元最強、そろそろ動き始める
『真純~今日家帰れなくなった。早く帰りたい』
「ふふ、悟さんお疲れさま」
その日の夜の電話での悟さんは少し様子がおかしかった。
どこか空元気なような、無理やり自分を奮い立たせているような、そんな気がした。
『やっぱり長野に来るんじゃなかったな』
「え、今長野にいるのか?」
『・・・あー、うん。ちょっとね』
「・・・悟さん」
『うん』
「無理して言わなくていいけど、言い淀むくらいならスパッと言っちゃいなよ。話したくないなら話したくない!みたいにさ」
でも本当は多分、悟さんは話を聞いてほしいんだと思う。
ただ、遅くまでボクを付き合わせちゃうと悪い、とかそんなことを思ってるんじゃないかな。
そんなこと気にしなくていいのに。
少しでも長く悟さんの声を聴いていたい。
少しでも長く悟さんと同じ時間を過ごしたい。
そんなボクの思いが通じたのか、悟さんは歯切れ悪くも話してくれた。
『実は爺・・・祖父に会ってきてさ。まあ僕の顔を見るなりすぐに死んじゃったんだけど』
「え、死んだって・・・発作か何かか?」
『まあそんな感じかな、普通に寿命だよ。いつ死んでもおかしくなかったし。僕かなり嫌われてたから別に今更って感じなんだけど。・・・ちょっと昔のこと思い出しちゃってさ』
「うん」
『あの爺、最後になんて言ったと思う?僕、初めて聞いたね。自分の娘を名前で呼ぶなんて。しかも約束を破ったことを謝って』
「そうだったのか」
『はぁ・・・やっぱり親子って似るのかね。爺の娘・・・母さんも『謝りたかった』なんて言って逝っちゃったからさ』
淡々と積み重なる言葉は、悟さんが思いつくままに話しているからなんだろう。
でも自分のおじいちゃんが亡くなったとはいえ、その言葉にはなんの感情もなかった。
声色が柔らかくなったのは自分の母親のことを話す時くらいだった。
・・・きっと子供時代、いい思いをしてこなかったんだと思う。
悟さんにとって、おじいちゃんは自分の家族じゃない。
むしろ嫌っているんだ。
じゃなければ、こんな風にならないから。
『なんとなく母さんに報告したくて、思いつくまま長野行きの新幹線に乗ったのはいいけど・・・やっぱり思いつきってよくないね。雨降られてびしょ濡れ』
「風邪引かないようにね?」
『はぁ~真純は優しい!』
だんだんと悟さんの声が甘えるように間延びし始めた。
多分、こうなってくると・・・
『ねぇ、真純』
「ん?」
『僕のこと癒して。・・・つかれちゃった』
それは悟さんの甘え。
年上の恋人がボクだけに見せてくれる弱さ。
もちろん、とボクは答えて、お互い眠くなるまでずっと話していた。
「ふふ、悟さんお疲れさま」
その日の夜の電話での悟さんは少し様子がおかしかった。
どこか空元気なような、無理やり自分を奮い立たせているような、そんな気がした。
『やっぱり長野に来るんじゃなかったな』
「え、今長野にいるのか?」
『・・・あー、うん。ちょっとね』
「・・・悟さん」
『うん』
「無理して言わなくていいけど、言い淀むくらいならスパッと言っちゃいなよ。話したくないなら話したくない!みたいにさ」
でも本当は多分、悟さんは話を聞いてほしいんだと思う。
ただ、遅くまでボクを付き合わせちゃうと悪い、とかそんなことを思ってるんじゃないかな。
そんなこと気にしなくていいのに。
少しでも長く悟さんの声を聴いていたい。
少しでも長く悟さんと同じ時間を過ごしたい。
そんなボクの思いが通じたのか、悟さんは歯切れ悪くも話してくれた。
『実は爺・・・祖父に会ってきてさ。まあ僕の顔を見るなりすぐに死んじゃったんだけど』
「え、死んだって・・・発作か何かか?」
『まあそんな感じかな、普通に寿命だよ。いつ死んでもおかしくなかったし。僕かなり嫌われてたから別に今更って感じなんだけど。・・・ちょっと昔のこと思い出しちゃってさ』
「うん」
『あの爺、最後になんて言ったと思う?僕、初めて聞いたね。自分の娘を名前で呼ぶなんて。しかも約束を破ったことを謝って』
「そうだったのか」
『はぁ・・・やっぱり親子って似るのかね。爺の娘・・・母さんも『謝りたかった』なんて言って逝っちゃったからさ』
淡々と積み重なる言葉は、悟さんが思いつくままに話しているからなんだろう。
でも自分のおじいちゃんが亡くなったとはいえ、その言葉にはなんの感情もなかった。
声色が柔らかくなったのは自分の母親のことを話す時くらいだった。
・・・きっと子供時代、いい思いをしてこなかったんだと思う。
悟さんにとって、おじいちゃんは自分の家族じゃない。
むしろ嫌っているんだ。
じゃなければ、こんな風にならないから。
『なんとなく母さんに報告したくて、思いつくまま長野行きの新幹線に乗ったのはいいけど・・・やっぱり思いつきってよくないね。雨降られてびしょ濡れ』
「風邪引かないようにね?」
『はぁ~真純は優しい!』
だんだんと悟さんの声が甘えるように間延びし始めた。
多分、こうなってくると・・・
『ねぇ、真純』
「ん?」
『僕のこと癒して。・・・つかれちゃった』
それは悟さんの甘え。
年上の恋人がボクだけに見せてくれる弱さ。
もちろん、とボクは答えて、お互い眠くなるまでずっと話していた。