毒を喰らわば、
name
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
くらげは、人型の毒殺兵器を作り出す実験のために集められた孤児たちのひとりだった。実験が始まった当初は、くらげの他にも同じように集められた実験体が何人もいた。
実験が始まって一年後、実験体の数はくらげを含めて両手で数えられるほどにまで減った。一年間、毎日毒の盛られた食事を摂り続け、死なずにいられた子どもはそれだけしか残らなかった。
過酷な実験も二年目を迎えたある日、突然くらげたちはお払い箱へと入れられることとなった。これまでの実験記録の記された資料が何者かの手によって持ち出されたことにより、非人道的な実験を行っていたことが明るみに出ることを恐れた研究所が、実験に関わった研究員や実験体を処分することで証拠隠滅を図ったからだ。
研究員はクビを切られ、生き残った数少ない実験体たちは全員三年目の節目を待たずして限界を迎えた。これであの悍ましい実験を知る者はいないと安心したのも束の間。
ある研究員が、ひとりの実験体を自身の養子として引き取り匿っていたのだった。その研究員は、クビを切られた後妻子と離れて暮らすことになったが、独りになった家で見込みのあった実験体を引き取り実験を続けていた。その実験体こそ、くらげだった。
それから更に一年間、毎日毒を摂取し続けたくらげは、ついに研究員の理想としていた兵器の完成体へと至った。その日、研究員は踊るように喜び、踊るように息を引き取った。
連絡の付かなくなった父親の様子を見に来た一人息子が、物言わぬ骸となった父親と、父親が狂うほど心血を注いだ実験の産物を見つけた。息子は、父親の死の原因を調べ上げ、復讐のため自身も悪魔へ魂を売ることを決意する。
それが当時九歳だったくらげと、後に〝先生〟と呼ばれるようになる男の地獄の始まりだった。
くらげは、男の立ち上げた研究所に連れられ、更に強力な兵器となるよう、その身を毒そのものに作り変えられた。血の一滴であらゆる生き物の息の根を止められるようになってからは、毎日血を抜かれ、誰かを殺すために使われた。
『どうしてこんなことをするんですか』
『悪い奴を倒すためなんだ』
くらげは男に何度も問うた。そして男はくらげに何度もそう言い聞かせた。自分は良いことをしているのだと、世界をより良くしているのだと、くらげは男の言葉を信じる他なかった。
信じなければ、自分はとんでもない悪党なのだと気付いてしまう。私利私欲のためにひとを殺す誰かを助ける悪魔なのだと気付いてしまうから。
くらげは、男の役に立っているのだと信じ込むしか自身の心を守る術を持たなかった。
男はくらげに対し、父親を狂わせた元凶だとでも言いたげな態度を取っていたが、くらげが薬で眠っている間だけは、妹を見るような、娘を見るような、何か愛しいものを見るような目をしていた。
そのことを、くらげは知っていた。くらげは、全身が毒でできているせいか、薬も毒もあまり効かない身体になっていたから。
男が自分のことを恨んでいて、でも恨み切れなかったことを知っていて、くらげは男を自身の毒で殺した。もうこれ以上、男が罪を重ねないように。自身の毒で苦しむひとが現れないように。
実験が始まって一年後、実験体の数はくらげを含めて両手で数えられるほどにまで減った。一年間、毎日毒の盛られた食事を摂り続け、死なずにいられた子どもはそれだけしか残らなかった。
過酷な実験も二年目を迎えたある日、突然くらげたちはお払い箱へと入れられることとなった。これまでの実験記録の記された資料が何者かの手によって持ち出されたことにより、非人道的な実験を行っていたことが明るみに出ることを恐れた研究所が、実験に関わった研究員や実験体を処分することで証拠隠滅を図ったからだ。
研究員はクビを切られ、生き残った数少ない実験体たちは全員三年目の節目を待たずして限界を迎えた。これであの悍ましい実験を知る者はいないと安心したのも束の間。
ある研究員が、ひとりの実験体を自身の養子として引き取り匿っていたのだった。その研究員は、クビを切られた後妻子と離れて暮らすことになったが、独りになった家で見込みのあった実験体を引き取り実験を続けていた。その実験体こそ、くらげだった。
それから更に一年間、毎日毒を摂取し続けたくらげは、ついに研究員の理想としていた兵器の完成体へと至った。その日、研究員は踊るように喜び、踊るように息を引き取った。
連絡の付かなくなった父親の様子を見に来た一人息子が、物言わぬ骸となった父親と、父親が狂うほど心血を注いだ実験の産物を見つけた。息子は、父親の死の原因を調べ上げ、復讐のため自身も悪魔へ魂を売ることを決意する。
それが当時九歳だったくらげと、後に〝先生〟と呼ばれるようになる男の地獄の始まりだった。
くらげは、男の立ち上げた研究所に連れられ、更に強力な兵器となるよう、その身を毒そのものに作り変えられた。血の一滴であらゆる生き物の息の根を止められるようになってからは、毎日血を抜かれ、誰かを殺すために使われた。
『どうしてこんなことをするんですか』
『悪い奴を倒すためなんだ』
くらげは男に何度も問うた。そして男はくらげに何度もそう言い聞かせた。自分は良いことをしているのだと、世界をより良くしているのだと、くらげは男の言葉を信じる他なかった。
信じなければ、自分はとんでもない悪党なのだと気付いてしまう。私利私欲のためにひとを殺す誰かを助ける悪魔なのだと気付いてしまうから。
くらげは、男の役に立っているのだと信じ込むしか自身の心を守る術を持たなかった。
男はくらげに対し、父親を狂わせた元凶だとでも言いたげな態度を取っていたが、くらげが薬で眠っている間だけは、妹を見るような、娘を見るような、何か愛しいものを見るような目をしていた。
そのことを、くらげは知っていた。くらげは、全身が毒でできているせいか、薬も毒もあまり効かない身体になっていたから。
男が自分のことを恨んでいて、でも恨み切れなかったことを知っていて、くらげは男を自身の毒で殺した。もうこれ以上、男が罪を重ねないように。自身の毒で苦しむひとが現れないように。
