元最強の幸せな誕生日
「新一君、ちょっと相談に乗ってほしい」
「なんだ、改まって」
「秀兄にも聞いてほしい」
冬の寒い日のこと。ボクは工藤家へと遊びに来ていた。というのも、秀兄が新一君に事件のことで相談しに来ていると聞いていたから。
秀兄は、あの組織が壊滅したあと、その後始末をしながらアメリカへ帰国。今日は3ヶ月ぶりに会える日なのだ。
ちなみに、既に悟さんから許可はもらってる。でも、寒い日が続いているせいで悟さんは入院中。12月始めには退院できそうだという。
「誕生日プレゼント、何がいいと思う?」
「・・・ああ!五条先生ね。そういえば12月生まれだっけ」
「ホー・・・で、何を渡そうか悩んでるわけだ」
「そうなの!なにせ去年は有耶無耶になっちゃったから今年こそは!、って思ってて・・・でも何がいいのかさっぱり」
ボクは悟さんの恋人だから、なにか特別感が欲しい。
吉兄にも事前に相談してみたんだけど・・・そもそも吉兄ってば、悟さんの誕生日を知らなかった。
なんで知らないの?!、と言ったら吉兄が苦笑いしたような声音で言った。
『真純はそんなこと感じたことないと思うけど、五条くんって自分の領域をしっかり保っているんだよ。僕が『五条くん』と呼ぶのも誕生日を知らないのも、五条くんの領域を侵す行為ということだよ』
・・・よくわからないけど、とにかく吉兄は悟さんに教えてもらえなかったらしい。
一度話はしてみたことはあるようだけど、はぐらかされたからそれからは一切触れてないんだって。
・・・これ、ボクがお祝いしてもいいのかな。でも、ボクは悟さんの恋人だし。
「で、グルグル考えていたというわけか」
「そもそも真純は彼の誕生日を何故知っているんだ。新一君も」
「それが・・・その、入院の手続きとか診察の付き添いとかで保険証を見る機会があって」
「そうそう。思わずガン見したって去年言ってたよな。で、その報告を俺が受けたから俺も知ってるってわけ」
「だから困ってるんだよ・・・!」
悟さんに教えられるどころか、覗き見のように知ってしまった彼の生年月日。
「でもボク思うんだ。12月の初めだから、ちょっと早いクリスマスプレゼント!とか、退院祝いとして送れないかな」
「世良、退院祝いは最初の方たくさんやりすぎて、逆に五条先生の負担になるからってやめなかったか?」
「だって・・・」
「いや、はっきりと言えばいいじゃないか」
「・・・やっぱり秀兄は女心がわかってない」
「アハハ・・・」
もう~!何かいい手立てはないかな。
・・・あ!そうだ。あの人にも聞いてみよう!
「ねえねえ、志保姉って今日いる?」
「確か今日は家に引きこもって研究するとか言ってたぞ」
「よし!志保姉にも聞いてみよう」
早速、志保姉にメールする。
すると、すぐにこっちに来てくれるそうなので、ボクは待つことにした。
「そういえば真純は五条くんとデートしたことはあるのか」
「うーん、今年は悟さんの体調ががたついてたから、あんまりかな」
「ふむ。なら旅行でもいいかもしれないな。それぐらいの蓄えはあるだろう」
「それも考えたんだけど、お医者さんから環境の変化はあまりしないでほしい、って言われてるんだ。だから泊りがけの旅行とか遠出するのはちょっとね」
「そうか。彼の体調を最優先にしなければいけないな」
「あら、何かと思えばあの先生のプレゼントを考えているのね」
「あ!志保姉!こんにちは~」
「こんにちは。久しぶりね」
そうこう話しているうちに、志保姉が来てくれた。
志保姉にはボクの隣に座ってもらって、ボクは何を飲むか聞いた。
紅茶とのことだったので、すぐに準備する。
「そういえば料理や家事の方はどうなの?」
「うーん・・・まだまだかな。洗濯だけじゃなくてやっとアイロンがけも覚えたけど、料理の方はからっきし」
「あらそうなの。・・・ああ、ありがとう」
志保姉はストレート派だから何も入れずにカップを渡した。
「・・・大分手前で切り上げるのね」
「へ?」
「茶葉の蒸らし時間よ。まだ茶葉が開ききってないわ」
「あ、ごめん。悟さんが渋いものダメだから、ついいつもの癖で・・・」
「なるほどね。なんだかんだ今は上手くいってるのね」
