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JK探偵、命の駆け引き

「世良さん」
「あ・・・佐々木先生」
「ちょっといいかな?」

その日の昼休み、ボクは佐々木先生に連れられて相談室へと向かった。
佐々木先生と1対1で。
話すのは昨日のこと。

「ごめんなさい、私が夜まで連れまわしてしまったから・・・」
「あれは佐々木先生の依頼だったから。・・・でもびっくりした。弟君の調査をしてほしい、なんて」
「・・・両親が離婚して、引き離されちゃったから。しかもお酒飲むと暴力を振るう父親の方に。心配で心配で。まだ中学生だから、余計に・・・ごめんなさい、危ない目に遭わせてしまって」

いいんだ、とボクは首を振った。
本当に反省しているようだし、あれは偶然。
だから何も悪くない、とはっきり言う。

「佐々木先生が事情を話してくれたんだろ?ありがとうございます」
「いいのよ。・・・ところで世良さん」
「はい?」
「その、五条先生とはどんな関係で・・・あんな五条先生初めて見たし、アイマスクの下があんなに・・・」

ああ、そうだった。
この人は五条先生に近づいて、あわよくばその隣に居座ろうとする。
五条先生があんなに愛想よく笑顔を貼りつけるひとなんて、佐々木先生ぐらい。
・・・噓っぱちの、笑顔。

「もしかして付き合ってるの?それなら校長先生に言い寄られてるって言わなきゃ、」
「違います」

言い寄られてるってなに?
ボクも悟さんも覚悟を決めて一緒にいる。
だから、波風立てないように行動を控えていた。
・・・今のボクたちは、先生と生徒であるのには違いないんだから。

「五条先生は、兄の友人で・・・まだボクが小学生のころに会ったことがあるんです。最近知りました。それだけですよ」
「・・・そう、わかったわ」

ピッと電子音が聞こえた。
・・・録音してたんだ、この個別相談を。

「録音してごめんなさい。これはきちんと校長先生に渡して、きちんと保管するから安心して?・・・もし世良さんが恋人同士だなんて言ってたら、五条先生は即クビね」
「・・・・・・」
「これで個別相談は終わり・・・どうかお幸せに」

佐々木先生は目をつむってくれるらしい。
ひらりと髪を靡かせて、そのまま相談室を後にした。
その翌日、佐々木先生が帝丹高校を辞めたと聞いた。産休していた先生が戻ってきたからという理由で。
依頼を受けるにあたって交換したアドレスにメールを送信したが、宛先不明で返ってきてしまった。
同学年がやっと平穏が!、と喜んでいたが、なんとなく腑に落ちない思いだ。
それでもこれでよかったんだ、とどこか俯瞰している自分もいた。


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