毒を喰らわば、
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夜桜凶一郎が倒れたというニュースは、瞬く間に裏社会を駆け抜け震撼させた。発表会は失敗に終わったが、〝あの〟凶一郎に痛い目を見せることができる商品として、宣伝効果は抜群だったようで、注文が殺到しているらしい。
「四怨姉ちゃんが流通経路を潰してくれてなかったらどうなってたことやら……」
「六美がちゅ〜してくれたらお兄ちゃん全部返り討ちに」
「大人しく寝とけクソ長男」
天才ハッカーである次女の四怨がチョコレート菓子の空き箱を投げつけると、点滴に繋がれたまま六美に擦り寄っていた凶一郎の額に見事的中し、撃沈させた。
例の毒が市場に出回る前に、研究所が用いるであろう流通経路を片っ端から麻痺させたのは彼女、四怨の手腕が為せる功績だった。
「とは言っても、そう長くは止めてられねぇ。リミットは今日が終わるまで、だ」
「それだけあれば十分さね」
無線越しに響く可憐かつ力強い返事に六美は一瞬の笑みの後、表情を引き締める。
「二刃姉ちゃんと嫌五は研究所の撹乱を。二人が警備の注意を引いている間に辛三兄ちゃんと七悪は毒物の研究データ、解毒剤を入手して一刻も早く帰還するように」
作戦開始を告げる当主の声を皮切りに、兄妹がそれぞれ動き出す。
長女の二刃は、その華奢な体躯からは想像できない怪力と柔術で警備を片っ端からちぎっては投げ捨てていく。変装のプロである嫌五は、敵方の仲間に化けては統率を乱して回る。長女と三男の陽動に乗じて大男が二人建物内へ転がり込んだ。
「潜入成功、だね」
手薄になった室内の警備を鎮圧し終え、銃を構え直した次男、辛三が七悪に語りかける。内部構造を頭に叩き込んでいる二人は、そのまま被検体などが管理されている実験室へと向かって走り出した。
────凶一郎が倒れた直後、七悪は兄を背負い家に帰った。自室に帰って兄の身体を調べれば、解毒剤を用意できると思ったからだ。が、凶一郎の体内を侵す毒物は七悪のデータにあるどの毒物とも違い、どんな物質を持ってしてもその毒性を中和することはできなかった。
普通の人間ならば、触れた瞬間細胞という細胞を破壊されて死に至る。浴びたのが凶一郎だったから、今なお人の形を保ったままでいられる。七悪特製の中和剤を点滴で流し込まれているとはいえ、立って歩いて喋っているのは人間離れしているとしか言いようがないが。
それでも、四怨の戯れに投げつけられた菓子の空き箱で倒れるほどには弱っている。兄妹たちの手前、気を張っているだけかもしれない。いつ容態が急変するか分からなかった。
「待っててね……! 凶一郎兄ちゃん!」
----------------------------------------------------------
一方その頃、研究所のはずれに位置する一部屋には、眠る少女を見下ろす男がいた。
「所長! 夜桜が……!」
「やはり今日中に攻めてきたか。状況は?」
「長女と三男が入口付近で暴れており、所内に侵入されないよう抗戦中です!」
「そうか。ではもう内部に入り込まれていると考えた方が良い。そうだな……次男は確実として、毒の成分を解析するために四男も来ている可能性がある。警備を所内にも回せ、こちらが手薄になれば向こうの思う壷だからな」
「はっ」
男は部下に手際良く指示を飛ばす。走り去る部下の足音が遠ざかってから、白い包帯を巻いた首筋に触れる。その脈をたっぷり七十回数えてから、男は部屋を後にした。
「四怨姉ちゃんが流通経路を潰してくれてなかったらどうなってたことやら……」
「六美がちゅ〜してくれたらお兄ちゃん全部返り討ちに」
「大人しく寝とけクソ長男」
天才ハッカーである次女の四怨がチョコレート菓子の空き箱を投げつけると、点滴に繋がれたまま六美に擦り寄っていた凶一郎の額に見事的中し、撃沈させた。
例の毒が市場に出回る前に、研究所が用いるであろう流通経路を片っ端から麻痺させたのは彼女、四怨の手腕が為せる功績だった。
「とは言っても、そう長くは止めてられねぇ。リミットは今日が終わるまで、だ」
「それだけあれば十分さね」
無線越しに響く可憐かつ力強い返事に六美は一瞬の笑みの後、表情を引き締める。
「二刃姉ちゃんと嫌五は研究所の撹乱を。二人が警備の注意を引いている間に辛三兄ちゃんと七悪は毒物の研究データ、解毒剤を入手して一刻も早く帰還するように」
作戦開始を告げる当主の声を皮切りに、兄妹がそれぞれ動き出す。
長女の二刃は、その華奢な体躯からは想像できない怪力と柔術で警備を片っ端からちぎっては投げ捨てていく。変装のプロである嫌五は、敵方の仲間に化けては統率を乱して回る。長女と三男の陽動に乗じて大男が二人建物内へ転がり込んだ。
「潜入成功、だね」
手薄になった室内の警備を鎮圧し終え、銃を構え直した次男、辛三が七悪に語りかける。内部構造を頭に叩き込んでいる二人は、そのまま被検体などが管理されている実験室へと向かって走り出した。
────凶一郎が倒れた直後、七悪は兄を背負い家に帰った。自室に帰って兄の身体を調べれば、解毒剤を用意できると思ったからだ。が、凶一郎の体内を侵す毒物は七悪のデータにあるどの毒物とも違い、どんな物質を持ってしてもその毒性を中和することはできなかった。
普通の人間ならば、触れた瞬間細胞という細胞を破壊されて死に至る。浴びたのが凶一郎だったから、今なお人の形を保ったままでいられる。七悪特製の中和剤を点滴で流し込まれているとはいえ、立って歩いて喋っているのは人間離れしているとしか言いようがないが。
それでも、四怨の戯れに投げつけられた菓子の空き箱で倒れるほどには弱っている。兄妹たちの手前、気を張っているだけかもしれない。いつ容態が急変するか分からなかった。
「待っててね……! 凶一郎兄ちゃん!」
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一方その頃、研究所のはずれに位置する一部屋には、眠る少女を見下ろす男がいた。
「所長! 夜桜が……!」
「やはり今日中に攻めてきたか。状況は?」
「長女と三男が入口付近で暴れており、所内に侵入されないよう抗戦中です!」
「そうか。ではもう内部に入り込まれていると考えた方が良い。そうだな……次男は確実として、毒の成分を解析するために四男も来ている可能性がある。警備を所内にも回せ、こちらが手薄になれば向こうの思う壷だからな」
「はっ」
男は部下に手際良く指示を飛ばす。走り去る部下の足音が遠ざかってから、白い包帯を巻いた首筋に触れる。その脈をたっぷり七十回数えてから、男は部屋を後にした。
