ヴァリアー編
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イタリアの山奥。
聳え立つボンゴレの本部からは時折黒煙が昇り、銃声が聞こえる。
「D地区にまで潜り込まれたぞ!!」
1人の男の掛け声と共に、何人ものマフィアがそこへ向かう。
しかし、ズガガガという銃声が聞こえると、彼らは柵を乗り越え湖の中へ。
「やはり気持ちいいものじゃないわ。」
銃を構えた女性・オレガノが言う。
「つい先日まで同士だった者を撃つのは。」
「仕方あるまいて、オレガノ。これも9代目を救出する為。」
オレガノの後ろには、同じく銃を構えた男・ターメリックが。
「それにしてもこの城………一歩内部に足を踏み入れると隠し通路ばかりで、まるで迷宮だわ。」
「それだけボンゴレには隠すべき秘密が多いという事。業が多いとも言えるがな…………」
と、そこに。
「見つけたぜ!お二方っ!!」
小さくすばしっこい影が。
「家光は最深部へ突入したぜ。最後んトコではぐれたが………あそこまで行きゃあ大丈夫だろう。」
黒い髪に、ゴーグルをつけマントを羽織った赤ん坊。
「でかしたぞ、ラル・ミルチ。」
「流石アルコバレーノというところかしら、ラル。」
「からかうなオレガノ。俺は、なりそこないだ。」
そう言うラルの右頬には、火傷のような跡が。
霧の守護者
ボンゴレの屋敷内。
「こっちだぞ!」
十数人のマフィアが、曲がり角に向かって走って来る。
その先にいるのは……
「バカヤローが………出て来なけりゃ………」
家光だった。
手榴弾のピンを引き、彼らの方に投げる。
ドンッ、
「ぎゃあ!!」
爆発したその瞬間、家光は走り出す。
「(突き当たり……左側のカラヴァッジオ………)」
その絵目掛けて、思いっきり体当たり。
すると、家光の体はとある部屋へと転げ落ちる。
「おー、いて。」
「何の騒ぎだ?」
後頭部をさする家光は、その部屋の主に話し掛けられる。
顔をあげれば、広い部屋の中にぽつりと置かれた椅子に座る人物と目が会う。
「家光………」
その眼光は鋭く、威厳に満ちている。
「9代……目………」
「首を長くして待っておったぞ。足を病んで歩けなくなったと文を送ってからどれくらい経つかの。」
9代目の持つ威厳に汗を滲ませながら、家光は固まったまま。
「いつまでそうしておるつもりだ?顔が見たい。」
「はっ。」
持っていた銃を床に置き、家光は9代目の方へと歩み寄る。
そして、跪いて深々とお辞儀をした。
明朝、日本。
『ん………』
「起きたか、檸檬。」
『ディーノ………おはよう♪』
チュッ、
「あぁ///」
『何時?』
「7時だぜ。」
『そっか……………あ!』
「ん?」
檸檬は突然起き上がって、ベッドの脇に置いてあった黒い服に手を掛けた。
それは、昨晩ザンザスが檸檬に渡した物。
「何だ?」
『ヴァリアーの隊服。』
「なっ…!」
懐かしいなぁと言いながら、檸檬はその服を撫でる。
ディーノはそれを、少しつらそうに見つめていた。
と、そこに……
「ディーノさん!」
「ツナ!?」
ノックもせずに飛び出して来たのは、珍しく早起きをしたツナだった。
ディーノがいる更に奥に檸檬の姿を見つけると、ツナは駆け寄った。
「檸檬!!」
『ツナ、おはよう♪』
チュッ、
「あ、うん。///じゃなくて!!何で昨日帰って来なかったんだよ!俺、心配で…………」
俯くツナに、檸檬は少しだけ目を見開いた。
『ごめんね、ツナ。気がつかないうちに寝ちゃったみたいなの。』
そう言って、優しく微笑む。
すると、ツナも少しだけ顔を上げて、安堵の笑みをこぼした。
「ところでそれ………何?」
『ヴァリアーの隊服。そうだ!着替えるからさ、席外してもらっていい?』
「え!?あ、うん。」
「おう。」
ツナとディーノが出ていくと、檸檬はゆっくりと着替え始めた。
『いつの間に仕立て直したんだろう………?』
ぴったりと檸檬に合っている。
丈夫なクセに、軽い素材。
ほんの少し鏡の前で動いてみたりもした。
その度に、
色んな思い出が蘇って来て。
『あ……』
また、
流したくもない涙が。
『止まって。』
あたしが自分にそう言い聞かせれば、涙は止まってくれる。
『よし。』
思い切って、ドアを開けた。
外にはツナが待っていて。
『あれ?ディーノは?』
「用事があるからって………」
ツナはあたしの服を見て驚いてるようだった。
