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元最強の幸せな誕生日

「おかえ、り・・・」
「きゅ、急に黙らないでよ」
「・・・こんな愛しい恋人を見たら惚れるに決まってるでしょ」
「なっ・・・///」

悟さんからの好意はこれでもかっていうくらい貰ってるのに・・・まだ彼は私に惚れてくれるらしい。
志保姉に相談してよかった。
こっちおいで、と悟さんに手招きされて今度は彼の膝の上に乗る。
悟さんはソファに座っていると大抵この体勢をとるから、きっと好きなんだと思う。
ふわりとボクの後頭部に悟さんの手が伸びる。
思わずビクッと体を震わせてしまったけど、そんなにじっと見つめないで。
そこにあるのは作り物の耳(うさぎ)。ふわふわとした触り心地のよい生地を、悟さんの手が撫でる。
冬にぴったりなふわもこのパーカーとハーフパンツ。
今日のために新調したものだ。
悟さんは意外に気に入ってくれたようで、ずっと生地を触っている。

「フフフ」
「・・・なに?」
「いや、今日一番で顔真っ赤だなって思ってね。・・・なんでそんなに愛おしいの?」

顎を掴まれて、じっと見つめられる。その瞳の奥にはチョコレートが溶けたような甘みがある。
ちゅ、と唇が重なったと思ったら離れて、またくっつく。
それが10回くらい繰り返されたらいつ息継ぎすればいいかわからない。
思わず悟さんの胸を押しやると、とても名残惜しそうに離れた。

「ん・・・」
「ほんと、真純が愛おしくて愛おしくてたまらないよ。・・・そんなすぐに女にならないで」
「ちょ、どういうことかわからな、」
「わからない?・・・僕、かなり我慢してるんだけど」

今度は力強く抱きしめられて。
ふー、と長いため息をするのはどうして?

「・・・ねぇ」
「ん?」
「最近、男に囲まれてない?世良ちゃん、とか呼ばれてさ」
「あーそうかも?でもそれはボクが話しかけやすいからじゃないの?今でも男に間違われるし」
「それは多分女の人だけ。・・・わかんないかな。最近色気が出てきたんだよね」
「い、色気?!///」
「真純ももう大人ってことだよね。・・・ほんと、魅力的で困る」

あーだとかうーだとか言って頭を抱えている悟さんは今まで見なかったものだ。
・・・もしかしてさ。

「嫉妬、してくれてる?」
「・・・してるよ。だって世良ちゃんだなんて。それだけ女らしさがあるってことでしょ」

むにむに、と両頬を指でつままれる。
でもね、悟さん。そんなこと言っても・・・

「ボクには悟さんだけだよ」
「真純・・・」
「ボクが好きなのは、その・・・愛しているのは、悟さんだけだから」

言った瞬間に、ガバリと抱きつかれる。
さらに、肩に頭をぐりぐりとしてくるもんだから、地味に痛い。

「ちょ、悟さん?」
「・・・真純のくせに」
「え?」
「うー真純がどんどん魅力的になってく。もう・・・これ以上好きになることはないって思ってたのに。どれだけ僕を惚れさせれば気が済むの?」
「ハハッ、惚れてくれたの?」
「骨抜きにされてるよ・・・!」

うっすら見える彼の耳はほんのり赤らんでいる。
珍しい。悟さんが照れるなんて。
でも、悟さんってばボクがあまり気がつかないだけで、かなりの頻度で照れてるらしいんだよね。新一君がそう言ってた。ボクは気づかないから、わかるようになりたいな。

「・・・おめでとう」

悟さんはボクが誕生日を知ってるって知らないから。聞こえないくらい小さく言った。
すると、悟さんが突然顔を上げた。

「え、おめでとう?・・・退院おめでとう、じゃないね。いつもそんなこと言わないし。今日何かあったっけ。え、僕だけ忘れてるなんて嫌なんだけど」
「え・・・もしかして悟さん忘れてる?」
「?」
「今日は何日だ」
「12月7日。え?なになに・・・ああ、僕の誕生日か。そんなものあったっけ」
「・・・やっぱり。吉兄が誕生日知らないって言ってたから、まさかとは思ったけど・・・ご両親が死んでから一回も自分の誕生日祝ったことないよな?」
「うん」

なのに年齢は覚えているのか。・・・ああ、西暦で数えればすぐに出るし、多分そっちの方が頭に入ってる。
そっか、悟さん自分の誕生日を忘れてたんだ。
だから、ボクに教えるわけないよね。・・・ボクからは聞かない限りは。

「ちなみに、誕生日いつ?って聞いたら答えてくれた?」
「そりゃ聞かれたら答えるけど。思い出せなかったかもね」
「・・・これからは毎年おめでとうって言うから!!ボクが全力で悟さんの誕生日をお祝いするから!!!」
「ハハッ、ありがとう」

もう絶対、絶対にだ!!
もう二度と悟さんが忘れないように、しっかりボクがお祝いする。今そう決めた!

「お誕生日おめでとう、悟さん」

キスを送ると、悟さんから熱烈なキスが返された。



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