うちの本丸
ある昼下がり。昼餉を食べ終わったので、昼餉前に伝えていた池田屋攻略部隊を発表する。今回の池田屋攻略は全面的に短刀たち構成の部隊にすることに決めたと告げる。
「主、俺もその部隊に入れて」
珍しく蛍丸くんが、編成に加わりたいと申し出てきた。蛍丸くんは私からお願いして出陣してもらうことはあっても、自ら申し出たことはなかった。けれど、蛍丸くんがこうして言ってくるわけを私は分かっている。三条大橋に稀にドロップするという来派の明石国行。彼が一番の要因だろう。しかし、池田屋は夜戦室内戦という特殊戦闘形式で、大太刀の彼にはとても分が悪い。太刀以降の刀種は弱体化することになる。そんな中で昼戦最強の蛍丸くんが出てしまえば中傷、運が悪ければ重傷まで追い詰められるだろう。蛍丸くんが池田屋に出陣したい気持ちは分かるが、最初から分が悪い戦場に無理して出陣なんてさせたくない。
「駄目だよ蛍丸くん。君を池田屋攻略の部隊に組み込むことは出来ない」
「どうして!俺の練度は最大値なんだよ?!」
「確かに今の蛍丸くんなら厚樫山なんて楽勝だろうね」
「だったら!」
「だからこそ池田屋には連れていけないよ」
「っ……主なんて、大っ嫌いだ!!」
吐き捨てるように言った蛍丸くんは居間から走って出て行ってしまう。ど、どうしよう蛍丸くんに大っ嫌いって言われちゃった……。普通にショック過ぎてショック死しそうなんだけど。みんなが心配そうに私の様子を伺っているようで、声をかけようか掛けまいか悩んでいるようだ。その証拠に清光くんが「主……」って言いながらオロオロしている。
「蛍丸くんに大っ嫌いって言われた……」
ズーンという効果音が付きそうなほど、分かりやすく沈んでいる私。大っ嫌いなんて言われたら普通誰でも傷付くよ。しかも親しい人物に言われると尚更応える。
「主さん……俺蛍の所に行ってくる!」
さっきまで黙って聞いていた愛染くん。けれど、蛍丸くんの所へ向かうと言ってから立ち上がり、蛍丸くんが走った方向へと愛染くんも走り去っていく。取り残された感が否めないんですけど、私も追い掛けた方がいい?いやでも、私が行ったとしても事態を悪化させることになりそうだからここは愛染くんに任せるとしよう。
「珍しいね。いつも二つ返事で了承する主が、今回は駄目って否定するなんて」
燭台切さんが珍しそうに問い掛けてくる。いつも私は刀剣男士たちの好きなようにしてもらっているからこそ、余計に物珍しかったのだろう。
「私だって出来ることなら蛍丸くんの出陣したいっていうお願いを聞いて上げたい気持ちで一杯一杯だよ?それでも池田屋、下手打てば重傷に成りかねない所へ蛍丸くんを出陣させたくないんだよ」
「主の想い、蛍丸くんにも伝わるといいね」
「そうだね……はぁああ、大っ嫌いか〜」
「あ、主?!」
私の中で大っ嫌いは相当応えているので、思い出す度に勝手に傷付いている。今も思い出してしまって、勝手に傷付いて項垂れていた。
主さんに出陣するのを否定された蛍の後を追って、自分たちの部屋の前まで来ていた。俺たち二振りには少しだけ広いこの部屋は、主さんが何れ国行をお迎えするからと言って少し広めの部屋を用意してくれたのだ。それに俺は主さんがどうして蛍の出陣を頑なに了承しなかった理由を知っている。俺たちの主さんは本当に優しい人だ。
「蛍ー、入るぞ……」
「……国俊、どうして俺の後を追いかけてきたの」
この部屋に入るや否や怖い顔で睨んでくる蛍。そうだよな、自分の手で国行を迎えたいって気持ち俺には分かる。俺が蛍の立場だったら蛍と同じようなことになっていただろう。
「お前、どうして主さんがお前の出陣を否定したか分かるか?」
「え、そんなの俺が嫌いだからに決まってるからでしょ」
やはり蛍は誤解をしているようだ。主さんがそんな理由で自分たちの出陣を決める人じゃないし、それにこの本丸のみんなを大切にしている主さんが、蛍を嫌いになるはずがない。