「檸檬…それ………」
『似合ってる?』
くるっと回って笑う檸檬。
似合ってるだなんて言いたくないよ。
だって…
まるで檸檬がヴァリアーに相応しいみたいじゃないか。
そんなのイヤだ。
『あたし、行かなくちゃ。』
「待って!檸檬!!」
歩き出そうとする檸檬の腕を、咄嗟に引っ張った。
『ツナ………?』
だって、
イヤだったんだ。
まるで檸檬が、これからヴァリアーの方に行くんじゃないかって。
『どうしたの?ツナ。』
「お、俺………」
檸檬の事、好きだよ。
だけど、俺じゃ届かない存在だって知ってる。
それでもせめて、
日本に、俺達の側にいて欲しいんだ。
笑ってて欲しいんだ。
だから…
「檸檬、俺達………勝つから!」
目をぎゅっと瞑ったままだから、檸檬の表情は見えないけど。
「だから、絶対ヴァリアーに行かないで欲しいんだ!!」
『ツナ………』
あの日、
突き放したのに。
---『ツナは、仲間の事を考えてて。』
---「だったら!檸檬だって、俺達の仲間だよ!」
---『違うよ。』
---「え?」
---『あたしは中立だから、今はちゃんとした仲間じゃないよ。』
どうしてツナは……
そんなにあったかいの?
『あたし………』
どうしよう。
どんどん、
離れたくなくなる。
此処に、
居続けたくなる。
『信じてる。』
「………………………へ?」
『じゃね♪』
次の瞬間檸檬は、俊足で何処かに行ってしまった。
俺は、何だか信じられなくて。
「もういいだろ、早く修業に行くぞ。」
「え!?あ、うん!!」
リボーンに声をかけられるまで、呆然としていた。
.檸檬がベルフェゴールって人と約束した内容を聞いて、
俺は勝手に勘違いしてたんだ。
檸檬が、ヴァリアーを応援してるって。
だから、嬉しかった。
---『信じてる。』
その一言が俺の救いだよ、檸檬。
リボーンとバジル君と一緒に、零地点突破の修業に励む事にした。
---
------
-----------
知ってるの。
分かってるの。
ボスが勝ったらツナ達は殺されちゃう。
ツナが勝っても、きっとヴァリアーは殺されないで済む。
だから………信じたいの。
みんなが織り成す、
結末を。
音楽でも聞こうと思って、あたしはツナの家に戻った。
---
------
-----------
ツナの修業場。
小言弾を撃たれ、グローブにも火を灯し、静かに立っているツナ。
「あーやって突っ立ってんのが修業なのか?コラ!」
「ちげーぞ。死ぬ気の零地点突破のタイミングを測ってるんだ。」
コロネロとリボーンが話している。
「零地点突破?」
「まぁ見てろ。」
リボーンに言われ黙ってツナを見ているコロネロだが、待っても待ってもツナに変化は見られない。
「……………………どれくらい待つんだ?」
「今日中は無理かもな。」
「おいコラ、リボーン。」
目を光らせるコロネロ。
「だったら早く呼び出したワケを話せ!!!」
「そーだったな。」
ゴッ、と頭をぶつけ合う2人。
「コロネロ、お前ヴァリアーのマーモンって奴、どう思う。」
「あの趣味の悪いカエル乗せたチビか?」
「あぁ、あのダッセーカエル乗せたチビだ。何も感じなかったか?」
リボーンの言葉に、コロネロはハッとする。
「まさか、アルコバレーノだって言うのか?コラ。」
「まーな。」
「でもおしゃぶりは光らなかったぜ。それに、アルコバレーノ7人の行方は欠番も含めて全員分かって………」
おしゃぶりを見ながら話すコロネロは、何かに気付いて目を光らせた。
「あいつだと………?」
「まだわかんねーけどな。」
.すると、コロネロは“こちらの守護者に勝ち目はない”と言い出した。
リボーンはさらっと反論する。
それを聞いたツナが、思い出したように駆け寄って来た。
「そうだよリボーン!昨日の夜も分からずじまいだし!!」
「沢田殿!」
「もう教えてくれてもいいだろ!!こっちの霧の守護者!!」
するとリボーンは、
「まだだぞ。教えちまうと修業が手につかなくなっちまいそーだからな。」
と。
「逆だよ!!このままじゃ気になって修業に身が入らないよ!!」
ツナが訴えると、リボーンは山を下りてジュースを買って来るように言った。
しかも、1人で。
「なんでそーなるんだよ!!」
ツッコミを入れるツナをスルーして、リボーンは電話を掛けた。
プルルルル…
『もしもし。』
「檸檬か。」
『リボーン!どしたの?』
