ヴァリアー編
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懐かしい気配、
懐かしいリズム、
懐かしい笑い声。
凪
「んな!!?う、浮いてる!!あいつもアルコバレーノ!?」
「ああ、奴も最強の赤ん坊の1人だぜ。」
「藍色のおしゃぶりのバイパー。アルコバレーノ一のサイキック能力を持つとも言われてる術士だ。」
マーモン改めバイパーは、戦いの最中行方不明になってたらしい。
コロネロは、生きている事に吃驚してた。
「なぜ今までおしゃぶりが光らなかったんだ?コラ。」
「よくわかんねーが、さっきのクサリみてーので封印してたみてーだな。」
「バカチビ共には分からぬ、研究の副産物さ。お前達と違って僕は怠らなかったからね。呪いを解く努力を。」
『呪い……?』
そう言えば、
アルコバレーノは最強の赤ん坊って言われてるけど、
同時に、
呪われた赤ん坊って言われてる。
どういう事か気になったけど、今は霧戦に集中しなくちゃ。
「やばいぜ。あのバカチビ相手じゃ並の術士じゃ適わねーぜコラ!」
「なめんなコロネロ、髑髏は並の術士なんかじゃねーぞ。」
相手が最強の赤ん坊だと知っても尚、髑髏はトライデントをしっかりと握りしめて。
「誰だろうと、負けない。」
『髑髏………』
バイパーに向かって駆けていき、ビュッと武器を振るう。
それは難無くかわされる。
「けなげな攻撃だね。」
しかし、
ヒュンヒュン…
「ムム、この大蛇、幻覚ではないのか。」
バイパーは突如現れた大蛇に、ぐぐっと締め付けられる。
その重みに耐えきれなくなって、バイパーは床に落ちた。
「す、すごい!効いてるみたいです!」
「あの女!!やるではないか!!」
称賛するバジルと了平さん。
でも、隼人は眉間に皺を寄せている。
「獣を召喚するあの技は……」
「骸の能力、畜生道だ!!」
ツナが叫んだ。
確かに骸の技だけど、
隼人が言うように、髑髏が骸に憑依されてるんじゃないと思う。
ツナもそう思ってるみたい。
骸の技を使っても、
骸のリズムにはならない。
「(彼女自身の、意志を感じるんだ………!)」
大蛇に包まれてたバイパーのおしゃぶりが光る。
すると大蛇は吹っ飛んだ。
「僕もそろそろ力を解放するよ。君の正体はその後でゆっくり暴こう。」
髑髏は無言でトライデントを回し、再び床を突く。
ドドドド…
「うおおっ!」
「あちっ!」
「わあ!!」
体育館のあらゆる場所から火柱が立つ。
『あ、熱い……』
「あっ!檸檬が………!」
火柱にカプセルが囲まれて、室温は急上昇。
サウナよりもっと熱い、地獄みたいな。
『(やば……)』
脳を支配しようとする幻術の力が、あたしの中に流れ込んで来る。
ダメだ、
抵抗しきれない…
「檸檬!!しっかりして!」
向こうからツナの呼び声が聞こえた。
暑さで意識が朦朧とする。
「やべーな。檸檬の奴、抵抗能力を解除し始めてる。」
「諦めたって事かコラ。」
「その方が余計な力を使わずに観戦出来るからな。」
リボーンとコロネロの会話を聞いて、ツナが叫んだ。
「そんな!檸檬が危ないよ!!」
ツナ、
ありがと…
暑い中でも汗を拭って、観戦を続ける。
すると、
「ごめんなさい、檸檬さん。もうちょっと待ってて。」
『髑髏……』
ぽつりと聞こえたその言葉が、あたしを震わせた。
---「必ず勝つから待ってて。」
そう言ったように聞こえた。
バイパーもまた、火柱に一瞬取り込まれて、少し服を焦がして出てきた。
「確かに君の幻覚は一級品だ。一瞬でも火柱にリアリティを感じれば焼けこげてしまう程にね。」
