ヴァリアー編
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約束を守って貰った喜びを、
再会出来た幸せを、
噛み締めて。
クローム襲撃
ヴァリアーの泊まるホテルのバルコニー。
その柵に1人立つマーモンは、思いっきり息を吸い込み、粘写をする。
しばらくその紙を真剣に見つめていたが、ふと振り返る。
「ベルかい?」
振り向いた先には、松葉杖を使って立つベルが。
「さっすがマーモン。気配は消したつもりだったんだけどな。また粘写?」
「まぁね。」
「見つかったの?相手の霧の守護者は。」
「相変わらずだよ。」
マーモンの返事を聞いて、ベルはだらりと柵にもたれ掛かる。
「やっぱ用意出来てねーんじゃねーの?あいつら。」
「それはないよ。」
スパッと反論したマーモンは、先程の粘写の紙をベルに見せながら言う。
「僕の粘写を阻止しようとする力を感じるからね。」
その紙には、“cd”と書かれていた。
「何それ?暗号?」
「さぁね。こんな事は初めてさ。どーやら相手は僕と同じ特殊な人間らしい。」
「うしし♪と・く・しゅ ねぇ。」
その単語に反応して楽しそうな笑みを見せるベル。
しかし、すぐに屋内に戻ろうとマーモンに背を向ける。
「ま、いいや。俺としてはバトルがなくても初公開のマーモンの力を見せてくれればさ。」
「ただで見せる気はないよ。今晩の勝負も見物料くれなきゃ入れないし。」
「あのなぁ……」
ベルが何か言おうとするのを遮り、マーモンは続ける。
「それに、僕が勝てば檸檬はベルの彼女になるんだろ?だったら僕に謝礼金を用意するべきだね。」
するとベルは完全に振り返る。
「うわー………何このチビ。ムカツク殺してー。」
「やるかい?」
「退屈しててさ♪」
「だろーね。」
ナイフを構えたベルに、対抗しようと身構えるマーモン。
ところが、ベルはすぐにナイフを下ろして。
「あーあ、バカらし。」
「ム?珍しいね。」
「だーってさ、檸檬がいないと全部つまんねーんだもん。早く会いたいなー♪」
再び背を向けるベルに、マーモンは言った。
「僕の口座にSランクの報酬3倍分ね。」
「………ふざけんな、鼻タレ小僧。」
「ちゃんと入金チェックするからね。」
「べー。」
下を出しながら、ベルは屋内に戻っていった。
ドアが閉まる音がした後、マーモンは呟く。
「はっきり言って対戦相手には興味ない。油断出来ないのはむしろアイツだ。何を連れて来る気だ……?」
その脳裏に浮かぶのは、1人の赤ん坊。
「(黄色いおしゃぶりのアルコバレーノ・リボーン。)」
風で揺らめくマーモンのコートの下には、リボーンと同じようなおしゃぶりが下げられていた。
---
------
-----------
山のふもとの駄菓子屋にて。
気絶したツナをベンチに寝かせ、リボーンはその横に座り、犬と千種に言った。
「お前ら大人しくしてると、ただのイヤな感じの中学生だな。」
「うっへー!嫌な感じはよけーら!!あんまなめてっと!」
犬は何かの歯を装着する。
すると頬にサイを象ったイラストが浮き出て、
「ど突くっつの!!」
犬の鼻は太い角に変化した。
するとリボーンは、
「お、出たな。カバチャンネル。」
と、わざと間違える。
「ちげーっつの!!サイだっつの!これ角らっ角!!ぶっ殺すっ角!!」
自分の角を指差しながらリボーンに怒鳴る犬を、千種が止める。
「もーやめなよ、犬。今は他にやる事あるし。」
「うるへーっ殺す!!こいつもボンゴレも!!」
掴み掛かろうとする犬に、リボーンは呆れながら言う。
「ツナの奴、情けねーな。もっと喜ぶかと思ったのに。」