部屋で音楽を聞いていた檸檬は、リボーンに忘れ物を持って来るように頼まれた。
『……分かった!修業場の近くの駄菓子屋さんだね♪任せといて!』
「待ってるぞ。」
---
------
-----------
その頃のヴァリアー達。
キュンキュン…
モスカの機械音が部屋に少しだけ響く。
ザンザスは、机に片足を乗せながら何かを考えていた。
そこに…
コンコン、
入って来たのは、今夜に勝負を控えたマーモン。
「ボス、許可を貰いにきたんだ。あの力を、今晩の争奪戦で使いたい。」
「ふーん、やる気満々じゃんマーモン。俺と檸檬の未来の為に頑張ってくれるとか?」
「勝負は3勝2敗、俺達にとっては有利過ぎる程有利なはず。何故そこまでする?」
「焦ってんの?敵はまだ粘写しても見つからないっつってたし。」
ベルの言葉に、マーモンはさらっと返す。
「まさか。相手はカンケーないよ。僕の力はたまに使って慣れておかないと、手に負えなくなる種類のモノでね。」
「たんのしみー♪俺初めて見るよ、マーモンのソレ。」
ザンザスはしばらく何かを考えた後、答えた。
「許可する。」
---
------
----------
「リボーンの奴め!!何で修業してる本人がジュース買いに行くんだよ!!」
走って山を下り、店へと向かうツナ。
「ったく、毎日どれだけ人が神経すり減らしてるかも知らずに………」
ぶつぶつ呟きながら、ツナは仲間の事を思い出す。
山本……
昨日の怪我、大丈夫だったかな………?
山本だけじゃない……
お兄さんも、
ランボも、
獄寺君も……
みんなボロボロで………
それに、
みんながボロボロになる度に、
檸檬が傷付いて………
今日も簡単に勝てる勝負になるワケじゃない。
だからこそ戦う仲間が誰か知りたいのに、
リボーンの奴……。
ふと気がつくと、ツナの目の前の木の幹がえぐられていた。
「何かの動物………!?前にもこんな事あったような………とにかく不気味だ。急ごう!!」
少し歩くと、駄菓子屋が見えて来た。
「あれ?こんな所に黒曜生だ。」
看板で顔は見えないが、しゃがんでいる人と立っている人がいる。
しゃがんでいる方が言った。
「っひゃ~~!このガムうまそ~~!!」
「さっき買っただろ?」
「らってガムってフルーティーだから、みんなのっくんじゃうんらもん。」
その会話を聞きながら、
「(中学生にもなって、ガムの飲み込むなよ……)」
と、呆れるツナ。
「じゃぁ、一箱買ってこ。」
「当たり付きのイチゴ!!」
「箱で買ってる!!どんな奴らだよ………!」
そうっとツナが覗き込んだ、その先には…
「レシートいい、めんどい。」
特徴あるニット帽、
黒いおかっぱ、
そしてメガネ…
それを見た瞬間、ツナは絶叫した。
「んな"ーーー!!?え"ーーー!!?」
自分の目を疑わざるを得ない。
「うそ!そんな!疲れてんのかな。それだけは起こっちゃいけないよ!それだけは!」
目をこすりながら自分に言い聞かせるツナに、しゃがんでいた男子が話し掛ける。
「相変わらずムカツク面してんな。」
「(え…?)」
顔を上げた先には………
「んあ!?」
「ぎゃーーー!出たーーーー!!!」
さんざん叫んだ後、
「う…………そ。」
どさっ、
ツナはその場に倒れてしまった。
「何でこんな情けない奴に負けたのかわかんねーびょん。」
金髪で、前髪をピンで止めた男子は、ツナをガスガス蹴りまくる。
それを無言で見つめるメガネの男子。
そこに………
「ちゃおっス。久しぶりだな、城島犬・柿本千種。」
突然現れたリボーン。
「でやがったな、アルコバレーノの家庭教師!!」
「もう1人はどーしたんだ?ツナの霧の守護者は。」
リボーンの問いに答えたのは、千種。
「雲雀恭弥を……………見に行った………。」
するとリボーンは目を丸くして、
「あいつがか?雲雀に見つかったら大騒ぎになるぞ。」
と。
---
------
-----------
並盛のとある道の途中。
日向を歩いていく雲雀の向かい側から近付く影。
その人物は、すれ違い際に雲雀に話し掛ける。
「お久しぶりです。また強くなったようですね。」
声に反応して振り向く雲雀。
だが、そこには彼の知っている人物はいなくて。
「……………………?」
疑問符を浮かべて、そのまま歩き出した。
---
------
---------
『そーだ!』
リボーンに早く来いって言われたけど、ほんのちょっと寄り道しよう!
