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元最強の幸せな誕生日

「え、できた・・・!!」

今まで一番とまではいかない(一番は志保姉にほぼ任せたもの)けど、なんとか完成した。時計を見ればちょうどいい時間だ。
彩りのいいサラダにドレッシングをかけて、パイシチューに合わせて選んだパンをバケットに入れて、あとは悟さんのお気に入りのケーキ屋さんで買った誕生日ケーキを台の真ん中に置いて・・・よし、並び忘れはない。

「時間かかりすぎちゃった。悟さん、寝ちゃったかな」

足音を消して、優しくドアをノックするけど返答はない。そっと開けると、そこには何か思い悩んでいるように頭を手でくしゃっとしながら執筆している彼がいた。
・・・はっきり言おう。
めちゃくちゃカッコイイ・・・!!!
前髪があると余計に童顔が際立つ悟さんだけれど、少しでも髪をかき上げると大人の男だな、と感じる。
椅子に座ってもまだ余っている足は組まれていて、そのシルエットがまさに絵画のようなのだ。

「・・・ん?ますみ?」

何か資料を見ようとしたときにボクが視界に映ったのか、その顔が上げられる。
終わった?、と言いながら微笑んでいるその顔は、まさに嬉しそうで。
集中していてもすぐにボクに気づいてくれるところが、ものすごく好きだ。

「おまたせ、悟さん」
「ううん。こっちこそ作ってくれてありがとう。えと、すぐにご飯にする?」
「うん。どうかな?って思って」
「うーん、もうちょっと待って。今思いついたやつを書いちゃうから。じゃないとすぐに忘れちゃうんだよね」

また机に向かうと真剣な表情になって、そのギャップに目眩がしてくる。
悟さんはまだスタートラインに立ったばっかりで、今は来月末にある応募に申し込もうと頑張っている。
やるからには本気で、と本人が言っているように、ここ最近は本腰を入れている


「・・・ん、できた。さ、ご飯にしよ。楽しみだな~♪」
「今日ね、上手にできたんだよ!」
「ほんと?・・・わぁ、すっごく豪華だ。え、これパイシチュー?」
「この前、食べたいな、って悟さんが言ってたから。挑戦してみたの」
「手作りなの?え、すごいじゃん!ねぇ、食べていい?」
「もちろん!」

いただきます、と悟さんは必ず手を合わせて言う。それは食べ終わりも同じ。それに箸使いや所作も綺麗だ。
ぼーっと悟さんの手を見ていると、悟さんがクスクス笑う。

「そんなに見なくても。・・・うん、美味しい。こんな美味しいパイシチュー食べたことない」
「よ、よかった・・・でもそれは言い過ぎだって」
「ほんとのことだよ。きっと真純の愛が詰まっているからなんだね」
「・・・///すぐそういうことをさらっと言うんだから・・・」
「フフッ、顔真っ赤。ありがとう、真純。この上ないご褒美だ」

悟さんはふわっと笑ってそう言ってくれるから、こっちも気恥ずかしくなる。
その後も悟さんは食べる手が止まらないようで、ものすごいスピードでなくなっていく。

「・・・シチューおかわりある?」
「あるよ。よそってくるよ」
「ううん、真純はまだ食べてる最中なんだから座ってて。いやー本当に美味しい」
「そう言ってくれると作りがいがあるよ」
「で、デザートはこのケーキでしょ?あ、もしかして駅前のあのケーキ屋さん?え、めちゃ嬉しい!」

悟さんは食べ終わるまでずっと上機嫌で、本当にペロッと平らげてしまった。
ごちそうさま、と再び手を合わせる彼に、おそまつさまでした、とボクは返す。
この挨拶も悟さんから教えてもらったんだ。

「洗い物は僕がするから真純は座ってて」
「え、ボクがする、」
「いいから。その間にお風呂に入っておいで。・・・で、一緒に映画観よ?」
「・・・!いいね!」

映画鑑賞は悟さんと付き合いだしてからボクの趣味になった。悟さんは元々映画を観るのが好きで、それはもうたくさんの作品を知っている。
・・・ただ、すぐネタバレするのはやめてほしいけど。
でも、そっか。お風呂・・・うん、志保姉のアドバイス通りにやろう。
いつもよりちょっと多い荷物を持ってバスルームに向かう。


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