その言葉に2人が疑問符を浮かべると、こう続けた。
「黒曜ランドでの戦いの後ツナの奴、俺が何か情報を掴んでるんじゃないかと、あの戦いを思い出す度に聞いて来てな。」
---「あいつら………殺されたりしてないよな?」
---「知らねーぞ。」
「よほどお前達が心配だったみてーだぞ。」
リボーンの話を聞いた犬と千種は、ツナを見つめて黙り込む。
「ゲッ、こいつ何で出来てんの?何でこんなにウゼーの!?」
ふと口火を切った犬は、思いっきりツナを罵った。
千種は相変わらず黙ったまま。
「こいつ触るとウザいのうつる!!行こうぜ、柿ピー。」
「待て。」
背を向けた犬を引き止めるリボーン。
犬は不服そうに振り返る。
「まだ何か用があんのか?」
「もうそろそろだ。」
リボーンの言葉に、犬と千種は再び疑問符を浮かべた。
---
------
-----------
『長居し過ぎたかなぁ?』
俊足で飛ばしてるけど、やっぱり山まで行くのは時間が掛かる。
あれから、武のトコでトロもご馳走になって、あたしはお礼を言いまくった。
そして今、リボーンに言われた駄菓子屋さんに向かってる。
あの角を曲がれば、見えて来るはず。
古い駄菓子屋さんに、錆びたベンチ。
徐々にスピードを落として、あたしは角を曲がった。
『リボーン!』
「檸檬っ!!」
『犬ちゃんっ!?』
え?え?
どうして………?
犬ちゃんは、あたしを見つけた途端駆け寄って、ぎゅーって抱きついて来た。
ワケが分からないまま、あたしはぽかんとする。
そして、
犬ちゃんの腕の向こうに見えたのは、同じように駆け寄って来る千種。
『千種…!!』
信じられなかった。
だからこそ余計に、
嬉しかった。
「檸檬……会いたかったれす。」
『犬ちゃん………』
ちょっとハネてる犬ちゃんの髪を、撫でてみる。
空いてる手は、千種の方に伸ばして。
『久しぶり、千種。』
「檸檬………」
千種はあたしの手をぎゅっと握ってくれた。
変わらないね。
そんな貴方達が大好きだよ。
どうやって出たかは知らない。
何で此処にいるのかも……おおよその事しか分からない。
だけど、
『ありがとう。』
黒曜ランドの事件後、どうなったか心配だった。
あの時の約束が果たされる日は来るのか、すごく不安だった。
だけど、
『帰って来てくれたね♪』
「勿論れす。」
「檸檬との約束、破るワケない………。」
2人が返してくれた言葉も、
とってもあったかくて。
ちょっと泣きそうになった。
『良かった………本当に良かった!!』
久しぶりに会ったってのに、檸檬は態度1つ変えずに俺達と接してくれた。
『あの、さ。』
檸檬が急にもじもじして聞く。
「何だびょん?」
『骸にも………伝えてくれた?』
それはきっと、
俺達と檸檬の約束の事。
---『またいつか、会おう。』
あの時の檸檬の優しい表情が、
忘れられなくて。
俺達はホントに檸檬が大好きらったんらな、
って思った。
骸さんはあの時気を失ってたから、
牢獄の中で色々話した。
最後に、何があったか。
ボンゴレが何て言ったか。
そして、
俺達と檸檬の約束。
檸檬のあったかかった手。
綺麗だった笑顔。
骸さんは全部聞き終わると、
「会いたいですね。」
と言った。
俺は返事をして、柿ピーも無言で頷いた。
「伝えたびょん。」
『ホントにホント?』
「ちゃんと、伝えた。」
俺と柿ピーの返事を聞くと、檸檬はまた嬉しそうに笑った。
その笑顔を見て、
やっぱり檸檬が大好きらなって思った。
でも、嬉しくて楽しい時間はあっという間に過ぎて。
「犬、もう行かないと。」
「イヤら!もっと檸檬といる!!」