「故に弱点もまた……幻覚!!!」
フードの下のバイパーの顔が消えて、何かの光を発した。
すると、さっきまであった火柱が、全部氷ってしまった。
『は……くしゅん!』
突然の環境変化に、思わず鳥肌が立つ。
「火柱が氷った!」
「何だこの寒さは…!」
「不覚にも幻覚にかかっちまったぜコラ。」
「俺もだぞ、さすがバイパーだな。」
これには、髑髏も混乱しているようだった。
バイパーが説明する。
「幻術とは人の知覚、即ち五感を司る脳を支配すると言う事。術士の能力が高ければ高い程支配力は強く、術にかかる確率も高まり現実感を持つ。」
あたしが抵抗しきれなくなったのは、
バイパーも髑髏もレベルが高い術士だって証拠。
「そして、術士にとって幻術を幻術で返される事は、知覚のコントロール権を完全に奪われた事を示している。」
「ああ!!」
見ると、髑髏の足は氷づけになって動かなくなっていた。
脳をコントロールされたらもう……
お終いだよ…。
「どうだい?忌わしきアルコバレーノの力は。さぁ、君の正体を暴こうじゃないか。」
バイパーの言葉に、髑髏は唇を噛みながら睨み付ける。
「もう何を念じてもムダだよ。君は既に僕の幻術世界の住人なのだからね。」
バイパーがくるっと指を動かすと、足が氷ったままの髑髏は宙を舞って床にたたき落とされた。
「あうっ!」
『(髑髏…)』
「やべーぜ、コラ。」
「だな。」
「う……」
負けられない、
私は負けられないのに……
「ムム?どうやらその武器は相当大事な物のようだね。」
「ダメ………」
相手の手がぐぐっと拳を作った。
ダメ、
ダメ、
壊さないで。
「ダメーーーッ!!!」
パァン、
叫んでもムダ、
そんな事分かってるの。
このトライデントが壊れたら私は……
ゴフッ、
「がはっ……う………!」
苦しい、
苦しい、
「え!?ええ!?」
ボス、ごめんなさい。
咳が止まらない。
「うう……」
倒れる事しか出来なかった。
「ど、どーしたんだ!?」
「顔が土色に……」
「あれを見ろ!!腹が!!」
髑髏の腹部が潰れていく。
その横には、砕けたトライデントの残骸。
『(髑髏…!)』
「陥没していく!!」
「これも幻覚~~!?」
「ムム、これは現実だ。どーなっている?何だ、この女……」
「む………さま……」
髑髏の脳裏に甦る、哀しい記憶。
---
------
------------
救急車のサイレン。
「お父様ですか?」
「いいや、私は血は繋がっておらんよ。」
ギリのお父さんと看護婦さんの会話。
「あの子ったら猫なんか助けようとして………!右目と内臓のいくつかはもうダメらしいわ。助からないって。」
そうなんだ…
「同じ血液型の血縁者の臓器を移植すれば助かるかもと医者が、」
「冗談じゃないわよ!!子供の為に体切るなんて!!」
お母さんは、私が嫌いなんだ。
「昔からあの子、友達も作らず何考えてるか分からないし、あなたにも懐かなかったでしょ?誰もあの子がそこまでして生きる事を望んじゃいないのよ。」
「おい、凪に聞こえる。」
「あの子は集中治療室よ。聞こえるワケないわ。」
聞こえてるよ、お母さん。
「お、会社だ。俺は仕事に戻る。好きにしろ。」
お義父さんの携帯が鳴って、彼は会社に戻っていった。
子供の命より、会社。
全部聞こえてるとも知らないで、お母さんは私の悪口しか言わない。
助からない、か。
私、死ぬんだ…
不思議ね、
何だか少し、ホッとしてるの。
やっと、終わる……
---「終わるものか………巡るばかりさ。」
突然頭に響いてきた声。
誰…?
