うちの本丸

「……本丸が狭い」


蝉が騒がしく鳴く季節。7月といえどジリジリと肌を焦がすような暑さに毎日茹だっていた。そんな中、私はふとあることに気が付く。刀剣男士たちも着実に迎え入れているこの本丸だが、一つだけ問題があった。それは先程私が呟いた、本丸の広さだ。刀剣男士たちが着実に集まっているということは、即ち本丸内の部屋やなんらのスペースが徐々に無くなってきていることを指す。そろそろこの本丸も大幅に改装しなければならない時が来たか。


「主、どうしたんだい?」

「いやぁー、この本丸も手狭になってきたなーって思ってて、そろそろ改装しないといけないなって」


私の独り言が聞こえていたらしく、疑問に思った今日の近侍である髭切さんが問い掛けてきた。


「そう言えば、そうかもしれないね。僕はこの本丸に来てまだ日が浅いけれど、この人数で厠や洗面所が一つしかないのは不便だなぁって思っていたよ」

「ですよねぇー」


この本丸の空き部屋も一つ、二つしかない状態で、これは本格的に改築しないとヤバい。それに洗面所なんて時間帯次第では大混雑するし、厠なんて一人がお腹壊して閉じこもっていたらアウト。50名近くの刀剣男士がいるのだから当たり前だが、これは改装する選択肢しかない。


「と、言うことで本丸を大改築するよ!」


居間にみんなを集めてもらって本丸改装宣言をした私。みんなが口々に「おー」とか「やっと改築されるのか」とか言ってたりしているのが聞こえてくる。言ってくれたら改築したのになぁと思いながら、みんな私が乗り気になるまで待っていたのかと思うと罪悪感が込み上げる。これは早めに改築してあげようそうしよう。と言っても改築は直ぐに済んだりする。改築用の式神くんが居るらしく、その子たちがちょちょいのちょいってな感じで直ぐに済ましてくれる。大体30分もあれば終わるらしく、本丸を大幅に広げる予定なので、敷地も広げてもらえるそうな。そこまでしてもらって使用時間30分とか式神ってすっげぇーと感動していたら、あっという間に完成していた。やっぱり凄い、式神パワー。あれ、何かめちゃめちゃ広くなってません?!思った以上に広くなっていて唖然としたが、それでも新しくなった本丸に私を含め、みんな大はしゃぎ。なんということでしょう、一つしかかった洗面所と厠は、匠の手によって洗面所、厠も四つにも増え、お風呂も前よりももっと大きくなっていて、厨も広くなっています。などと何処ぞのビフォーアフターのナレーションのような真似事をしてしまう。
他に居間もでかくなっており、居間と言うよりも大広間になった感じがする。あ、私の部屋も大きくなってる!しかも何故か御神木まで前より大きくなったような気がする。改築されて御神木までデカくなるって式神くんたちは一体全体何をしたんだろうか。深く考えてはいけない気がして、そこで考えるのをやめる。

広く生まれ変わった本丸を堪能し、愈々一大イベントの部屋割りをすることに。粟田口は言わずもながら大部屋が決定している。あとは好きな部屋を好きなように使ってもらうシステムしており、グループわけも各々に任せている。因みにグループは三条、伊達組、左文字三兄弟、虎徹、来派、沖田組、土方組、国広、太郎次郎、源氏兄弟と別れ、その他の刀たちは一人部屋となった。


「今日は本丸改装記念に宴を開こうか」

「うんうん、良いね。新しくなった厨で、目一杯美味しい料理を作っちゃうね」


私の提案から、燭台切さんが何時も以上に張り切りながら言う。燭台切さんも厨が広くなったことが嬉しいようで、そんな今日は何の料理が出るかなぁと凄く楽しみだ。その晩の本丸改装記念の宴は、宴会のようなどんちゃん騒ぎであった。
7/33ページ
スキ