檸檬をもっかいギューッてする。
『犬ちゃん、今夜会えるから。』
檸檬も困ったように笑ってた。
俺が我が儘言ったのがいけなかったんかな。
「分かったびょん………」
『いー子、いー子。』
俺が柿ピーに返事すると、檸檬が頭を撫でてくれた。
『千種も、また今夜。』
「うん。」
「あ!」
俺は1つ言っておく事を思い出した。
「いーか!アルコバレーノ!てめーには勿体無い霧の守護者らって、ボンゴレに言っとけ!」
『犬ちゃん………』
「んじゃぁ、夜な。」
俺達が歩き出すと、檸檬が数歩だけ駆け寄る音がした。
『絶対絶対来てねーっ!』
檸檬は俺達が見えなくなるまで手を振ってた。
すごく嬉しかった。
---
------
-----------
イタリア、ボンゴレ9代目の部屋にて。
椅子に腰掛ける9代目の前に立つ家光。
「どうした?家光。何か言いたそうな顔だな。」
「9代目、貴方の後継者の座を巡って、毎晩ボンゴレの若い血が流れています。」
「無論、知っておる。勅命を出したのはワシだからな。楽しませてもらってるぞ。」
“楽しむ”という言葉に、家光はピクリと反応する。
「何故です!貴方はどうして檸檬を中立にしたんですか!?」
「檸檬は両者と深い関わりを持つ。中立にするのは当然の事。」
「その為に、檸檬の涙が流れてもですか!?深く心が傷付いてもですか!?」
家光の問いに、9代目は顔をしかめ始める。
「檸檬はもともと、心無き戦闘マシーンだった。その頃に戻るだけの話じゃ。」
「何を………!」
怒鳴ろうとした家光は、ぐっと拳を握りしめつつ抑える。
そして、静かに言った。
「9代目、あなたは武力で物事を判断する人間ではなかった。これも全て、あの日の事が原因………やはりはっきりさせておくべきだったのだ。」
家光の表情が真剣さを増す。
「ザンザスの事を………………“揺りかご”で何があったのかを………」
すると今度は、9代目の表情が曇り出す。
「揺りかご………二度とそれを口にするなと言ったはずだ。家光、貴様わしを詰問する為にこの騒ぎを?」
「いいえ……私は貴方を救出しに来ました。」
「救出………?」
9代目の声色に、少し笑いが含まれた。
「かつて若獅子と呼ばれたお前らしくない答えだ。何故その必要がある?」
すくっと立ち上がる9代目。
「この通り、最近すっかりふくらはぎの調子も良くなっての………」
9代目が立ったその時、家光に衝撃が走る。
「もうお前の力を借りずとも、ボンゴレはやっていける。」
「9代目…………」
「一足先に行って、息子を待つがいい。」
ズガン、
次の瞬間、部屋に深紅の飛沫が飛び散った。
---
------
-----------
「うーん……」
「やっと起きたか?」
ツナが目覚めると、そこは…
「た、体育館!!?」
「10代目!!お加減は!!」
「やっと起きたか。」
「バジルがここまでおんぶってくれたぞ。」
恥ずかしそうにバジルに礼を言うツナ。
ふと、山本の右目が白いガーゼで覆われているのを目にする。
「山本、大丈夫なの?その…目………」
「ああ、ロマーリオのおっさんが心配ねーってさ。」
いつものように笑う山本に、ツナもホッとした。
と同時に、自分が眠っていた理由を思い出せずに首をかしげる。
「10代目、まだ霧の奴が姿を現しません。」
「ええ!?そんな!!」
「本当に存在しているのか?そいつは……」
「敵ももう来てるってのに……」
獄寺の言葉に、ツナは視線をヴァリアーの方に向ける。
その目に映ったのは、
大きな椅子にどかっと座るザンザスと、
その後ろに立つモスカ、
横に立つレヴィと、
舞台に寄り掛かるベル、