---「おや、僕の声が聞こえるのですか?」
頑張って片目を開ける。
私は集中治療室じゃなくて、野原の中に1つだけある、ベッドの上にいた。
.そして、
天国とも言えるその自然の中に立っていた、私以外の人物、
男の人、
---「クフフフ、散歩はしてみるものですね。」
---「誰?何者なの?」
不思議と、すぐに起きあがれた。
彼は、微笑を浮かべてる。
私の問いには答えずに、一言だけ言った。
---「僕と君は、似た者同士かもしれない。」
あの時は、疑問に思っただけだった。
でもその後、私はその人に救われた。
「骸………様…………」
『(骸……!?)』
髑髏が呟いた彼の名前。
やっぱり、何か関係があるの?
「にわかに信じ難いが、彼女は幻覚で出来た内臓で延命していたらしいね。」
「幻覚で出来た内臓ー!?」
「それで幻覚のコントロールを失い、腹が潰れたんだな。」
「じゃ、本当にあの子、内臓が無いの!?」
犬ちゃんと千種が焦りの表情を浮かべる。
マーモン、早くリングを取って、もう終わらせて。
じゃなきゃ髑髏が……
---
--------
骸様に言われた。
「凪、僕には君が必要です。」
骸様に聞いた。
「檸檬と言いましてね、それは素敵な人です。」
だから、
骸様と檸檬さんをもう一度、会わせてあげたかった。
私が骸様の力になれるなら。
人と関わらなかった私が、唯一頑張れる事、
特殊だと言われるこの体を貸せる事。
「骸…様………力に…なりたかった…………」
勝って、檸檬さんとお話を……
.ごめんなさい、
ごめんなさい、
骸様……
---「上出来でしたよ、可愛い僕のクローム。」
倒れている髑髏の心臓の鼓動が、
弱くなっていく。
嫌だ、
嫌だよ、
こんな音は聞きたくない!!
早く終わらせて………!
髑髏を助けて………!
---「君は少し休みなさい。」
『あ…れ………?』
それまでこの場になかった、新しいリズムが聞こえて来る。
慌てて辺りを見回すけど、それらしき人は見当たらない。
『(ツナ………?)』
その青ざめた表情が目に止まった。
もしかして、
もしかして……
「なーんだ。フタを開ければマーモンの圧勝かよ。アルコバレーノの力もちょっとしか見れねーしさ。」
「これで全て終わったな。」
「檸檬は俺の彼女決定ー♪」
「ぬ?!」
レヴィがベルの言葉に反応したその時、
シュウウウ…
「霧が娘を包んでいくぞ!」
「なーに、最後の力を振り絞って自分の醜い死体を隠そうとする。女術士によくある行動パターンさ。」
違う……
---「檸檬……」
『え…?』
ツナと同じように、あたしも頭を抱え込んだ。
「どーしたんだ?」
「…………………来る!」
「ツナ!?」
異変に気がついたのは、ツナと檸檬だけでなく、ザンザスもだった。
「……………あいつだ………あいつが来る!!」
「あ、あいつ?」
髑髏のリズムが消えていく。
でもそれは、
“死”という消え方じゃなくて。
別のモノに打ち消されてく感じ…
『(聞き覚え………ある!!)』
あたしは知っている。
この落ち着いた鼓動を。
「おい!檸檬の様子もおかしいぞ!!」
「………来たな。」
了平の言葉に、リボーンはニッと口角を上げる。
同時に、ツナも叫んだ。
「六道骸が!!骸が来る!!!」
再生していくトライデント。
髑髏のリズムは、もう聞こえない。
『(この…感じ………)』
---「檸檬………」
『うっ……!!』
名前を呼ばれる度、頭痛がする。
それは多分、
呼ばれてるんじゃなくて、
直接脳に響いて来るから。
「ムム!?」
立ちこめる霧の中から微かに見える髑髏の左手。
だけどそれは、
黒い手袋をした手に変わって。
『あ…………!!』
