第1章『お引っ越し』
[???]
「ここが2年2組です」
「はいっ、あのっ…ありがとうございます…」
(緊張で何も気の利いたことが言えなかった…)
[???]
「…」
(あれ…)
私が挙動不審にしていると、男の子は何も言わず私のそばをさっさと離れていった。
(け、結構素っ気ない人だな……いや、私が口下手なのが悪いのか…)
[担任の先生]
「待たせたな、今からお前を紹介するから」
「はい、お願いします…」
ざわざわ…。
(なんかやだな、この雰囲気…皆に見られてる)
他所 の奴が居るんだから、目立って見られても仕方無いかもしれないが、こんな風に見られるのはなかなか無いので結構きつい。
[担任の先生]
「2組の新しい仲間の、雨風千華だ。皆、仲良くしてやってくれ」
パチパチ…。
拍手されている、かなり静かめに。
(こ、これは盛り上がってないってこと?それとも、上品ってやつなのかな?)
ほとんどの人が拍手をしてくれているが、皆の顔は澄まされている。
(私…この教室でちゃんとやってけるかな…)
[担任の先生]
「えっと…よろしくぐらいは言っといたらどうだ?」
「あ…」
先生に小声で伝えられる。
「よ、よろしくお願いします…」
[担任の先生]
「よし、雨風の席は…」
[???]
「せんせー!南の隣が空いていまーす」
大きな声で後ろの席の方の男の子が先生に呼びかけている。
[担任の先生]
「お、そうだな。じゃあ、雨風はそこな」
「あ、はいっ」
私は速やかに指定された席に座る。
[南 冬磨]
「南 冬磨 です。よろしくね」
隣の席に座っている南君が丁寧に自己紹介してくれた。
[東條 春樹]
「東條 春樹 だ。よろしくな」
「あ、はいっ…」
さっきの男の子だ。
(このクラスでやってけるか心配だったけど、この人達は良い人っぽいし、大丈夫かな…。)
「…?」
ふと私は、私のすぐ前の席が空いていることに気付く。
(あれは…?)
[担任の先生]
「よーし、ホームルームを終わるぞ」
先生の呼びかけでホームルームが終わり、皆が一斉に席を立ち上がった。
[2年2組女子A]
「雨風さん、放課後にわたくし達とお茶しません?」
なんだか上品なお嬢様っぽい集団が押し寄せてきた。
「えっ、お、お茶ですか?」
[2年2組女子B]
「A子が淹れる紅茶は絶品なのよ。貴女にも1度味わってほしいわ」
(どうしよう…)
ここは私もひとつ、お上品な返しをしなくては…。
「こ、光栄です…」
[2年2組女子A]
「うふっ、雨風さん、光栄ですだなんてそんな大袈裟な…」
[2年2組女子B]
「面白い子ねー」
「あはは…」
[2年2組女子A]
「場所はここですので、時間通りにいらして下さいね?」
招待状のような紙を渡された。
ほんのり薔薇の香りがしたような気がする。
「ローズハウス…?」
[2年2組女子A]
「では、雨風さんがいらっしゃるのを楽しみにしていますわね」
なんだろうこの人。
少し怪しげな笑顔だ。
「は、はい。ぜひ行かせてもらいます…」
[2年2組女子A]
「では、ごきげんよう…」
[2年2組女子B]
「ごきげんよう」
出た。
お嬢様キャラの鉄板、『ごきげんよう』。
誰かがふざけなしで言ってるの初めて聞いたかもしれない。
(ここは私も、ごきげんようで返すのが礼儀だよね…)
「ご、ごきげんよう…」
私がそう言うと、集団は一斉に帰っていった。
「ふぅ…」
(なんとか一件落着…)
[南 冬磨]
「雨風さん?」
「南君?」
[東條 春樹]
「今のは何だよ?」
東條君と南君がこっちを心配そうな顔で見ている。
「えっ、私何か変だった?」
[東條 春樹]
「いやー、変だろ」
[南 冬磨]
「大丈夫?無理してない?」
