うちの本丸

連隊戦も一段落して、無事に新刀剣男士である日向くんと池田屋一階を何度周回しても来てくれなかった日本号さんをお迎えすることが出来た。そして今日は年末で、去年の今頃は審神者業を始めたばかりでそれ所ではなかったため、年末らしいことを全く出来なくて、今年こそは!と意気込み年末の大イベントの一つ大掃除をみんなで取り掛かることに。


「主、一人で自室を片付けるのは大変だろう。俺が手伝おう」

「なっ!き、貴様!何を勝手なことを!主の自室を掃除するのは俺の役目だ!」


自室を片付けようとしていたら巴さんと長谷部さんがいきなり登場したかと思えば、何やら言い合いが始まった。この2振りは初対面から言い合いというか、私が関係したよく分からない言い争いが絶えない。今回もまた私の自室を片付けるのはどっちなのかといういがみ合いが勃発しようとしている。お互い本能的に苦手意識があるのだろう、似ている2人は喧嘩するってどっかのタイトルにもあったように巴さんと長谷部さんは、どこかしら似ている部分があるということなのだろう。う〜ん、ここで巴さんと長谷部さんとで一緒に片付けをした所でまた言い合いになる予想しか出来ないので、2振りのご好意は大変嬉しい申し出ではあるけれど、お断りするしかない。


「巴さんと長谷部さんの申し出は有難いけど、一人で出来るから大丈夫だよー。ありがとう、ごめんね」


私がそう言うとあからさまにしょんぼりとする2振り。ゔゔ……凄い罪悪感が一気に押し寄せてくるが、押し潰されそうになりながらも必死に耐える。不甲斐ない主ですまぬぅう。後で2振りには個別でお菓子を一緒に食べよう!あとは一度双方の話を聞いた上でお互いに話をして和解をしてもらおう、よしそうしよう!そう決心しながら、私は自室の片付けを始めることにした。本丸大改造!劇的ビフォーアフターを遂げてから私の執務室兼自室が広くなってしまっているので、片付けるにも一苦労で、今になって巴さんと長谷部さんの有難い申し出を受ければよかったなと後悔していたが、後悔先に立たず。それに巴さんと長谷部さんが手伝ってくれていたとしても、巴さんと長谷部さんは言い合いの喧嘩が勃発して大掃除も進まなかっただろうなーと考えながらも手をやすめることなく大掃除を進めていく。


「主さーん……って、まだ終わってなかったんですか?」


只管大掃除をしていたら、堀川くんがひょっこりと現れた。どうやら私の様子を見に来たようだ。というか、さっきから思ってたけど、なんか広間がある方からキャっキャっと楽しそうな声が微かに聞こえてきていて、楽しそうだなぁーっと思っていたら集中力が途中途中で途切れてしまっていた。早く終わらそうと焦れば焦るほど、「あ゙ー集中出来ない!!」って感じで集中出来ずにいる。


「いやぁー、広くて中々終わらなくてね」

「執務室兼自室だから、他の部屋よりも広いですからね」


「良かったら僕も手伝いましょうか?」と申し出てくれる堀川くんが、今私には菩薩か如来、天使のように見える。心做しか堀川くんの背後に後光が差しているような錯覚に陥ってしまう。それほど私は堀川くんの申し出に感動し、歓喜しているのだ。ありがとう堀川くん、君は本当に優しい子だな!私は堀川くんの言葉に甘えて、手伝ってもらうことにした。昼餉時に初めた大掃除も、何とか夕餉の時刻には間に合いそうな時間帯に終わった。私一人だったら夕餉の時間には間に合わなかっただろう。本当に堀川くんには感謝してもし切れない。


「堀川くんありがとう!君のおかげでなんとか今日中に終わったよー!」

「いえいえ、お役に立てたみたいで良かったです!それにみんな主さんを待ってるみたいなので、早く広間に向かいましょう!」

「ん?」


理解が追いつかない状態で堀川くんに広間へと急かされた私は、深く考えることも出来ずに広間へと向かう。広間まで来ると襖の前へと促され、堀川くんには「主さんからお先にどうぞ」と言われたので訳も分からず、襖へと手をかけた。襖を開けた瞬間、パンパーンという破裂音が室内に鳴り響く。いきなりのことで思考が追いつかない、というか追いつけない。え?え?え?何これどうしたこれ?みんなが持っているのはクラッカーで、そこで初めて私は先程の破裂音がクラッカーの音だったのだと理解することが出来た。


「あーあ、主驚いちゃって放心状態じゃん」

「おお!いつもは驚きを与えても全く動じない主が驚いているな!くらっかーとやらで歓迎する作戦は大成功だな!」


清光くんと鶴丸さんの会話で放心状態から開放される。やはりこのクラッカーの発案者は鶴丸さんだったか。どこでクラッカーなんて代物を手に入れたんだ、十中八九入手経路は万屋なんだろうけれど。


「……これは一体?」

「え?!主君、気付いていらっしゃらなかったのですか?」

「今日は主さまが審神者になられて一周年ですよ?」


前田くんと平野くんが大層驚いた、更に当たり前のことかのように今日が一周年記念の日だと告げれる。嗚呼、そうか今日で私は審神者になって一周年記念なのか。私の反応から察したのか清光くんに「何でこんな大事なこと忘れてんの?」と言われる始末である。どこぞの渡る世間の人ではないが、だってしょうがないじゃないか。ここ最近大阪城やら連隊戦やらでてんてこ舞いだったからか、すっかり記憶からすっぽ抜けてしまっていたのだ。


「まあまあ、細かいことは気にするな。折角の目出度い席なのだから」

「うむ、鶯丸の言う通りだぞ。こうして皆で主を祝えるのだからな、はっはっはっ」


流石おじいちゃんコンビ。ちっちゃい事は気にするな♪精神のお陰で何とか私は一周年記念を忘れていたことは咎められ?なかった。私の審神者一周年記念の宴は盛大に祝われ、広間の飾り付けも豪勢で手が凝っているものばかりが多い。いつの間にと思ったが、昼餉後から今の今まで自室の大掃除に勤しんでいたので、その時かと思いつつそれでも前から計画してくれていたんだなと言うことは飾り付けや、みんなの雰囲気で察することが出来たので、私は本当に恵まれた幸せ者だなと深く実感した日になった。
23/33ページ
スキ