「……お前は何にも分かってないな。」
「な!……それじゃあ国俊には分かってるっていうの!?」
「いいか、主さんがお前の出陣を頑なに否定しているのは、お前の身体を案じてなんだよ。あの人のことだから、本当は蛍を出陣させたい気持ちで一杯一杯のはずだ。それでもさせないのはそういうことなんだよ」
「……」
「その証拠に、俺は今回の池田屋攻略に外されているけど、主さんが俺たちの為に国行を迎えるまで三条大橋を周回するから、その時は俺に部隊長を任せたいって、蛍の分まで頑張って欲しいって言ってたんだぞ?」
「そ、そんな……」
「主さんに直接聞いてみろよ。あの人お前に大っ嫌いって言われて、すっげぇー落ち込んでたからな。蛍も言い過ぎたって思ってるんだろ?」
「……う、うん」
蹲っていた蛍を立たせて、俺たちの部屋を後にする。主さんがいる居間へと歩を進めた。
数分後、とぼとぼと蛍丸くんを連れて愛染くんが帰ってきた。愛染くんが解決してくれたみたいで、今度何か美味しいものでも買って一緒に食べようと自分の中で決意する。そんなことを考えていると、私の目の前まで愛染くんが蛍丸くんを連れてきていた。愛染くんが蛍丸くんに「ほら」と少し蛍丸くんの肩を押して何やら促しているみたいだ。
「あ、主……国俊から全部話しは聞いたよ。だからさっきはその、大っ嫌いって言っちゃってごめんなさい」
「蛍丸くん……」
「それでも俺は池田屋に出陣したい。今度は主さんの気持ちも変わった上でもう一度言うよ、俺を池田屋攻略部隊に入れて欲しい」
「……参ったな、こんなに言われたら入れて上げたくなっちゃうじゃん。だけど、池田屋攻略部隊に蛍丸くんは入れてあげられないよ。やっぱり心配だからね」
「いいよ、そう言われるって分かってたし」
「主って変な所で頑固だよね」と笑いながらいう蛍丸くん。こうして私と蛍丸くんの仲違いは終結した。何はともあれ一件落着かな?だけど頑固は一言余計だよ!
「主、俺もその部隊に入れて」
珍しく蛍丸くんが、編成に加わりたいと申し出てきた。蛍丸くんは私からお願いして出陣してもらうことはあっても、自ら申し出たことはなかった。けれど、蛍丸くんがこうして言ってくるわけを私は分かっている。三条大橋に稀にドロップするという来派の明石国行。彼が一番の要因だろう。しかし、池田屋は夜戦室内戦という特殊戦闘形式で、大太刀の彼にはとても分が悪い。太刀以降の刀種は弱体化することになる。そんな中で昼戦最強の蛍丸くんが出てしまえば中傷、運が悪ければ重傷まで追い詰められるだろう。蛍丸くんが池田屋に出陣したい気持ちは分かるが、最初から分が悪い戦場に無理して出陣なんてさせたくない。
「駄目だよ蛍丸くん。君を池田屋攻略の部隊に組み込むことは出来ない」
「どうして!俺の練度は最大値なんだよ?!」
「確かに今の蛍丸くんなら厚樫山なんて楽勝だろうね」
「だったら!」
「だからこそ池田屋には連れていけないよ」
「っ……主なんて、大っ嫌いだ!!」
吐き捨てるように言った蛍丸くんは居間から走って出て行ってしまう。ど、どうしよう蛍丸くんに大っ嫌いって言われちゃった……。普通にショック過ぎてショック死しそうなんだけど。みんなが心配そうに私の様子を伺っているようで、声をかけようか掛けまいか悩んでいるようだ。その証拠に清光くんが「主……」って言いながらオロオロしている。
「蛍丸くんに大っ嫌いって言われた……」
ズーンという効果音が付きそうなほど、分かりやすく沈んでいる私。大っ嫌いなんて言われたら普通誰でも傷付くよ。しかも親しい人物に言われると尚更応える。
「主さん……俺蛍の所に行ってくる!」