そして…
「檸檬、だっこ。」
『うん、いーよ♪』
体育館の中央で、仲良く楽しそうに笑いあってるマーモンと檸檬だった。
「檸檬……」
どんなに自分に言い聞かせても、
やはり納得いかない。
檸檬がヴァリアーと仲良くしているのは、
どうしても嫌だった。
ふと気が付けば、周りにいる獄寺や山本、了平、バジルも、表情を歪ませている。
「(みんな………嫌なんだ。)」
と、その時。
ぞくっ、
「(え?)」
変な感覚が、ツナの中を駆け抜けた。
「こっちの霧の守護者のおでましだぞ。」
リボーンの言葉に反応し、入口に目を向ける並盛メンバー。
そして、
『来る……』
「ム?」
マーモンをぎゅっと抱きしめていた檸檬も、固まるように入口を見つめる。
そこに現れたのは…
黒曜中の制服を着た、犬と千種だった。
「あ"あ"!!」
「あ、あれ?あいつらって……?」
「バ、バカな!!」
ツナ、武、隼人の顔がみるみる青ざめていく。
「何故こんな時に!!」
瞬時にボムを構える隼人。
でもリボーンが、
「落ち着けお前達。こいつらは霧の守護者を連れて来たんだ。」
と。
「ム?やはりちゃんと見つけていたみたいだね。」
『じゃなきゃ、今夜不戦勝でヴァリアーの勝ちじゃん。』
「それでもいいけどね。」
あたしとマーモンが話している間に、隼人が気が付いたように言う。
「ま、まさか、霧の守護者とは!!」
「こいつらが連れて来るって事は………」
「う、うそだ…………」
信じたくないのは分かってる。
だけど、
他にいないのも事実。
「霧の守護者って…………ろ…六道骸!!!」
ツナがその名を口にした。
ところが、
「クフフフフ………クフフフフフフ…………」
聞こえて来たのは、女の子の声。
『(あれ?)』
ちょっと計算違い。
「Lo nego. Il mio nome e' Chrome.」
(否、我が名はクローム)
脱ぎ捨てられる上着、
黒いブーツ、
ドクロのマークがついた眼帯、
「クローム髑髏。」
「六道骸じゃ…………ない!!?」
困惑したツナの声。
でも、
彼女の手にあるのは、
見覚えのあるトライデント…
『(髑髏……)』
何者かは分からない。
だけど、
その奥に、
どこか懐かしい感じを見つけた---。
再会出来た幸せを、
噛み締めて。
クローム襲撃
ヴァリアーの泊まるホテルのバルコニー。
その柵に1人立つマーモンは、思いっきり息を吸い込み、粘写をする。
しばらくその紙を真剣に見つめていたが、ふと振り返る。
「ベルかい?」
振り向いた先には、松葉杖を使って立つベルが。
「さっすがマーモン。気配は消したつもりだったんだけどな。また粘写?」
「まぁね。」
「見つかったの?相手の霧の守護者は。」
「相変わらずだよ。」
マーモンの返事を聞いて、ベルはだらりと柵にもたれ掛かる。
「やっぱ用意出来てねーんじゃねーの?あいつら。」
「それはないよ。」
スパッと反論したマーモンは、先程の粘写の紙をベルに見せながら言う。
「僕の粘写を阻止しようとする力を感じるからね。」
その紙には、“cd”と書かれていた。
「何それ?暗号?」
「さぁね。こんな事は初めてさ。どーやら相手は僕と同じ特殊な人間らしい。」
「うしし♪と・く・しゅ ねぇ。」
その単語に反応して楽しそうな笑みを見せるベル。
しかし、すぐに屋内に戻ろうとマーモンに背を向ける。
「ま、いいや。俺としてはバトルがなくても初公開のマーモンの力を見せてくれればさ。」
「ただで見せる気はないよ。今晩の勝負も見物料くれなきゃ入れないし。」
「あのなぁ……」
ベルが何か言おうとするのを遮り、マーモンは続ける。
