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小話

 ミネストローネを私は好んでよく飲む。祖母の兄弟の会社が作っているミネストローネだ。冷たくても飲める美味しいミネストローネ。赤くてトマトの味がして、人参とじゃがいもと玉葱がたくさん入ったスープ。人との繋がりを感じる。
 人殺しの映画を見ながら夕食をとり、ミネストローネを腹の足しにと飲み干した。
 グロテスクなものは見れるのにホラーはだめだった。びっくりさせられるのも、人一倍不快感を煽られるんだろう。

「あんたそういうのみて面白いの?」
「面白いよ」
「そう、私は難しいの嫌いだから。わかんないかもね」
午後9時。この時間にこんな映画を見てたのだ。性根疑われるのも無理がなかった。
「わかんないって思うから難しくなるんだよ」
そう言うと母はふっと笑った。

 エンドロールが流れ、役者の名前が連なっていく。
「あ、この人知ってる」
妹が口を出した。自慢気に。
「そう」
12時になっても起きているあんたはやっぱり私と姉妹だ。

 出来損ないの人間が社会でもみ消される話よりも、実はエリートが屑でしたという話のほうが非現実的で確認のしようのないフィクションだった。私は常に現実から逃げるために何かを利用している、消費していく。利用、損得。人付き合いも私にとってソレなんだ。
 映画を見ても結局は現実から逃れられなかった。
「今日の特効薬も無駄だったなぁ」
一人の部屋で深夜にそう呟いた。
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