武のトコに。
『武ーっ!』
「あれ?檸檬じゃねーか!」
「いらっしゃい!檸檬ちゃん!」
竹寿司さんに顔を出して、あたしはホッとした。
武の目は、何とか治るみたいだ。
『おじさん、穴子下さい♪』
「おうよ!」
「どーした?檸檬。」
『あのね………武にお礼が言いたくて。』
おじさんが寿司を握る微かな音がする。
武は、首をかしげてあたしを見つめたまま。
『あたし………迷ってたから。』
「何を?」
『まだ、日本にいたかった。だから………アロちゃんが勝ったらどうしようって思ってたの。』
「檸檬……」
『だから…ありがとう、武。』
その時。
「ハイ!穴子一丁!」
『ありがとうございます♪いただきますっ!』
おじさんに一礼して、あたしは穴子を頬張った。
すると、今度は武があたしに言った。
「いやー、良かった!」
『ふ?』
「離れたくねー程、並盛が好きって事だろ?」
いつもみたいにニカッと笑う武が、
何だか眩しくて。
『うんっ!』
久しぶりに、ちゃんと笑った気がした。
聳え立つボンゴレの本部からは時折黒煙が昇り、銃声が聞こえる。
「D地区にまで潜り込まれたぞ!!」
1人の男の掛け声と共に、何人ものマフィアがそこへ向かう。
しかし、ズガガガという銃声が聞こえると、彼らは柵を乗り越え湖の中へ。
「やはり気持ちいいものじゃないわ。」
銃を構えた女性・オレガノが言う。
「つい先日まで同士だった者を撃つのは。」
「仕方あるまいて、オレガノ。これも9代目を救出する為。」
オレガノの後ろには、同じく銃を構えた男・ターメリックが。
「それにしてもこの城………一歩内部に足を踏み入れると隠し通路ばかりで、まるで迷宮だわ。」
「それだけボンゴレには隠すべき秘密が多いという事。業が多いとも言えるがな…………」
と、そこに。
「見つけたぜ!お二方っ!!」
小さくすばしっこい影が。
「家光は最深部へ突入したぜ。最後んトコではぐれたが………あそこまで行きゃあ大丈夫だろう。」
黒い髪に、ゴーグルをつけマントを羽織った赤ん坊。
「でかしたぞ、ラル・ミルチ。」
「流石アルコバレーノというところかしら、ラル。」
「からかうなオレガノ。俺は、なりそこないだ。」
そう言うラルの右頬には、火傷のような跡が。
霧の守護者
ボンゴレの屋敷内。
「こっちだぞ!」
十数人のマフィアが、曲がり角に向かって走って来る。
その先にいるのは……
「バカヤローが………出て来なけりゃ………」
家光だった。
手榴弾のピンを引き、彼らの方に投げる。
ドンッ、
「ぎゃあ!!」
爆発したその瞬間、家光は走り出す。
「(突き当たり……左側のカラヴァッジオ………)」
その絵目掛けて、思いっきり体当たり。
すると、家光の体はとある部屋へと転げ落ちる。
「おー、いて。」
「何の騒ぎだ?」
後頭部をさする家光は、その部屋の主に話し掛けられる。
顔をあげれば、広い部屋の中にぽつりと置かれた椅子に座る人物と目が会う。
「家光………」
その眼光は鋭く、威厳に満ちている。
「9代……目………」
「首を長くして待っておったぞ。足を病んで歩けなくなったと文を送ってからどれくらい経つかの。」
9代目の持つ威厳に汗を滲ませながら、家光は固まったまま。