「む、無理なんかしてないよ…?」
[南 冬磨]
「ああいうのに別につられなくとも、普段の口調で話せば良いと思うけど…」
「いや…何て言うか…その…」
[東條 春樹]
「でも良かったじゃん。誘われたんだろ?『お茶会』に」
「あ、うん。それは普通に嬉しかったけど…」
[南 冬磨]
「ああいうお嬢様とかお坊っちゃまな人達とか、大富豪とか御曹司とか、大金持ちとか。それかもの凄く優秀な人しかこの学校にはなかなかいないんだよね」
「う、うん。やっぱそうだよね…」
私もそのレベルに頑張ってついていかなければならない。
せっかく入れてもらったこの学校で、何かやらかすわけにもいかない。
お母さんやお父さん、お兄ちゃんに日向のためにも。
[担任の先生]
「おい、雨風。お前の委員会のことなんだが…図書委員しか空いてなくて…良いか?」
「あ、はい。私、図書委員やりたいです…」
[担任の先生]
「お、助かるな雨風。頼もしいぞ」
「あはは…」
[担任の先生]
「ホームルームも早めに終わったし、次の時間までまだ時間があるから、図書室までちょっと顔出してこい。案内するぞ」
「分かりました…」
その時私は、誰かの視線を感じた。
[???]
「…」
誰かがこっちを見ている。
(あ、さっき案内してくれたカッコいい男の子だ…)
[担任の先生]
「あれ、何だ舵野 ?また雨風のエスコートでもしたいのかー?」
(舵野君って言うんだ…)
先生が男の子を茶化す。
[舵野 ???]
「いえ、別に…」
舵野君が冷たく先生をあしらう。
[担任の先生]
「あははははー、相変わらず舵野は冗談が通じないなー」
先生が笑う。
その笑顔を見ていたら、私も自然とふっと吹き出す。
「ふふっ」
[舵野 ???]
「…」
(あ、またこっちを見てる…て言うかなんかちょっと睨んでない?)
[担任の先生]
「やっと自然に笑ったな」
「あ、え?」
[担任の先生]
「じゃ、今度こそ俺が案内してやる。ついてこい」
「はい…」
私は先生の後をついていった。
「ここが2年2組です」
「はいっ、あのっ…ありがとうございます…」
(緊張で何も気の利いたことが言えなかった…)
[???]
「…」
(あれ…)
私が挙動不審にしていると、男の子は何も言わず私のそばをさっさと離れていった。
(け、結構素っ気ない人だな……いや、私が口下手なのが悪いのか…)
[担任の先生]
「待たせたな、今からお前を紹介するから」
「はい、お願いします…」
ざわざわ…。
(なんかやだな、この雰囲気…皆に見られてる)
[担任の先生]
「2組の新しい仲間の、雨風千華だ。皆、仲良くしてやってくれ」
パチパチ…。
拍手されている、かなり静かめに。
(こ、これは盛り上がってないってこと?それとも、上品ってやつなのかな?)
ほとんどの人が拍手をしてくれているが、皆の顔は澄まされている。
(私…この教室でちゃんとやってけるかな…)
[担任の先生]
「えっと…よろしくぐらいは言っといたらどうだ?」
「あ…」
先生に小声で伝えられる。
「よ、よろしくお願いします…」
[担任の先生]
「よし、雨風の席は…」
[???]
「せんせー!南の隣が空いていまーす」
大きな声で後ろの席の方の男の子が先生に呼びかけている。
[担任の先生]
「お、そうだな。じゃあ、雨風はそこな」
「あ、はいっ」
私は速やかに指定された席に座る。
[南 冬磨]
「
隣の席に座っている南君が丁寧に自己紹介してくれた。
[東條 春樹]
「
「あ、はいっ…」
さっきの男の子だ。
(このクラスでやってけるか心配だったけど、この人達は良い人っぽいし、大丈夫かな…。)
「…?」
ふと私は、私のすぐ前の席が空いていることに気付く。
(あれは…?)
