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元最強、幸せを知る

「ちょっと落ち着いてきた?」
「ん・・・・・・」

迷った挙句、僕は真純の泊まっているホテルではなく自分の家に連れて来た。
顔が青く、タクシーでホテルまで戻るのは不可能だと判断したから。
お腹は空いていない、と言うのでコンビニでゼリーと翌朝の分としてパンを買ってすぐに家に向かった。ついでに真純の下着も。洗濯して乾燥しても、すぐは身につけられないから。
シャワー浴びておいで、というと僕が渡した着替えを持ってもそもそと動き出した。
よかった、今回は行動できている。
真純がシャワーを浴びている間にベッドメーキングをして、ちょっとしたアロマオイルを焚いて準備しておいた。
髪を乾かさずにリビングに戻ってきた真純を、おいでと声を掛けてソファーに座らせた。

「ふかふか・・・」
「ん?ソファーのこと?それいいでしょ、僕の長身に合わせているからものすごく大きいけど」
「きもちいー」

とろんと目をつぶる姿はまるで幼い子供のようで。髪を乾かし終えても、頭を撫でる。

「悟さん、ボクね・・・」
「うん」

そろそろ寝よっか、そう声を掛けようとしたときだった。
真純はおそるおそる僕に抱きついてきてその重たい口を開いてくれたのだ。
・・・真純が教えてくれたのは、あまりにも悲しくて怒りが沸き上がる話だった。
小学生の時に誘拐された?
それも監禁されて?
思わず顔を顰めてしまったのは嫌悪感からじゃない、その男に心底怒りを抱いたからだ。
震えながら、そして泣きながら話してくれる真純を僕はずっと抱きしめた。
辛かったら話さなくていい、そう言ったが、真純は首を横に振るばかり。

「真純・・・」
「ひっく、ごめんなさい・・・急にこんなこと話して。でも悟さんなら受け入れてくれると思ったから。隠し事なんかしたくなくて。・・・悟さんには心配かけてるし」
「うん、わかってるよ。話してくれてありがとう、真純」
「うん・・・!」

ボロボロと泣く真純を抱き上げて、その背中をトントンと叩く。
どれだけ怖い思いをしたのだろう。今、どれほどの勇気を持って話してくれただろう。
そう考えたら僕は慰めることしかできなかった。
それでも、きっと同情なんかはいらないから。

「ねえ、真純」
「・・・?」
「真純のこと、だーい好きだよ」

僕は愛を囁くことにした。
真純に僕を見てほしくて。
悲しみに暮れたその顔を笑顔にしたくて。

「・・・わたしも、」
「うん」
「悟さんのこと大好き」
「ふふ、じゃあ僕と一緒だね」
「うん、悟さんと一緒!」

ああ、真純の『私』はかわいい女の子になりたかった君自身なんだね。
僕のためにかわいくなろうと、努力していた女の子。
髪を伸ばしていたんだって?見てみたいなぁ・・・今のショートも似合うからこっちがいいとか選べないんだけど。


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