眼帯は滑り落ちる。
まるで、
邪魔になったかのように。
---「会いたかった……」
『あ…なたは………』
---「檸檬………」
『む…くろ………』
頭に響く声はそこで途切れて、
今度は体育館に同じ声が響く。
「クフフフ……」
変わらない、
あの時と同じ、
笑い声だった。
懐かしいリズム、
懐かしい笑い声。
凪
「んな!!?う、浮いてる!!あいつもアルコバレーノ!?」
「ああ、奴も最強の赤ん坊の1人だぜ。」
「藍色のおしゃぶりのバイパー。アルコバレーノ一のサイキック能力を持つとも言われてる術士だ。」
マーモン改めバイパーは、戦いの最中行方不明になってたらしい。
コロネロは、生きている事に吃驚してた。
「なぜ今までおしゃぶりが光らなかったんだ?コラ。」
「よくわかんねーが、さっきのクサリみてーので封印してたみてーだな。」
「バカチビ共には分からぬ、研究の副産物さ。お前達と違って僕は怠らなかったからね。呪いを解く努力を。」
『呪い……?』
そう言えば、
アルコバレーノは最強の赤ん坊って言われてるけど、
同時に、
呪われた赤ん坊って言われてる。
どういう事か気になったけど、今は霧戦に集中しなくちゃ。
「やばいぜ。あのバカチビ相手じゃ並の術士じゃ適わねーぜコラ!」
「なめんなコロネロ、髑髏は並の術士なんかじゃねーぞ。」
相手が最強の赤ん坊だと知っても尚、髑髏はトライデントをしっかりと握りしめて。
「誰だろうと、負けない。」
『髑髏………』
バイパーに向かって駆けていき、ビュッと武器を振るう。
それは難無くかわされる。
「けなげな攻撃だね。」
しかし、
ヒュンヒュン…
「ムム、この大蛇、幻覚ではないのか。」
バイパーは突如現れた大蛇に、ぐぐっと締め付けられる。
その重みに耐えきれなくなって、バイパーは床に落ちた。
「す、すごい!効いてるみたいです!」
「あの女!!やるではないか!!」
称賛するバジルと了平さん。
でも、隼人は眉間に皺を寄せている。
「獣を召喚するあの技は……」
「骸の能力、畜生道だ!!」
ツナが叫んだ。
確かに骸の技だけど、
隼人が言うように、髑髏が骸に憑依されてるんじゃないと思う。
ツナもそう思ってるみたい。
骸の技を使っても、
骸のリズムにはならない。
「(彼女自身の、意志を感じるんだ………!)」
大蛇に包まれてたバイパーのおしゃぶりが光る。
すると大蛇は吹っ飛んだ。
「僕もそろそろ力を解放するよ。君の正体はその後でゆっくり暴こう。」
髑髏は無言でトライデントを回し、再び床を突く。
ドドドド…
「うおおっ!」
「あちっ!」
「わあ!!」
体育館のあらゆる場所から火柱が立つ。
『あ、熱い……』
「あっ!檸檬が………!」
火柱にカプセルが囲まれて、室温は急上昇。
サウナよりもっと熱い、地獄みたいな。
『(やば……)』
脳を支配しようとする幻術の力が、あたしの中に流れ込んで来る。
ダメだ、
抵抗しきれない…
「檸檬!!しっかりして!」
向こうからツナの呼び声が聞こえた。
暑さで意識が朦朧とする。
「やべーな。檸檬の奴、抵抗能力を解除し始めてる。」
「諦めたって事かコラ。」
「その方が余計な力を使わずに観戦出来るからな。」
リボーンとコロネロの会話を聞いて、ツナが叫んだ。
「そんな!檸檬が危ないよ!!」
ツナ、
ありがと…
暑い中でも汗を拭って、観戦を続ける。
すると、
「ごめんなさい、檸檬さん。もうちょっと待ってて。」
『髑髏……』
ぽつりと聞こえたその言葉が、あたしを震わせた。
---「必ず勝つから待ってて。」
そう言ったように聞こえた。
バイパーもまた、火柱に一瞬取り込まれて、少し服を焦がして出てきた。
