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うちの本丸

本日の近侍は燭台切さんだ。日課の鍛刀をするべく鍛刀部屋へと赴き、鍛刀用の式神くんに依頼して刀を形成してもらう。鍛刀時間は3時間で、燭台切さんと同じ時間。新しい刀剣男士が来るだろうかという期待で胸が一杯だ。では早速、手伝い札を使ってレッツ顕現。


「……大倶利伽羅だ」

「わぁ、伽羅ちゃんだ!久し振りだね!」


「主!伽羅ちゃんだよ!伽羅ちゃん!伽羅ちゃんが来てくれたよ!」と大はしゃぎの燭台切さん。すまん、伽羅ちゃんって誰だという状態の私は正に除け者という言葉がピッタリ。倶利伽羅と言えば、某青いエクソシストに出てくる双子の兄が持っていた降魔剣ぐらいしか分からないんだけど?絶対違うよね、だってあの魔剣は火の悪魔が憑依してるもんなぁー。


「伽羅ちゃん?」

「嗚呼ごめんね、分からないよね。彼は僕と同じで伊達家に伝来した刀だよ」

「ほへー、じゃあ伊達刀ってことだね」

「そうそう」


なんということでしょう、まさかあの有名な伊達家伝来の刀をお迎えすることが出来るとは。だから燭台切さんも大はしゃぎだったわけね、謎が解けてスッキリ!




僕がこの本丸に来たのがつい昨日のこと。そんな中、まさか伽羅ちゃんが来てくれるなんて思いもしなかった。嬉しくて少しはしゃいでしまったけど、主も喜んでいるみたいだ。伽羅ちゃんとこの本丸で、過ごせると思うとやっぱり凄く嬉しい。


「慣れ合うつもりは無い」


ピシャリと罅が入る音が聞こえた気がする。伽羅ちゃん、今そう言うこと言わないで!僕と主の喜びムードが台無しだよ!伽羅ちゃんの一言で主が怒ったらどうしよう!と思い慌てて主の方へ目線を向けると、何やら考え込んでいる様子。


「じゃあ、伽羅ちゃんは離れに住む?」


「え?」と僕と伽羅ちゃんの声がほぼ同時に出る。この発言には流石の伽羅ちゃんも驚きを隠せないみたいだ。無理もないだろう、僕だって凄く驚いているのだから。でもどうしてそんな離れに住む?なんてことを主は伽羅ちゃんに聞いたのだろう?


「だって慣れ合いたくないんでしょ?慣れ合いたくないって言ってる人に来た早々慣れ合えだなんて酷なこと言わないよ。それに離れなら母屋ともちょっと距離も離れてるし、何よりあそこなら厨も厠もお風呂もあるから一人暮らしできるからね!」


う、うーん……主が言っていることは確かに一理あるけど、伽羅ちゃんが言っていることは多分そう言うことじゃないと思うんだ主。僕の心の声はどうやら主には聞こえていないらしく、淡々と伽羅ちゃんを慣れ合わせない案をあれこれ言い続ける。主は伽羅ちゃんを思って言ってくれているんだろうし、本当に悪気も悪意もないのだろう。けれど、これじゃあ伽羅ちゃんが可哀想だ。だってあの伽羅ちゃんがちょっと涙目なんだから。僕の立場でもこんな徹底的に独りにしようとしてくれるために案を言われても嬉しくない、辛いよ。


「……」

「え?!伽羅ちゃんなんで泣いてるの!?」


我慢できなくなった伽羅ちゃんの瞳から涙がどんどん零れ落ちる。その様子に主は「え?え?え?どうしよう!?」と言いながら凄い慌てっぷりを見せた。元凶は主なんだけど、多分自覚ないんだろうなー。慌ていた主は傍にあったちり紙を伽羅ちゃんへと渡す。伽羅ちゃんの背中をあやす様に擦りながら「何か食べる?お菓子とかあるよ?」と言っている。え、そこでお菓子なの主!?すると伽羅ちゃんは頷いて「たべる」と言う。伽羅ちゃん、お菓子に釣られちゃったよ……。伽羅ちゃんは主に連れられて鍛刀部屋を後にする。鍛刀部屋に一人取り残された僕。伽羅ちゃんが意外にも繊細であるということ、そして甘い物が好物ということが発覚。伽羅ちゃんはしっかり主に餌付けされていた。更に伽羅ちゃんは「慣れ合うつもりはない」という発言をしなくなったみたいだよ。
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