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うちの本丸

「あるじさま!ぼく岩融にあいたいです!」


今日の近侍は今剣が突然そんなことを言い出した。うちの本丸にはまだ岩融と呼ばれる刀剣男士をお迎え出来ていない。その証拠に私自身、岩融とは誰ぞや状態である。


「いわとおし?」

「はい!岩融はぼくのもとのあるじ、義経公につかえていた武蔵坊弁慶のなぎなたなんです!」


え、あの有名な武蔵坊弁慶の薙刀なの!?ひぇー、あの向こう脛が弁慶の泣き所って呼ばれるぐらい弱点な弁慶さんの薙刀かぁー。でも弁慶の泣き所でも思い出されるのは、あの薬を飲んで身体が縮んでしまった高校生名探偵の映画で、自称天才科学者の博士が出題するクイズの中で弁慶が出てきたことを連想してしまうなぁ。うわぁー懐かしいよ、クロスロード。クロスロードで義経と弁慶を知ったんだよね。私が過去の思い出に浸っていた。そんな私を見て不思議に思ったのか今剣が「あるじさま?」と呼ぶ声で覚醒する。


「あ、ごめんごめん。武蔵坊弁慶の薙刀って凄いねぇー。そう言えばうちの本丸って薙刀とあと槍が居なかったんだったっけ?」

「そうですね!なのであるじさま、岩融をおむかえしましょう!」

「お、おう」


え、そんな簡単に薙刀ってお迎え出来るんです?そうなんですか?え?え?え?と思いながらあれよあれよと今剣に連れられ鍛刀部屋へとやってきた。ここまで来てしまったからにはいっちょやってみっかぁ!精神で覚悟を決めた私なのだが、如何せん薙刀のレシピなぞ分かるはずもなく、調べることに。なになにー、木炭550に玉鋼650に冷却材750に砥石750か。そのレシピを式神くんに伝えるとせっせと作業を開始してくれる。そんな初っ端には来てくれないだろうなぁ、と思いながら眺めていると鍛刀時間は2時間30分と表示されている。薙刀の鍛刀は確か5時間なので、目的の薙刀ではない。よし、次々!と思いもう一度同じレシピで式神くんにお願いをする。先程のように作業を開始してくれている。鍛刀時間はなんと5時間はと表示されていた。え!?そんな簡単に来ちゃっていいんですか?!お、驚いた……吃驚し過ぎて心臓が止まるかと思った……。


「あ、あるじさま!この時間は……!」

「い、岩融だよ!今剣!!」

「さすがあるじさまです!」


キラキラとした尊敬の眼差しを送ってくれる今剣。いや、多分君の思いが岩融を呼んだんだよ。私の力では絶対にないと思うんだよ、と思ってしまう。私に鍛刀運が無いということは自負しいている。だって未だに蛍丸くんをお迎えすることが出来ていないのだから。一応「ありがとう」とお礼を言った後に「今剣の思いが通じたんだと思うよ」って付け加えることは忘れずに。

5時間を待つのは手持ち無沙汰なので、手伝い札を使って時間を短縮させる。ついでに最初に出た2時間30分のにも手伝いを使う。初めに顕現させたのは2時間30分のだ。光と桜吹雪に包まれ顕現されたのは……。


「……おや。現世に呼ばれるとは。私は太郎太刀。人に使えるはずのない実戦刀です」


な、なんとまだうちの本丸にいない太郎太刀さんが来てくださいました。確か太郎さんは次郎さんのお兄さんだったはず、この間清酒を仰ぎながら次郎さんが自分にはデカい兄貴が居るって言っていたけど、文字通りデカい。持っている刀もデカい。え、それを振り回して敵を薙ぎ払うんですよね?風圧とかで敵が吹っ飛びそう……。でも嬉しいよ!次郎さん良かったね!お兄さんが来てくれよぉー!そんなことを考えていたら太郎さんが、「どうしましたか?」と声をかけてくれる。「あ、すみません。次郎さんが言ってたお兄さんがお迎え出来たことに感極まってしまって……」と言うと太郎さんが「そうですか」と微笑んでくれた。優しい!なんて優しいんだ太郎さん!大らかな人だなという印象が私の中で確立した。私は太郎さんに「少し待っていて欲しいです。新しい刀剣男士がもう一人顕現するのでその人と一緒に本丸案内するね」と断りを入れる。それに快く了承してくれた。それでは早速待望の岩融をレッツ顕現!


「おお。小さすぎて気づかなんだわ。俺は岩融、武蔵坊弁慶の薙刀よ!がはははは!」

「岩融!!」

「今剣か!久しいな!」


今剣が岩融に抱き着き、それを受け止める岩融は2人で笑い合っている。なんと微笑ましい絵面なのだろうか。それは太郎さんも同じみたいで、彼も私のように微笑ましそうに笑っている。こんなにも喜んでもらえると私も嬉しいというか、何だか心がポカポカする。ん?私は綾〇レイか?その後、岩融と太郎さんを連れて本丸案内した。
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