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JK探偵、恋人の秘密を知る

「えーと、ここかな・・・?」

翌日。
依頼が舞い込んできて、少しほっとした。
今は考えるよりも体だとか頭を動かしたかったし、悟さんに嘘をつかないで済む。
今日の依頼は、ある男性の浮気調査。
最近帰りが遅い彼を調べてほしい、と男性の恋人から依頼されたのだ。
はっきり言って、これはクロだな・・・男性は遊び人なのか、複数の携帯を駆使しながら口八丁にのらりくらりとしている。
男性の後を追い始めてから、そろそろ2時間経つ。
もう証拠という証拠も揃ったし、ここらで切り上げるのがいいだろう。
最後まで抜かりなく、気づかれないように・・・そう思っていたのに。

「おい、にーちゃん」
「・・・!?」
「おめぇなにもんだ?さっきからよく見るんだよな。誰の差し金だぁ?」
「・・・誰だと思う?ちなみに、あんたどんだけ恋人抱えてるんだよ。ボクが調べただけでも6人はいたけど?」
「あ?6人?・・・ああ、今日会ったあいつらか。あいつらは全員一回っきりだぜ。恋人は3,4,・・・ああ、あいつも入れると8人いるな」
「うわ、最低だなあんた。よくそんな大人数抱えられるね」

・・・思ったよりこの人、やばい奴だった。
それも、バレたくねえな、といきなり殴ってきたもんだから思わずバッグを床に落としてしまった。

「あ!」
「へっ、やりい♪こいつを奪っちまえば証拠はなくな、」
「ごっめーん!!!!」

ドガッ、と大きな音を立てて床に崩れるその男。
しかもこの声って・・・

「さ、悟さん・・・!」
「やっほー真純。偶然だね~で、こいつ何?」

珍しくラフな格好をして、目隠しじゃなくてサングラス。
男が崩れ落ちたのは、悟さんが殴るなり蹴るなりしたんだろうけど。
はっきり言って、悟さんを見て背筋に悪寒が走った。
口調や言葉は飄々としているけど、纏うオーラがいつもと違う。
鋭く冷たい・・・刃のように尖っていて、思わず後退りをしてしまうほど。
ボクが後退りをして砂利の音が聞こえたのか、悟さんは男に向けていた視線をこっちに向けた。
そして、笑うその顔は冷たいものが含まれていた。

「真純」

名前を呼ばれただけなのに、勝手に体がビクッとして、おそるおそる視線を合わせる。

「こいつが昨日言ってた依頼人?ダメじゃない、こんな悪い男と一緒にいたら。ああ、こいつ何人も恋人いるんだ。しかも全部似たようなやつじゃん。なに、それがお前のタイプなの?ハハ、全部お前が持ってる財産に目が眩んでる尻軽女なのに。それしか、お前には取り柄がないんだよ」
「な、なんだよおまえ・・・」
「へぇー○○っていうやつが本命なんだ。・・・ハッ、俺と会ったらそいつは俺に靡くよ。女なんてそんなもんだろ?」

そう言い放つ悟さんが、怖くて。
・・・寂しい、悲しい、と泣いているように見えた。

「・・・なに?」
「悟さん、もういいよ・・・」
「こいつのこと庇うの?」
「違う。悟さん、ボクは悟さんを置いていかないから・・・だから、ボクを見て?」

悟さんの両頬を包んで、視線を合わせる。
夏の海を閉じ込めたその瞳は、今はもう夜の海のように濁っている。
ボクの声が届きますように・・・そう願って、悟さんを見つめ続ける。
ふと、悟さんが右手を伸ばす。
その手を両手で握って、頬すりする。
冷たいその手にボクの体温が移るように。
がくん、と悟さんの体から力が抜けた。
膝を打たないように、慌てて背中を支えるとボクも一緒に地面に座った。

「・・・ごめん、取り乱したね」
「ううん」
「怖かったでしょ、体震えてる」
「・・・ちょっとだけ。あんな悟さん、初めてだったから」
「・・・きらいになった?」

震えた声で弱々しく言った悟さんは、きっと不安なんだ。
少しでもその不安がまぎれるように、悟さんの頭を抱えるように抱きしめた。

「嫌いにならないよ。でも、悟さんが思ってること全部教えてほしい」
「・・・昨日みたいに泣かない?途中で逃げない?」

・・・ああ、ボクやっぱり逃げたんだ。
それが悟さんにとってトラウマになりかけている。

「逃げない。・・・ちゃんと悟さんと話したい」
「うん・・・真純も僕に隠さないで、全部ちょーだい?」


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