「いつまでそうしておるつもりだ?顔が見たい。」
「はっ。」
持っていた銃を床に置き、家光は9代目の方へと歩み寄る。
そして、跪いて深々とお辞儀をした。
明朝、日本。
『ん………』
「起きたか、檸檬。」
『ディーノ………おはよう♪』
チュッ、
「あぁ///」
『何時?』
「7時だぜ。」
『そっか……………あ!』
「ん?」
檸檬は突然起き上がって、ベッドの脇に置いてあった黒い服に手を掛けた。
それは、昨晩ザンザスが檸檬に渡した物。
「何だ?」
『ヴァリアーの隊服。』
「なっ…!」
懐かしいなぁと言いながら、檸檬はその服を撫でる。
ディーノはそれを、少しつらそうに見つめていた。
と、そこに……
「ディーノさん!」
「ツナ!?」
ノックもせずに飛び出して来たのは、珍しく早起きをしたツナだった。
ディーノがいる更に奥に檸檬の姿を見つけると、ツナは駆け寄った。
「檸檬!!」
『ツナ、おはよう♪』
チュッ、
「あ、うん。///じゃなくて!!何で昨日帰って来なかったんだよ!俺、心配で…………」
俯くツナに、檸檬は少しだけ目を見開いた。
『ごめんね、ツナ。気がつかないうちに寝ちゃったみたいなの。』
そう言って、優しく微笑む。
すると、ツナも少しだけ顔を上げて、安堵の笑みをこぼした。
「ところでそれ………何?」
『ヴァリアーの隊服。そうだ!着替えるからさ、席外してもらっていい?』
「え!?あ、うん。」
「おう。」
ツナとディーノが出ていくと、檸檬はゆっくりと着替え始めた。
『いつの間に仕立て直したんだろう………?』
ぴったりと檸檬に合っている。
丈夫なクセに、軽い素材。
ほんの少し鏡の前で動いてみたりもした。
その度に、
色んな思い出が蘇って来て。
『あ……』
また、
流したくもない涙が。
『止まって。』
あたしが自分にそう言い聞かせれば、涙は止まってくれる。
『よし。』
思い切って、ドアを開けた。
外にはツナが待っていて。
『あれ?ディーノは?』
「用事があるからって………」
ツナはあたしの服を見て驚いてるようだった。
「檸檬…それ………」
『似合ってる?』
くるっと回って笑う檸檬。
似合ってるだなんて言いたくないよ。
だって…
まるで檸檬がヴァリアーに相応しいみたいじゃないか。
そんなのイヤだ。
『あたし、行かなくちゃ。』
「待って!檸檬!!」
歩き出そうとする檸檬の腕を、咄嗟に引っ張った。
『ツナ………?』
だって、
イヤだったんだ。
まるで檸檬が、これからヴァリアーの方に行くんじゃないかって。
『どうしたの?ツナ。』
「お、俺………」
檸檬の事、好きだよ。
だけど、俺じゃ届かない存在だって知ってる。
それでもせめて、
日本に、俺達の側にいて欲しいんだ。
笑ってて欲しいんだ。
だから…
「檸檬、俺達………勝つから!」
目をぎゅっと瞑ったままだから、檸檬の表情は見えないけど。
「だから、絶対ヴァリアーに行かないで欲しいんだ!!」
『ツナ………』
あの日、
突き放したのに。
---『ツナは、仲間の事を考えてて。』
---「だったら!檸檬だって、俺達の仲間だよ!」
---『違うよ。』
---「え?」
---『あたしは中立だから、今はちゃんとした仲間じゃないよ。』
どうしてツナは……
そんなにあったかいの?