「それに、僕が勝てば檸檬はベルの彼女になるんだろ?だったら僕に謝礼金を用意するべきだね。」
するとベルは完全に振り返る。
「うわー………何このチビ。ムカツク殺してー。」
「やるかい?」
「退屈しててさ♪」
「だろーね。」
ナイフを構えたベルに、対抗しようと身構えるマーモン。
ところが、ベルはすぐにナイフを下ろして。
「あーあ、バカらし。」
「ム?珍しいね。」
「だーってさ、檸檬がいないと全部つまんねーんだもん。早く会いたいなー♪」
再び背を向けるベルに、マーモンは言った。
「僕の口座にSランクの報酬3倍分ね。」
「………ふざけんな、鼻タレ小僧。」
「ちゃんと入金チェックするからね。」
「べー。」
下を出しながら、ベルは屋内に戻っていった。
ドアが閉まる音がした後、マーモンは呟く。
「はっきり言って対戦相手には興味ない。油断出来ないのはむしろアイツだ。何を連れて来る気だ……?」
その脳裏に浮かぶのは、1人の赤ん坊。
「(黄色いおしゃぶりのアルコバレーノ・リボーン。)」
風で揺らめくマーモンのコートの下には、リボーンと同じようなおしゃぶりが下げられていた。
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山のふもとの駄菓子屋にて。
気絶したツナをベンチに寝かせ、リボーンはその横に座り、犬と千種に言った。
「お前ら大人しくしてると、ただのイヤな感じの中学生だな。」
「うっへー!嫌な感じはよけーら!!あんまなめてっと!」
犬は何かの歯を装着する。
すると頬にサイを象ったイラストが浮き出て、
「ど突くっつの!!」
犬の鼻は太い角に変化した。
するとリボーンは、
「お、出たな。カバチャンネル。」
と、わざと間違える。
「ちげーっつの!!サイだっつの!これ角らっ角!!ぶっ殺すっ角!!」
自分の角を指差しながらリボーンに怒鳴る犬を、千種が止める。
「もーやめなよ、犬。今は他にやる事あるし。」
「うるへーっ殺す!!こいつもボンゴレも!!」
掴み掛かろうとする犬に、リボーンは呆れながら言う。
「ツナの奴、情けねーな。もっと喜ぶかと思ったのに。」
その言葉に2人が疑問符を浮かべると、こう続けた。
「黒曜ランドでの戦いの後ツナの奴、俺が何か情報を掴んでるんじゃないかと、あの戦いを思い出す度に聞いて来てな。」
---「あいつら………殺されたりしてないよな?」
---「知らねーぞ。」
「よほどお前達が心配だったみてーだぞ。」
リボーンの話を聞いた犬と千種は、ツナを見つめて黙り込む。
「ゲッ、こいつ何で出来てんの?何でこんなにウゼーの!?」
ふと口火を切った犬は、思いっきりツナを罵った。
千種は相変わらず黙ったまま。
「こいつ触るとウザいのうつる!!行こうぜ、柿ピー。」
「待て。」
背を向けた犬を引き止めるリボーン。
犬は不服そうに振り返る。
「まだ何か用があんのか?」
「もうそろそろだ。」
リボーンの言葉に、犬と千種は再び疑問符を浮かべた。
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『長居し過ぎたかなぁ?』
俊足で飛ばしてるけど、やっぱり山まで行くのは時間が掛かる。
あれから、武のトコでトロもご馳走になって、あたしはお礼を言いまくった。
そして今、リボーンに言われた駄菓子屋さんに向かってる。
あの角を曲がれば、見えて来るはず。
古い駄菓子屋さんに、錆びたベンチ。
徐々にスピードを落として、あたしは角を曲がった。
『リボーン!』
「檸檬っ!!」
『犬ちゃんっ!?』
え?え?
どうして………?
