「・・・悪いな。あんた、悟の彼女だろ？せっかくのデートだっただろうに」
「え、」
「ん？違うのか？」
「そ、そうだけど」
「やっぱりな。初めて見た。悟ってあんなに表情豊かになるんだな。きっとあんたが悟を変えたんだろう」
「そんな・・・でも、真希さんは本当にいいのか？その、自分の娘と離れ離れになって」
「ああ。夫は私がどうにかする。だから、せめて真衣には幸せになってほしくてな。・・・元々は優しい奴だったんだが、仕事でのストレスもあってか真衣を妊娠してから変わっちまってな。なのに私に執着するもんだから困ったもんだ」

それは諦めの思いだった。
それでも真希さんにとって、この子・・・真衣ちゃんは大切なんだ。
すると、悟さんが慌てて店の中に戻ってきて、次の瞬間にはボクたちの席に男が近づいてきた。

「っ・・・！なんでここに、」
「それはこっちの台詞だよ。真希、俺を置いてどこに行くつもりだった？男に会ってたんだよね？あいつは何？」

ああ、この人が真希さんを苦しめている人だ。
その目は黒く濁っていて、はた目から見ても正気じゃないことはすぐにわかった。

「おい、逃げろ！真衣を連れて、早く！」

真希さんの大声で我に返ったボクは真衣ちゃんをさらに抱きしめて席を立った。
その次の瞬間ーーーー