「確かに君の幻覚は一級品だ。一瞬でも火柱にリアリティを感じれば焼けこげてしまう程にね。」
「故に弱点もまた……幻覚!!!」
フードの下のバイパーの顔が消えて、何かの光を発した。
すると、さっきまであった火柱が、全部氷ってしまった。
『は……くしゅん!』
突然の環境変化に、思わず鳥肌が立つ。
「火柱が氷った!」
「何だこの寒さは…!」
「不覚にも幻覚にかかっちまったぜコラ。」
「俺もだぞ、さすがバイパーだな。」
これには、髑髏も混乱しているようだった。
バイパーが説明する。
「幻術とは人の知覚、即ち五感を司る脳を支配すると言う事。術士の能力が高ければ高い程支配力は強く、術にかかる確率も高まり現実感を持つ。」
あたしが抵抗しきれなくなったのは、
バイパーも髑髏もレベルが高い術士だって証拠。
「そして、術士にとって幻術を幻術で返される事は、知覚のコントロール権を完全に奪われた事を示している。」
「ああ!!」
見ると、髑髏の足は氷づけになって動かなくなっていた。
脳をコントロールされたらもう……
お終いだよ…。
「どうだい?忌わしきアルコバレーノの力は。さぁ、君の正体を暴こうじゃないか。」
バイパーの言葉に、髑髏は唇を噛みながら睨み付ける。
「もう何を念じてもムダだよ。君は既に僕の幻術世界の住人なのだからね。」
バイパーがくるっと指を動かすと、足が氷ったままの髑髏は宙を舞って床にたたき落とされた。
「あうっ!」
『(髑髏…)』
「やべーぜ、コラ。」
「だな。」
「う……」
負けられない、
私は負けられないのに……
「ムム?どうやらその武器は相当大事な物のようだね。」
「ダメ………」
相手の手がぐぐっと拳を作った。
ダメ、
ダメ、
壊さないで。
「ダメーーーッ!!!」
パァン、
叫んでもムダ、
そんな事分かってるの。
このトライデントが壊れたら私は……
ゴフッ、
「がはっ……う………!」
苦しい、
苦しい、
「え!?ええ!?」
ボス、ごめんなさい。
咳が止まらない。
「うう……」
倒れる事しか出来なかった。
「ど、どーしたんだ!?」
「顔が土色に……」
「あれを見ろ!!腹が!!」
髑髏の腹部が潰れていく。
その横には、砕けたトライデントの残骸。
『(髑髏…!)』
「陥没していく!!」
「これも幻覚~~!?」
「ムム、これは現実だ。どーなっている?何だ、この女……」
「む………さま……」
髑髏の脳裏に甦る、哀しい記憶。
---
------
------------
救急車のサイレン。
「お父様ですか?」
「いいや、私は血は繋がっておらんよ。」
ギリのお父さんと看護婦さんの会話。
「あの子ったら猫なんか助けようとして………!右目と内臓のいくつかはもうダメらしいわ。助からないって。」
そうなんだ…
「同じ血液型の血縁者の臓器を移植すれば助かるかもと医者が、」
「冗談じゃないわよ!!子供の為に体切るなんて!!」
お母さんは、私が嫌いなんだ。
「昔からあの子、友達も作らず何考えてるか分からないし、あなたにも懐かなかったでしょ?誰もあの子がそこまでして生きる事を望んじゃいないのよ。」
「おい、凪に聞こえる。」
「あの子は集中治療室よ。聞こえるワケないわ。」
聞こえてるよ、お母さん。
「お、会社だ。俺は仕事に戻る。好きにしろ。」
お義父さんの携帯が鳴って、彼は会社に戻っていった。
子供の命より、会社。
全部聞こえてるとも知らないで、お母さんは私の悪口しか言わない。
助からない、か。
私、死ぬんだ…
不思議ね、
何だか少し、ホッとしてるの。
やっと、終わる……
---「終わるものか………巡るばかりさ。」
突然頭に響いてきた声。
誰…?