『あたし………』
どうしよう。
どんどん、
離れたくなくなる。
此処に、
居続けたくなる。
『信じてる。』
「………………………へ?」
『じゃね♪』
次の瞬間檸檬は、俊足で何処かに行ってしまった。
俺は、何だか信じられなくて。
「もういいだろ、早く修業に行くぞ。」
「え!?あ、うん!!」
リボーンに声をかけられるまで、呆然としていた。
.檸檬がベルフェゴールって人と約束した内容を聞いて、
俺は勝手に勘違いしてたんだ。
檸檬が、ヴァリアーを応援してるって。
だから、嬉しかった。
---『信じてる。』
その一言が俺の救いだよ、檸檬。
リボーンとバジル君と一緒に、零地点突破の修業に励む事にした。
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知ってるの。
分かってるの。
ボスが勝ったらツナ達は殺されちゃう。
ツナが勝っても、きっとヴァリアーは殺されないで済む。
だから………信じたいの。
みんなが織り成す、
結末を。
音楽でも聞こうと思って、あたしはツナの家に戻った。
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ツナの修業場。
小言弾を撃たれ、グローブにも火を灯し、静かに立っているツナ。
「あーやって突っ立ってんのが修業なのか?コラ!」
「ちげーぞ。死ぬ気の零地点突破のタイミングを測ってるんだ。」
コロネロとリボーンが話している。
「零地点突破?」
「まぁ見てろ。」
リボーンに言われ黙ってツナを見ているコロネロだが、待っても待ってもツナに変化は見られない。
「……………………どれくらい待つんだ?」
「今日中は無理かもな。」
「おいコラ、リボーン。」
目を光らせるコロネロ。
「だったら早く呼び出したワケを話せ!!!」
「そーだったな。」
ゴッ、と頭をぶつけ合う2人。
「コロネロ、お前ヴァリアーのマーモンって奴、どう思う。」
「あの趣味の悪いカエル乗せたチビか?」
「あぁ、あのダッセーカエル乗せたチビだ。何も感じなかったか?」
リボーンの言葉に、コロネロはハッとする。
「まさか、アルコバレーノだって言うのか?コラ。」
「まーな。」
「でもおしゃぶりは光らなかったぜ。それに、アルコバレーノ7人の行方は欠番も含めて全員分かって………」
おしゃぶりを見ながら話すコロネロは、何かに気付いて目を光らせた。
「あいつだと………?」
「まだわかんねーけどな。」
.すると、コロネロは“こちらの守護者に勝ち目はない”と言い出した。
リボーンはさらっと反論する。
それを聞いたツナが、思い出したように駆け寄って来た。
「そうだよリボーン!昨日の夜も分からずじまいだし!!」
「沢田殿!」
「もう教えてくれてもいいだろ!!こっちの霧の守護者!!」
するとリボーンは、
「まだだぞ。教えちまうと修業が手につかなくなっちまいそーだからな。」
と。
「逆だよ!!このままじゃ気になって修業に身が入らないよ!!」
ツナが訴えると、リボーンは山を下りてジュースを買って来るように言った。
しかも、1人で。
「なんでそーなるんだよ!!」
ツッコミを入れるツナをスルーして、リボーンは電話を掛けた。
プルルルル…
『もしもし。』
「檸檬か。」
『リボーン!どしたの?』
部屋で音楽を聞いていた檸檬は、リボーンに忘れ物を持って来るように頼まれた。
『……分かった!修業場の近くの駄菓子屋さんだね♪任せといて!』
「待ってるぞ。」
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その頃のヴァリアー達。
キュンキュン…
モスカの機械音が部屋に少しだけ響く。
ザンザスは、机に片足を乗せながら何かを考えていた。
そこに…
コンコン、
入って来たのは、今夜に勝負を控えたマーモン。
「ボス、許可を貰いにきたんだ。あの力を、今晩の争奪戦で使いたい。」
「ふーん、やる気満々じゃんマーモン。俺と檸檬の未来の為に頑張ってくれるとか?」
「勝負は3勝2敗、俺達にとっては有利過ぎる程有利なはず。何故そこまでする?」
「焦ってんの?敵はまだ粘写しても見つからないっつってたし。」
ベルの言葉に、マーモンはさらっと返す。
「まさか。相手はカンケーないよ。僕の力はたまに使って慣れておかないと、手に負えなくなる種類のモノでね。」
「たんのしみー♪俺初めて見るよ、マーモンのソレ。」
ザンザスはしばらく何かを考えた後、答えた。
「許可する。」
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「リボーンの奴め!!何で修業してる本人がジュース買いに行くんだよ!!」
走って山を下り、店へと向かうツナ。
「ったく、毎日どれだけ人が神経すり減らしてるかも知らずに………」
ぶつぶつ呟きながら、ツナは仲間の事を思い出す。
山本……
昨日の怪我、大丈夫だったかな………?
