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JK探偵、恋人の秘密を知る

「わあ、こんな山奥に大きな屋敷があるなんて誰も思わないな!」
「なかなかにでかいでしょ?」

それは時代を感じる、古い洋館だった。
深い森を抜けたら館がある、小説みたいな展開に心が躍る。
でも、どうしてここに・・・?

「ここね、僕が生まれた家なんだよ」
「え・・・?!生家ってこと?」
「うん。まあその後は母さんの調子が悪くなって長野に引っ越したけどね。まだ母さんが元気だったころは、ここで一日中外で遊んでた」

今は誰もいないけどね、と笑う悟さんはきっとその思い出を振り返っているんだろう。
緑に生い茂っているその館は、もう何年も手入れされていないのか入ることさえできない状態だった。

「真純はさ、小さいころの記憶って残ってる?」
「あんまり覚えてないかも。でも、滑り台で前転しながら滑ったらママにすごく怒られたのは覚えてる!」
「アハハ!なに、滑り台で前転したの?それ見てみたかったなあ」
「できると思ったんだよ。まあ危ないことだっていうことまでは頭回らなかったけどさ」
「ハー、面白い。でもそうやって笑い話に出来る思い出があるんだね」
「・・・悟さんはないの?」

どこか含みを持った言い方が気になって、つい聞いてしまった。
でも、悟さんは嫌な顔一つしないで教えてくれた。

「前にも言ったことあると思うけど、僕って普通じゃないんだよ。・・・ここで過ごしたのは2歳ぐらいまでかな?その全部の記憶が僕にはある」
「え・・・」
「忘れたくても忘れられないんだよね。そういうものだとわかったのは5歳ぐらいのとき。それまではどうすれば良くなるのかずっと調べてた。僕の寿命が一気に縮まったのはその時じゃないかな?傍観を決めていた母さんまで止めに入るほどだったから」

忘れたくても忘れられない・・・それはどれほど辛いものなんだろう。
嬉しいことも悲しいことも、全部覚えてるってことでしょ?
そんなの・・・頭がおかしくなってしまう。

「・・・真純のことだけは読めないんだけど、なんとなくわかるなあ・・・多分、そこまで自我を保てているのは何故だろう、ってところかな」
「!すごい、正解!」
「アハハ!今、自分の考えを当てられたんだよ?それでも真純は、気持ち悪いとか言わないんだね」
「・・・ということは言われたことあるんだ」
「まあね。特に施設とか学校は酷かったな。人間って異質を嫌うじゃん?僕はそれに当てはまったってわけ」
「だから、友達は安室っていう人だけ?」
「うーん・・・あいつはさ、僕がどんだけ部屋に籠ろうとしても、ずかずかと入ってくるんだよね。だからもう諦めたっていうか・・・確かに唯一の友だな、とは思ってるけどそれ以上思うことは何もないよ」

・・・悟さんはどうしてそう線引きをするんだろう。
いや、自分の領域がはっきりしていると言えばいいのかな。
なんかこう・・・これ以上は踏み込まない、と自分に言い聞かせているような、そんな感じがする。

「・・・僕の目はいい意味でも悪い意味でも見えすぎちゃうんだよね。それでいろいろ苦労したし。・・・ねえ残酷なこと言ってもいい?」
「?うん」
「僕ね、初めて目を開けて最初に見たものを覚えてるの。何だと思う?」
「え、なんだろ・・・お母さんの顔とか?」
「ああ、近いね。・・・正解はね、両親の寿命」
「え・・・」

思いもよらない言葉に思考が固まる。
確かに今、見えすぎるという話はしてたけど、それはどこまで?


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