犬ちゃんは、あたしを見つけた途端駆け寄って、ぎゅーって抱きついて来た。
ワケが分からないまま、あたしはぽかんとする。
そして、
犬ちゃんの腕の向こうに見えたのは、同じように駆け寄って来る千種。
『千種…!!』
信じられなかった。
だからこそ余計に、
嬉しかった。
「檸檬……会いたかったれす。」
『犬ちゃん………』
ちょっとハネてる犬ちゃんの髪を、撫でてみる。
空いてる手は、千種の方に伸ばして。
『久しぶり、千種。』
「檸檬………」
千種はあたしの手をぎゅっと握ってくれた。
変わらないね。
そんな貴方達が大好きだよ。
どうやって出たかは知らない。
何で此処にいるのかも……おおよその事しか分からない。
だけど、
『ありがとう。』
黒曜ランドの事件後、どうなったか心配だった。
あの時の約束が果たされる日は来るのか、すごく不安だった。
だけど、
『帰って来てくれたね♪』
「勿論れす。」
「檸檬との約束、破るワケない………。」
2人が返してくれた言葉も、
とってもあったかくて。
ちょっと泣きそうになった。
『良かった………本当に良かった!!』
久しぶりに会ったってのに、檸檬は態度1つ変えずに俺達と接してくれた。
『あの、さ。』
檸檬が急にもじもじして聞く。
「何だびょん?」
『骸にも………伝えてくれた?』
それはきっと、
俺達と檸檬の約束の事。
---『またいつか、会おう。』
あの時の檸檬の優しい表情が、
忘れられなくて。
俺達はホントに檸檬が大好きらったんらな、
って思った。
骸さんはあの時気を失ってたから、
牢獄の中で色々話した。
最後に、何があったか。
ボンゴレが何て言ったか。
そして、
俺達と檸檬の約束。
檸檬のあったかかった手。
綺麗だった笑顔。
骸さんは全部聞き終わると、
「会いたいですね。」
と言った。
俺は返事をして、柿ピーも無言で頷いた。
「伝えたびょん。」
『ホントにホント?』
「ちゃんと、伝えた。」
俺と柿ピーの返事を聞くと、檸檬はまた嬉しそうに笑った。
その笑顔を見て、
やっぱり檸檬が大好きらなって思った。
でも、嬉しくて楽しい時間はあっという間に過ぎて。
「犬、もう行かないと。」
「イヤら!もっと檸檬といる!!」
檸檬をもっかいギューッてする。
『犬ちゃん、今夜会えるから。』
檸檬も困ったように笑ってた。
俺が我が儘言ったのがいけなかったんかな。
「分かったびょん………」
『いー子、いー子。』
俺が柿ピーに返事すると、檸檬が頭を撫でてくれた。
『千種も、また今夜。』
「うん。」
「あ!」
俺は1つ言っておく事を思い出した。
「いーか!アルコバレーノ!てめーには勿体無い霧の守護者らって、ボンゴレに言っとけ!」
『犬ちゃん………』
「んじゃぁ、夜な。」
俺達が歩き出すと、檸檬が数歩だけ駆け寄る音がした。
『絶対絶対来てねーっ!』
檸檬は俺達が見えなくなるまで手を振ってた。
すごく嬉しかった。
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イタリア、ボンゴレ9代目の部屋にて。
椅子に腰掛ける9代目の前に立つ家光。
「どうした?家光。何か言いたそうな顔だな。」
「9代目、貴方の後継者の座を巡って、毎晩ボンゴレの若い血が流れています。」
「無論、知っておる。勅命を出したのはワシだからな。楽しませてもらってるぞ。」
“楽しむ”という言葉に、家光はピクリと反応する。
「何故です!貴方はどうして檸檬を中立にしたんですか!?」
「檸檬は両者と深い関わりを持つ。中立にするのは当然の事。」
「その為に、檸檬の涙が流れてもですか!?深く心が傷付いてもですか!?」
家光の問いに、9代目は顔をしかめ始める。
「檸檬はもともと、心無き戦闘マシーンだった。その頃に戻るだけの話じゃ。」
「何を………!」
怒鳴ろうとした家光は、ぐっと拳を握りしめつつ抑える。
そして、静かに言った。
「9代目、あなたは武力で物事を判断する人間ではなかった。これも全て、あの日の事が原因………やはりはっきりさせておくべきだったのだ。」
家光の表情が真剣さを増す。