さっきまで黙って聞いていた愛染くん。けれど、蛍丸くんの所へ向かうと言ってから立ち上がり、蛍丸くんが走った方向へと愛染くんも走り去っていく。取り残された感が否めないんですけど、私も追い掛けた方がいい?いやでも、私が行ったとしても事態を悪化させることになりそうだからここは愛染くんに任せるとしよう。
「珍しいね。いつも二つ返事で了承する主が、今回は駄目って否定するなんて」
燭台切さんが珍しそうに問い掛けてくる。いつも私は刀剣男士たちの好きなようにしてもらっているからこそ、余計に物珍しかったのだろう。
「私だって出来ることなら蛍丸くんの出陣したいっていうお願いを聞いて上げたい気持ちで一杯一杯だよ?それでも池田屋、下手打てば重傷に成りかねない所へ蛍丸くんを出陣させたくないんだよ」
「主の想い、蛍丸くんにも伝わるといいね」
「そうだね……はぁああ、大っ嫌いか〜」
「あ、主?!」
私の中で大っ嫌いは相当応えているので、思い出す度に勝手に傷付いている。今も思い出してしまって、勝手に傷付いて項垂れていた。
主さんに出陣するのを否定された蛍の後を追って、自分たちの部屋の前まで来ていた。俺たち二振りには少しだけ広いこの部屋は、主さんが何れ国行をお迎えするからと言って少し広めの部屋を用意してくれたのだ。それに俺は主さんがどうして蛍の出陣を頑なに了承しなかった理由を知っている。俺たちの主さんは本当に優しい人だ。
「蛍ー、入るぞ……」
「……国俊、どうして俺の後を追いかけてきたの」
この部屋に入るや否や怖い顔で睨んでくる蛍。そうだよな、自分の手で国行を迎えたいって気持ち俺には分かる。俺が蛍の立場だったら蛍と同じようなことになっていただろう。
「お前、どうして主さんがお前の出陣を否定したか分かるか?」
「え、そんなの俺が嫌いだからに決まってるからでしょ」
やはり蛍は誤解をしているようだ。主さんがそんな理由で自分たちの出陣を決める人じゃないし、それにこの本丸のみんなを大切にしている主さんが、蛍を嫌いになるはずがない。
「……お前は何にも分かってないな。」
「な!……それじゃあ国俊には分かってるっていうの!?」
「いいか、主さんがお前の出陣を頑なに否定しているのは、お前の身体を案じてなんだよ。あの人のことだから、本当は蛍を出陣させたい気持ちで一杯一杯のはずだ。それでもさせないのはそういうことなんだよ」
「……」
「その証拠に、俺は今回の池田屋攻略に外されているけど、主さんが俺たちの為に国行を迎えるまで三条大橋を周回するから、その時は俺に部隊長を任せたいって、蛍の分まで頑張って欲しいって言ってたんだぞ?」
「そ、そんな……」
「主さんに直接聞いてみろよ。あの人お前に大っ嫌いって言われて、すっげぇー落ち込んでたからな。蛍も言い過ぎたって思ってるんだろ?」
「……う、うん」
蹲っていた蛍を立たせて、俺たちの部屋を後にする。主さんがいる居間へと歩を進めた。
数分後、とぼとぼと蛍丸くんを連れて愛染くんが帰ってきた。愛染くんが解決してくれたみたいで、今度何か美味しいものでも買って一緒に食べようと自分の中で決意する。そんなことを考えていると、私の目の前まで愛染くんが蛍丸くんを連れてきていた。愛染くんが蛍丸くんに「ほら」と少し蛍丸くんの肩を押して何やら促しているみたいだ。
「あ、主……国俊から全部話しは聞いたよ。だからさっきはその、大っ嫌いって言っちゃってごめんなさい」
「蛍丸くん……」
「それでも俺は池田屋に出陣したい。今度は主さんの気持ちも変わった上でもう一度言うよ、俺を池田屋攻略部隊に入れて欲しい」
「……参ったな、こんなに言われたら入れて上げたくなっちゃうじゃん。だけど、池田屋攻略部隊に蛍丸くんは入れてあげられないよ。やっぱり心配だからね」
「いいよ、そう言われるって分かってたし」
「主って変な所で頑固だよね」と笑いながらいう蛍丸くん。こうして私と蛍丸くんの仲違いは終結した。何はともあれ一件落着かな?だけど頑固は一言余計だよ!