多分それは、力全開の証。
その証拠に、円筒状にねじ曲がり始める体育館。
『きゃあっ!!』
「ああっ!檸檬のカプセルが!!」
幻覚だって分かってるけど、やっぱり気持ち悪い。
あたしの入ってるカプセルはほぼ球体。
だから、体育館内を転がり始める。
「バイパーの奴、力全開だぜ。」
『(やっぱり…)』
「そーするしかねーだろーな。」
カプセルの動きがだんだん大人しくなって、あたしはようやく目を開ける。
まだちょっと……気持ち悪いかも。
自分を潰すように収縮する体育館の真ん中で、骸は笑っていた。
「クハハハ!強欲のアルコバレーノですか。面白い………だが、欲なら僕も負けません。」
トライデントを両側の壁につっかえ棒のように差す。
すると次の瞬間、
ドドドド…
「なに!?」
蓮が巻き付いた火柱が、体育館の至る所から吹き出して来た。
「す、すんげっ!」
「夢でも見ているのか?」
「ぐむ…ふらつく。」
「吐き気がするぜ……」
「幻覚汚染が始まってるぜ、コラ。」
「ああ、脳に直接作用する幻覚を、これだけ立続けに喰らってんだからな。」
ちょうどその時、周りと違う異変がツナに起こった。
「ぐっ…!」
同時に、檸檬にも。
『な…に……?』
.
物凄い頭痛が2人を襲う。
その間に、バトルは更に白熱する。
「ムッ、これ程の幻術能力……一体何処で………」
「地獄界にて。」
「ふざけるな!!」
バイパーのフードの奥が光り、再び吹雪が。
骸が出した火柱と蓮は全て凍り、その中で2人は攻防を繰り返す。
「ううっ………頭が……」
『痛い……』
「大丈夫か!?2人とも!」
「10代目!!檸檬!!」
「ツナ?檸檬!?」
「何だ……?」
『この感じ………』
頭痛は収まらない。
あたしの意志で収まらないって事は、外部からの干渉による頭痛って事。
---「檸檬……」
『骸?』
---「僕の事を………知っていて欲しい。」
『え…?』
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視界に飛び込んで来たのは、真っ暗な闇。
円柱状のカプセル。
『あ…!!』
その中に入っているのは他でもない、骸だった。
大きな鎖が体中に巻かれていて、カプセルの中は何かの液体で満たされている。
『む……くろ………』
これが、
脱獄未遂者への懲罰。
『つっ………!!』
再び頭痛がして、頭の中に流れ込んで来る映像。
---「骸様、もう追っ手が……」
---「ダメれす!逃げられないびょん!!」
千種と犬ちゃんだった。
---「クフフ………さすが鉄壁と言われる復讐者の牢獄……伊達じゃありませんね。」
そう言う骸の背後からは、複数の復讐者が。
---「ここからは別れて各々で逃走しましょう。僕1人なら何とかなりますが、お前達がいては足手纏いだ。」
『骸…』
そのすぐ後、骸は単身復讐者に掴まった。
---「ナカマヲタスケルタメオトリニナルトハ……」
---「マアイイ、シュハンハコノオトコダ………」
『うっ………!!』
そこでまた場面が変わる。
今度は、廃屋の中。
---「いいだろう。逃走中の柿本千種と城島犬の保護は私が責任を持つ。」
『(この声………!)』
---「クフフ、物好きですねぇ。僕は全ての能力を取り上げられてしまいましてね、特異なこの娘の躯を借りても、」
『(髑髏………!!)』
---「僅かな時間しかこちらにとどまる事はできませんよ。」
---「それでも構わない。」
『(家光さん……)』
---「君にツナの霧の守護者になってもらいたい、六道骸。」
全部分かった。
髑髏の内臓は骸の幻覚でまかない、
骸の意志を髑髏が受け取って伝える。
その条件を飲んだのはきっと……
---「檸檬……」
『骸、教えてくれて……ありがとう。』
あたしがそう言うと、骸の気配が消えていき、頭痛も収まった。
「骸…」
どうやらツナも、同じものを見てたみたい。
複雑な顔をしていた。
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どうしても君に会いたかった。
どうしても約束を果たしたかった。
君が僕を此処に呼び戻したも同然ですよ、檸檬。
ドドドドッ…
たくさんの敵の分身をトライデントで弾く。
不意に一匹横に逸れて来る。
「とった。」
あれが、本物ですね。
「死ね!」
彼のフードがブラックホールのように広がり、僕を飲み込もうとする。
檸檬、
たとえ相手がアルコバレーノだろうと、僕は負けませんよ。
君の行く場所がかかっているんですから。
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復讐者の牢獄の中。
「檸檬が、また会おうって言ったんれす。」
犬のその言葉を聞いた時、僕がどんなに驚き、安心したか。
「俺らは檸檬を騙したのに、、、檸檬は優しかったんれす。」
困惑したような犬に、千種が言う。
「檸檬は、そういう人だから。」
「柿ピー、、、」
“またいつか、会おう”か。
その言葉を反芻し、檸檬の笑顔を思い出す。
「骸さん、、、?」
「会いたいですね。」
僕は天井を見上げる。
こんな薄暗い場所に居ても、檸檬には会えない。
それは分かってる。
では、どうすれば会えるのか。
そんなの簡単だ。
「骸様?」
僕が急に立ち上がって、千種が驚いたようだった。
犬はまたもや困惑している。
「約束、果たしに行きませんか?」
牢獄からも、
一応月は見えるのですね。
優しい光を見ていると、
優しい貴女を思い出す。
「行くびょん!」
「行きます!」
2人の返事を聞いて、僕は思わず口角を上げた。
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骸がバイパーのフードに包み込まれ、周りには棘の生えたファンタズマ。
それがそのまま、マジックショーのように突き刺される。
グチャッ、
「ああ!!」
「お、おい!!」
「骸さん!」
骸が不利だとみんなが思った、
その時。
「…………バカな!!」
バイパーの焦ったような声。
直後に、骸を包んでいた物は全てちぎれ飛んで。
中からは無傷の骸と、
彼を護ったであろう蓮の花。
『(すごい………!)』
これが全部幻覚なんて、信じられない!!
檸檬、
少しでも檸檬の近くにいる為に、
僕は勝つ。
このアルコバレーノには、
僕が味わって来た輪廻を。
「堕ちろ。そして巡れ。」