死体の匂いと花の匂いが今日はやけに鼻についたと彼女、プリンツェサは言った。
「ワタ、そう思わない？」
「うーん、おしごとのことでせいいっぱいだったからなぁ…」
プリンツェサの言葉に反応する彼は手を口元に持っていき軽く首を傾げ、なんともゆったりとした口調で返した。
　彼らはついさっき人体を捌き、細かくした後にビニール袋に閉じてきたのであった。が、そのような非人道的な行動をこなしてきた者とは思えないような、妄想を捗らせるには十分な会話を行き交う人々の中でしている。しかしそれは一般人とすれ違ったときのみであろう。彼らが歩くのは、本拠地であるファミリーの『家の廊下』なのだから。

「プリンツェサちゃんははながいいんだねえ」
ワタくんと呼ばれたクリーム色の髪をした青年は変わらないペースでプリンツェサに言葉を返す。
「はっ！？そんなこと、ないわ！ワタがぼーっとしているだけよ！」
プリンツェサは白い髪を揺らし勢い良く青年を睨んだ。彼女の頬は目の色と同じように赤く染まっていた。