「・・・ごめん、なんか息子がやらかしたみたいだからちょっと行ってくる」

突如、会場中に響き渡る声。
それは私もよく知る声で、それと同時にバタバタと足音が近づいてきた。

「きゃ！」
「らんねぇちゃん、かくまって！」
「あ、ゆうくん。今、ママが探してるんじゃ、」
「しらない！」
「こーら、悠仁。あんまりママを困らせないの」
「父ちゃん！」
「今日はママを怒らせない、って約束したよね？」

ドーンと勢い良く抱きついてきたのは小さな男の子。
五条先生が逃げ出さないようにその子の首根っこをつかまえている。
短髪で、まさに元気いっぱいのこの子は五条先生、そしてーーーー

「あ、ゆう！見つけたぞ！」
「げぇ！父ちゃんが足止めするから」
「・・・お前、本当に4歳児？ほんとよくそんな言葉知ってるよね」
「めぐがこの前、父ちゃんにしろって言ってた！」
「え？！悠仁が珍しく足から離れないと思ったらそういうことだったの？」

ガーンとショックを受ける五条先生はまさに父親で。
それは、先生時代でも見られなかった豊かで優しい表情だった。
そんな五条先生を笑うのは、さっきゆうくんを大声で呼んでいた真純ちゃん。
真純ちゃんは現在教師として帝丹高校で働いている。
五条先生の仕事を引き継いだのもそうだけど、まさか帝丹高校に配属されるなんて。
真純ちゃんは母校に関われるのが結構嬉しいみたい。