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元最強の同僚

七海side

「七海せんせー!ちょっとわかんないことが・・・あれ、五条先生じゃん」
「やっほー!あ、僕の用事は済んだから七海返すね~じゃあね、七海せんせ♪」

・・・最後に取ってつけたような『先生』はやめてほしいですね。
あの人のことだから、ただからかっているだけでしょうけど。

「・・・七海先生ってさ、五条先生と仲いいの?」
「まあまあ仲がいい、と答えておきましょう」
「いや、さ?なんか七海先生と話してる時五条先生が普段と違って見えたからさ。なんていうか、楽しそう?」
「はぁ・・・からかいはされましたね。よりによって今日中に提出しないといけない書類を押しつけてきたんですから」
「えー?それっていいの?」

・・・あの人なら構わない。
さすがに生徒には口に出さないが、きっと私はそう答える。
学生時代から五条さんはかなり無理を言う人だった。
課題をやるのに代わりに資料を探せ、ずんだ餅が食べたいから一緒に来い、だのそれはもう。
灰原はいつも笑って五条さんについていったが、私はあまり気乗りしなかった。
なぜ五条さんの分までやらなくてはいけないのか、休みの日まで五条さんと過ごさなければいけないのか、疑問でしかない。
しかし、その考えは今振り返ると表面的なものでしか過ぎないとわかる。
五条さんは社会科をとろうとしているのに、その課題は私と灰原の専門科目であった数学。
宿の予約も食事代も全部五条さんがしてくれた。
学生でお金がなかっただろうに、だ。
・・・何より、私は五条さんに救われた。
五条さんがいなければこうして数学教師になることも、いや生きていることすらできなかったであろう。
貸しは返します、五条さんにそう宣言しているにも関わらず、卒業してからこうして同僚となった今も、五条さんの奢りは無くならない。
これじゃ意味ないじゃないですか、私がそう言った後のあの人の顔が忘れられない。


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