元最強、たまには表舞台に出てみる
お互いに両親がいなくて、その髪と瞳の色から周りに遠巻きにされていたから、最初はなんとなく一緒に過ごしていただけ。
なんでもできる俺と、努力して身につける降谷。
そんな俺を降谷と嫉妬していた。精神年齢が高い俺はすぐにそれに気づいたけど、別にどうってことなかった。
それでも、両親をそう時間をかけずに続けてなくした俺は、ちょっと神経質だった。
イベントごとは両親を思い出す。
病院は母さんを思い出す。
車は父さんを思い出す。
そんな俺が心休まる場所は、ベッドの上しかなかった。
降谷だけはそんな俺の傍にずっといてくれた。
俺がどんなに突き放しても降谷だけは離れようとしなかった。
目が疲れやすい俺を、どうにかしようと対策と対処を考えてくれたのも降谷だった。
『おい、五条!』
『なに?(目が痛い・・・)』
『これ、目に優しいんだって!これ、やる』
『・・・あ、ありがとう』
まだ出会って間もないころ、降谷がくれた飲み物。
まさか、中学になっても自分のものとは別に水筒を用意してブルーベリーティーを持ち歩くとは俺も思わなかったけど。
俺の友達は、降谷だけ。
俺たちがいまだに名字で呼び合うのも、俺が名前で呼ぶのも呼ばれるのも苦手だから。
そんな俺の気持ちを汲み取って降谷は今でも尊重してくれる。
あいつはそういうやつだ、いつでも俺を尊重してくれた。
まあ、僕が『陣平くん』と呼んでいることを知った降谷に、なんで?!、と泣かれたのは驚きだったけど。