---「おや、僕の声が聞こえるのですか?」
頑張って片目を開ける。
私は集中治療室じゃなくて、野原の中に1つだけある、ベッドの上にいた。
.そして、
天国とも言えるその自然の中に立っていた、私以外の人物、
男の人、
---「クフフフ、散歩はしてみるものですね。」
---「誰?何者なの?」
不思議と、すぐに起きあがれた。
彼は、微笑を浮かべてる。
私の問いには答えずに、一言だけ言った。
---「僕と君は、似た者同士かもしれない。」
あの時は、疑問に思っただけだった。
でもその後、私はその人に救われた。
「骸………様…………」
『(骸……!?)』
髑髏が呟いた彼の名前。
やっぱり、何か関係があるの?
「にわかに信じ難いが、彼女は幻覚で出来た内臓で延命していたらしいね。」
「幻覚で出来た内臓ー!?」
「それで幻覚のコントロールを失い、腹が潰れたんだな。」
「じゃ、本当にあの子、内臓が無いの!?」
犬ちゃんと千種が焦りの表情を浮かべる。
マーモン、早くリングを取って、もう終わらせて。
じゃなきゃ髑髏が……
---
--------
骸様に言われた。
「凪、僕には君が必要です。」
骸様に聞いた。
「檸檬と言いましてね、それは素敵な人です。」
だから、
骸様と檸檬さんをもう一度、会わせてあげたかった。
私が骸様の力になれるなら。
人と関わらなかった私が、唯一頑張れる事、
特殊だと言われるこの体を貸せる事。
「骸…様………力に…なりたかった…………」
勝って、檸檬さんとお話を……
.ごめんなさい、
ごめんなさい、
骸様……
---「上出来でしたよ、可愛い僕のクローム。」
倒れている髑髏の心臓の鼓動が、
弱くなっていく。
嫌だ、
嫌だよ、
こんな音は聞きたくない!!
早く終わらせて………!
髑髏を助けて………!
---「君は少し休みなさい。」
『あ…れ………?』
それまでこの場になかった、新しいリズムが聞こえて来る。
慌てて辺りを見回すけど、それらしき人は見当たらない。
『(ツナ………?)』
その青ざめた表情が目に止まった。
もしかして、
もしかして……
「なーんだ。フタを開ければマーモンの圧勝かよ。アルコバレーノの力もちょっとしか見れねーしさ。」
「これで全て終わったな。」
「檸檬は俺の彼女決定ー♪」
「ぬ?!」
レヴィがベルの言葉に反応したその時、
シュウウウ…
「霧が娘を包んでいくぞ!」
「なーに、最後の力を振り絞って自分の醜い死体を隠そうとする。女術士によくある行動パターンさ。」
違う……
---「檸檬……」
『え…?』
ツナと同じように、あたしも頭を抱え込んだ。
「どーしたんだ?」
「…………………来る!」
「ツナ!?」
異変に気がついたのは、ツナと檸檬だけでなく、ザンザスもだった。
「……………あいつだ………あいつが来る!!」
「あ、あいつ?」
髑髏のリズムが消えていく。
でもそれは、
“死”という消え方じゃなくて。
別のモノに打ち消されてく感じ…
『(聞き覚え………ある!!)』
あたしは知っている。
この落ち着いた鼓動を。
「おい!檸檬の様子もおかしいぞ!!」
「………来たな。」
了平の言葉に、リボーンはニッと口角を上げる。
同時に、ツナも叫んだ。
「六道骸が!!骸が来る!!!」
再生していくトライデント。
髑髏のリズムは、もう聞こえない。
『(この…感じ………)』
---「檸檬………」
『うっ……!!』
名前を呼ばれる度、頭痛がする。
それは多分、
呼ばれてるんじゃなくて、
直接脳に響いて来るから。
「ムム!?」
立ちこめる霧の中から微かに見える髑髏の左手。
だけどそれは、
黒い手袋をした手に変わって。
『あ…………!!』
眼帯は滑り落ちる。
まるで、
邪魔になったかのように。
---「会いたかった……」
『あ…なたは………』
---「檸檬………」
『む…くろ………』
頭に響く声はそこで途切れて、
今度は体育館に同じ声が響く。
「クフフフ……」
変わらない、
あの時と同じ、
笑い声だった。