[担任の先生]
「よーし、ホームルームを終わるぞ」
先生の呼びかけでホームルームが終わり、皆が一斉に席を立ち上がった。
[2年2組女子A]
「雨風さん、放課後にわたくし達とお茶しません?」
なんだか上品なお嬢様っぽい集団が押し寄せてきた。
「えっ、お、お茶ですか?」
[2年2組女子B]
「A子が淹れる紅茶は絶品なのよ。貴女にも1度味わってほしいわ」
(どうしよう…)
ここは私もひとつ、お上品な返しをしなくては…。
「こ、光栄です…」
[2年2組女子A]
「うふっ、雨風さん、光栄ですだなんてそんな大袈裟な…」
[2年2組女子B]
「面白い子ねー」
「あはは…」
[2年2組女子A]
「場所はここですので、時間通りにいらして下さいね?」
招待状のような紙を渡された。
ほんのり薔薇の香りがしたような気がする。
「ローズハウス…?」
[2年2組女子A]
「では、雨風さんがいらっしゃるのを楽しみにしていますわね」
なんだろうこの人。
少し怪しげな笑顔だ。
「は、はい。ぜひ行かせてもらいます…」
[2年2組女子A]
「では、ごきげんよう…」
[2年2組女子B]
「ごきげんよう」
出た。
お嬢様キャラの鉄板、『ごきげんよう』。
誰かがふざけなしで言ってるの初めて聞いたかもしれない。
(ここは私も、ごきげんようで返すのが礼儀だよね…)
「ご、ごきげんよう…」
私がそう言うと、集団は一斉に帰っていった。
「ふぅ…」
(なんとか一件落着…)
[南 冬磨]
「雨風さん?」
「南君?」
[東條 春樹]
「今のは何だよ?」
東條君と南君がこっちを心配そうな顔で見ている。
「えっ、私何か変だった?」
[東條 春樹]
「いやー、変だろ」
[南 冬磨]
「大丈夫?無理してない?」
「む、無理なんかしてないよ…?」
[南 冬磨]
「ああいうのに別につられなくとも、普段の口調で話せば良いと思うけど…」
「いや…何て言うか…その…」
[東條 春樹]
「でも良かったじゃん。誘われたんだろ?『お茶会』に」
「あ、うん。それは普通に嬉しかったけど…」
[南 冬磨]
「ああいうお嬢様とかお坊っちゃまな人達とか、大富豪とか御曹司とか、大金持ちとか。それかもの凄く優秀な人しかこの学校にはなかなかいないんだよね」
「う、うん。やっぱそうだよね…」
私もそのレベルに頑張ってついていかなければならない。
せっかく入れてもらったこの学校で、何かやらかすわけにもいかない。
お母さんやお父さん、お兄ちゃんに日向のためにも。
[担任の先生]
「おい、雨風。お前の委員会のことなんだが…図書委員しか空いてなくて…良いか?」
「あ、はい。私、図書委員やりたいです…」
[担任の先生]
「お、助かるな雨風。頼もしいぞ」
「あはは…」
[担任の先生]
「ホームルームも早めに終わったし、次の時間までまだ時間があるから、図書室までちょっと顔出してこい。案内するぞ」
「分かりました…」
その時私は、誰かの視線を感じた。
[???]
「…」
誰かがこっちを見ている。
(あ、さっき案内してくれたカッコいい男の子だ…)
[担任の先生]
「あれ、何だ
(舵野君って言うんだ…)
先生が男の子を茶化す。
[舵野 ???]
「いえ、別に…」
舵野君が冷たく先生をあしらう。
[担任の先生]
「あははははー、相変わらず舵野は冗談が通じないなー」
先生が笑う。
その笑顔を見ていたら、私も自然とふっと吹き出す。
「ふふっ」
[舵野 ???]
「…」
(あ、またこっちを見てる…て言うかなんかちょっと睨んでない?)
[担任の先生]
「やっと自然に笑ったな」
「あ、え?」
[担任の先生]
「じゃ、今度こそ俺が案内してやる。ついてこい」
「はい…」
私は先生の後をついていった。