志保姉にはボクと悟さんがすれ違っていた時期にとても世話になったから、申し訳ない気持ちになる。あのときは、このままじゃボクが倒れるって心配してくれたんだよね。
『恋人が大事なのもわかるけど、まずは自分を大事にしなさい。じゃないと、向こうも心配になるわ』
悟さんがいつしか自分の体調不良を隠したときに、志保姉にそう言われた。あの言葉でハッとしたというか、そんなに気張らなくていいんだという余裕が生まれた。
もちろん志保姉は悟さんにも怒っていたけど、それもボクの思いを汲み取ってくれたから。
だから、志保姉を裏切ることは絶対しない。
「それなら手料理を振る舞うのはどうかしら」
「え?」
「手料理がプレゼントというのも落ち着かないかもしれないけれど、あなたの言う特別感やさりげなくお祝いできるわよ」
「そ、っか・・・料理・・・ボクにできるかな」
「そうね。パイシチューなんていいんじゃないかしら。寒い季節にピッタリだわ」
「パイシチュー・・・!そういえばこの前、テレビで特集されてて悟さんが食べたいって言ってた!」
「なら決まりね。あとは・・・物は何がいいかしらね」
やっぱり志保姉はすごい!
新一君と秀兄で話していてもいいものが出てこなかったのに。
他にはオーディオプレイヤー、ブレスレット、アロマオイルなどが挙がった。
アクセサリー類は好みがありそうだから今回はアロマディフューザーをプレゼントにすることにした!
あとは肝心の料理だけど・・・しばらく志保姉のところに通って練習することに。家でもいいけど、悟さんにはギリギリまで内緒にしておきたいから。
そうこうしているうちに期日はどんどん迫ってきて。
気づけば明日、退院日とともに悟さんの誕生日となった。
「なんだ、改まって」
「秀兄にも聞いてほしい」
冬の寒い日のこと。ボクは工藤家へと遊びに来ていた。というのも、秀兄が新一君に事件のことで相談しに来ていると聞いていたから。
秀兄は、あの組織が壊滅したあと、その後始末をしながらアメリカへ帰国。今日は3ヶ月ぶりに会える日なのだ。
ちなみに、既に悟さんから許可はもらってる。でも、寒い日が続いているせいで悟さんは入院中。12月始めには退院できそうだという。
「誕生日プレゼント、何がいいと思う?」
「・・・ああ!五条先生ね。そういえば12月生まれだっけ」
「ホー・・・で、何を渡そうか悩んでるわけだ」
「そうなの!なにせ去年は有耶無耶になっちゃったから今年こそは!、って思ってて・・・でも何がいいのかさっぱり」
ボクは悟さんの恋人だから、なにか特別感が欲しい。
吉兄にも事前に相談してみたんだけど・・・そもそも吉兄ってば、悟さんの誕生日を知らなかった。
なんで知らないの?!、と言ったら吉兄が苦笑いしたような声音で言った。
『真純はそんなこと感じたことないと思うけど、五条くんって自分の領域をしっかり保っているんだよ。僕が『五条くん』と呼ぶのも誕生日を知らないのも、五条くんの領域を侵す行為ということだよ』
・・・よくわからないけど、とにかく吉兄は悟さんに教えてもらえなかったらしい。
一度話はしてみたことはあるようだけど、はぐらかされたからそれからは一切触れてないんだって。
・・・これ、ボクがお祝いしてもいいのかな。でも、ボクは悟さんの恋人だし。
「で、グルグル考えていたというわけか」
「そもそも真純は彼の誕生日を何故知っているんだ。新一君も」
「それが・・・その、入院の手続きとか診察の付き添いとかで保険証を見る機会があって」
「そうそう。思わずガン見したって去年言ってたよな。で、その報告を俺が受けたから俺も知ってるってわけ」
「だから困ってるんだよ・・・!」
悟さんに教えられるどころか、覗き見のように知ってしまった彼の生年月日。
「でもボク思うんだ。12月の初めだから、ちょっと早いクリスマスプレゼント!とか、退院祝いとして送れないかな」
「世良、退院祝いは最初の方たくさんやりすぎて、逆に五条先生の負担になるからってやめなかったか?」
「だって・・・」
「いや、はっきりと言えばいいじゃないか」
「・・・やっぱり秀兄は女心がわかってない」
「アハハ・・・」
もう~!何かいい手立てはないかな。
・・・あ!そうだ。あの人にも聞いてみよう!