「ザンザスの事を………………“揺りかご”で何があったのかを………」
すると今度は、9代目の表情が曇り出す。
「揺りかご………二度とそれを口にするなと言ったはずだ。家光、貴様わしを詰問する為にこの騒ぎを?」
「いいえ……私は貴方を救出しに来ました。」
「救出………?」
9代目の声色に、少し笑いが含まれた。
「かつて若獅子と呼ばれたお前らしくない答えだ。何故その必要がある?」
すくっと立ち上がる9代目。
「この通り、最近すっかりふくらはぎの調子も良くなっての………」
9代目が立ったその時、家光に衝撃が走る。
「もうお前の力を借りずとも、ボンゴレはやっていける。」
「9代目…………」
「一足先に行って、息子を待つがいい。」
ズガン、
次の瞬間、部屋に深紅の飛沫が飛び散った。
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「うーん……」
「やっと起きたか?」
ツナが目覚めると、そこは…
「た、体育館!!?」
「10代目!!お加減は!!」
「やっと起きたか。」
「バジルがここまでおんぶってくれたぞ。」
恥ずかしそうにバジルに礼を言うツナ。
ふと、山本の右目が白いガーゼで覆われているのを目にする。
「山本、大丈夫なの?その…目………」
「ああ、ロマーリオのおっさんが心配ねーってさ。」
いつものように笑う山本に、ツナもホッとした。
と同時に、自分が眠っていた理由を思い出せずに首をかしげる。
「10代目、まだ霧の奴が姿を現しません。」
「ええ!?そんな!!」
「本当に存在しているのか?そいつは……」
「敵ももう来てるってのに……」
獄寺の言葉に、ツナは視線をヴァリアーの方に向ける。
その目に映ったのは、
大きな椅子にどかっと座るザンザスと、
その後ろに立つモスカ、
横に立つレヴィと、
舞台に寄り掛かるベル、
そして…
「檸檬、だっこ。」
『うん、いーよ♪』
体育館の中央で、仲良く楽しそうに笑いあってるマーモンと檸檬だった。
「檸檬……」
どんなに自分に言い聞かせても、
やはり納得いかない。
檸檬がヴァリアーと仲良くしているのは、
どうしても嫌だった。
ふと気が付けば、周りにいる獄寺や山本、了平、バジルも、表情を歪ませている。
「(みんな………嫌なんだ。)」
と、その時。
ぞくっ、
「(え?)」
変な感覚が、ツナの中を駆け抜けた。
「こっちの霧の守護者のおでましだぞ。」
リボーンの言葉に反応し、入口に目を向ける並盛メンバー。
そして、
『来る……』
「ム?」
マーモンをぎゅっと抱きしめていた檸檬も、固まるように入口を見つめる。
そこに現れたのは…
黒曜中の制服を着た、犬と千種だった。
「あ"あ"!!」
「あ、あれ?あいつらって……?」
「バ、バカな!!」
ツナ、武、隼人の顔がみるみる青ざめていく。
「何故こんな時に!!」
瞬時にボムを構える隼人。
でもリボーンが、
「落ち着けお前達。こいつらは霧の守護者を連れて来たんだ。」
と。
「ム?やはりちゃんと見つけていたみたいだね。」
『じゃなきゃ、今夜不戦勝でヴァリアーの勝ちじゃん。』
「それでもいいけどね。」
あたしとマーモンが話している間に、隼人が気が付いたように言う。
「ま、まさか、霧の守護者とは!!」
「こいつらが連れて来るって事は………」
「う、うそだ…………」
信じたくないのは分かってる。
だけど、
他にいないのも事実。
「霧の守護者って…………ろ…六道骸!!!」
ツナがその名を口にした。
ところが、
「クフフフフ………クフフフフフフ…………」
聞こえて来たのは、女の子の声。
『(あれ?)』
ちょっと計算違い。
「Lo nego. Il mio nome e' Chrome.」
(否、我が名はクローム)
脱ぎ捨てられる上着、
黒いブーツ、
ドクロのマークがついた眼帯、
「クローム髑髏。」
「六道骸じゃ…………ない!!?」
困惑したツナの声。
でも、
彼女の手にあるのは、
見覚えのあるトライデント…
『(髑髏……)』
何者かは分からない。
だけど、
その奥に、
どこか懐かしい感じを見つけた---。