山本だけじゃない……
お兄さんも、
ランボも、
獄寺君も……
みんなボロボロで………
それに、
みんながボロボロになる度に、
檸檬が傷付いて………
今日も簡単に勝てる勝負になるワケじゃない。
だからこそ戦う仲間が誰か知りたいのに、
リボーンの奴……。
ふと気がつくと、ツナの目の前の木の幹がえぐられていた。
「何かの動物………!?前にもこんな事あったような………とにかく不気味だ。急ごう!!」
少し歩くと、駄菓子屋が見えて来た。
「あれ?こんな所に黒曜生だ。」
看板で顔は見えないが、しゃがんでいる人と立っている人がいる。
しゃがんでいる方が言った。
「っひゃ~~!このガムうまそ~~!!」
「さっき買っただろ?」
「らってガムってフルーティーだから、みんなのっくんじゃうんらもん。」
その会話を聞きながら、
「(中学生にもなって、ガムの飲み込むなよ……)」
と、呆れるツナ。
「じゃぁ、一箱買ってこ。」
「当たり付きのイチゴ!!」
「箱で買ってる!!どんな奴らだよ………!」
そうっとツナが覗き込んだ、その先には…
「レシートいい、めんどい。」
特徴あるニット帽、
黒いおかっぱ、
そしてメガネ…
それを見た瞬間、ツナは絶叫した。
「んな"ーーー!!?え"ーーー!!?」
自分の目を疑わざるを得ない。
「うそ!そんな!疲れてんのかな。それだけは起こっちゃいけないよ!それだけは!」
目をこすりながら自分に言い聞かせるツナに、しゃがんでいた男子が話し掛ける。
「相変わらずムカツク面してんな。」
「(え…?)」
顔を上げた先には………
「んあ!?」
「ぎゃーーー!出たーーーー!!!」
さんざん叫んだ後、
「う…………そ。」
どさっ、
ツナはその場に倒れてしまった。
「何でこんな情けない奴に負けたのかわかんねーびょん。」
金髪で、前髪をピンで止めた男子は、ツナをガスガス蹴りまくる。
それを無言で見つめるメガネの男子。
そこに………
「ちゃおっス。久しぶりだな、城島犬・柿本千種。」
突然現れたリボーン。
「でやがったな、アルコバレーノの家庭教師!!」
「もう1人はどーしたんだ?ツナの霧の守護者は。」
リボーンの問いに答えたのは、千種。
「雲雀恭弥を……………見に行った………。」
するとリボーンは目を丸くして、
「あいつがか?雲雀に見つかったら大騒ぎになるぞ。」
と。
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並盛のとある道の途中。
日向を歩いていく雲雀の向かい側から近付く影。
その人物は、すれ違い際に雲雀に話し掛ける。
「お久しぶりです。また強くなったようですね。」
声に反応して振り向く雲雀。
だが、そこには彼の知っている人物はいなくて。
「……………………?」
疑問符を浮かべて、そのまま歩き出した。
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『そーだ!』
リボーンに早く来いって言われたけど、ほんのちょっと寄り道しよう!
武のトコに。
『武ーっ!』
「あれ?檸檬じゃねーか!」
「いらっしゃい!檸檬ちゃん!」
竹寿司さんに顔を出して、あたしはホッとした。
武の目は、何とか治るみたいだ。
『おじさん、穴子下さい♪』
「おうよ!」
「どーした?檸檬。」
『あのね………武にお礼が言いたくて。』
おじさんが寿司を握る微かな音がする。
武は、首をかしげてあたしを見つめたまま。
『あたし………迷ってたから。』
「何を?」
『まだ、日本にいたかった。だから………アロちゃんが勝ったらどうしようって思ってたの。』
「檸檬……」
『だから…ありがとう、武。』
その時。
「ハイ!穴子一丁!」
『ありがとうございます♪いただきますっ!』
おじさんに一礼して、あたしは穴子を頬張った。
すると、今度は武があたしに言った。
「いやー、良かった!」
『ふ?』
「離れたくねー程、並盛が好きって事だろ?」
いつもみたいにニカッと笑う武が、
何だか眩しくて。
『うんっ!』
久しぶりに、ちゃんと笑った気がした。