「ねえねえ、志保姉って今日いる?」
「確か今日は家に引きこもって研究するとか言ってたぞ」
「よし!志保姉にも聞いてみよう」
早速、志保姉にメールする。
すると、すぐにこっちに来てくれるそうなので、ボクは待つことにした。
「そういえば真純は五条くんとデートしたことはあるのか」
「うーん、今年は悟さんの体調ががたついてたから、あんまりかな」
「ふむ。なら旅行でもいいかもしれないな。それぐらいの蓄えはあるだろう」
「それも考えたんだけど、お医者さんから環境の変化はあまりしないでほしい、って言われてるんだ。だから泊りがけの旅行とか遠出するのはちょっとね」
「そうか。彼の体調を最優先にしなければいけないな」
「あら、何かと思えばあの先生のプレゼントを考えているのね」
「あ!志保姉!こんにちは~」
「こんにちは。久しぶりね」
そうこう話しているうちに、志保姉が来てくれた。
志保姉にはボクの隣に座ってもらって、ボクは何を飲むか聞いた。
紅茶とのことだったので、すぐに準備する。
「そういえば料理や家事の方はどうなの?」
「うーん・・・まだまだかな。洗濯だけじゃなくてやっとアイロンがけも覚えたけど、料理の方はからっきし」
「あらそうなの。・・・ああ、ありがとう」
志保姉はストレート派だから何も入れずにカップを渡した。
「・・・大分手前で切り上げるのね」
「へ?」
「茶葉の蒸らし時間よ。まだ茶葉が開ききってないわ」
「あ、ごめん。悟さんが渋いものダメだから、ついいつもの癖で・・・」
「なるほどね。なんだかんだ今は上手くいってるのね」
志保姉にはボクと悟さんがすれ違っていた時期にとても世話になったから、申し訳ない気持ちになる。あのときは、このままじゃボクが倒れるって心配してくれたんだよね。
『恋人が大事なのもわかるけど、まずは自分を大事にしなさい。じゃないと、向こうも心配になるわ』
悟さんがいつしか自分の体調不良を隠したときに、志保姉にそう言われた。あの言葉でハッとしたというか、そんなに気張らなくていいんだという余裕が生まれた。
もちろん志保姉は悟さんにも怒っていたけど、それもボクの思いを汲み取ってくれたから。
だから、志保姉を裏切ることは絶対しない。
「それなら手料理を振る舞うのはどうかしら」
「え?」
「手料理がプレゼントというのも落ち着かないかもしれないけれど、あなたの言う特別感やさりげなくお祝いできるわよ」
「そ、っか・・・料理・・・ボクにできるかな」
「そうね。パイシチューなんていいんじゃないかしら。寒い季節にピッタリだわ」
「パイシチュー・・・!そういえばこの前、テレビで特集されてて悟さんが食べたいって言ってた!」
「なら決まりね。あとは・・・物は何がいいかしらね」
やっぱり志保姉はすごい!
新一君と秀兄で話していてもいいものが出てこなかったのに。
他にはオーディオプレイヤー、ブレスレット、アロマオイルなどが挙がった。
アクセサリー類は好みがありそうだから今回はアロマディフューザーをプレゼントにすることにした!
あとは肝心の料理だけど・・・しばらく志保姉のところに通って練習することに。家でもいいけど、悟さんにはギリギリまで内緒にしておきたいから。
そうこうしているうちに期日はどんどん迫ってきて。
気づけば明日、退院日とともに悟さんの誕生日となった。