軌跡
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「やぁ、うたちゃん」
ガチャリと音を立てて入ってきた人物に目を見開く。その人はまぎれもなく王様だった。私をここに閉じ込めて、監視させた人物である彼が自ら動くなんて、なにかと意味があるはずだ、と緊張が走る。
王様と言うのが本当なら、彼の一言で私は処刑されるし、解放もされる。
目の前にいる彼は、現状を知っていながらも、この生活を止めさせてくれなかった
それだけで十分だ。私がいかに異端を表現しているのか、というあちら側の様子が伺える。
ニコリと笑う彼。その笑顔に、何かが隠されてるのではないかと疑っている私がいた。王様はふと、私を見て驚いたように目を丸くした後、目を細めた。
「••••••君にはつらい思いをさせたな、すまなかった」
「••••••ッ」
さすがに謝罪を無視するわけにはいかず、ゆっくり、こくり、と首だけを動かす。私が反応を見せると彼は満足そうに笑った。
「でもそれも今日までだ!」
「!?」
ぽかんと、開いた口が塞がらない。え、待って、待って。今日まで?なんの証拠も出てないのに?なんの疑いも、晴れてないのに•••!このまま、し---なんて、絶対いや
「君に是非とも会ってもらいたい人がいるんだ。会ってくれるとありがたいんだが••••••」
「あって ほしいひと•••?」
「!!嗚呼、入ってきてくれ」
思わず声が漏れる。その声はまるで自分の声じゃないくらいかすれていて、裏返っていた。
王様の言葉を合図に、鉄格子の向こう側の扉が開き、誰かが入ってきた。
「•••••!」
無意識に体がびくりと跳ねた。ジャーファルさんだ。彼のあの、私の全てを否定する目を見てから、顔が見れない。すでに無意識のうちに体が拒否している。それともう一人、見たことのない人••••••お、女の人?が入ってきた。え、お、女の人だ
「紹介しよう!彼女はヤムライハ。魔道士だ」
「ま、ど•••?」
まどうしって なに?
ヤムライハ、と紹介された彼女はナイスボディをしていて、胸の間に長い髪を挟むようにして流していた。耳であろう所からは巻き貝のようなものが。そして縦に長い帽子•••まるで魔女を絵に書いたような帽子をかぶっていた。
「我々と一緒に、真実を見ようじゃないか!」
がしゃん、と音を立てて足枷だけが外された。ぎぃっと鉄格子の入り口を開けて、ジャーファルさんがこちらに向かってくる。反射的に体は強張り、ジャーファルさんの方を見上げてしまった。
「こちらへ」
「ひっ•••」
なんの凹凸のない、声のトーンに背筋が凍る。足が軽くなったのに、一向に動けなかった
「こらジャーファル。そんなに警戒してくれるなよ」
「••••••失礼いたしました」
ジャーファルさんは、王様に言われ一度目を閉じ、両手を着ていた袖口に隠すと、すっと目を開けた。
「大人しく言うことを聞いていれば何も危害は加えません」
ジャーファルさんは危害は加えないと言った。なら、なら大丈夫かな。それにこれ以上留まっていると、きっと今度こそ、自分に未来はないだろう。そんな気がした。
ぐっと足に力を入れて、立ち上が----ったつもりだった。がくんっと膝が曲がった。自分が意識的にやったのではない。ずるりと体勢は崩れ、ジャラリと手錠が音を立てた。
「あ、あれ•••」
「っ!」
「す、すみま、せ、お、おかしい、な」
転んでしまったため、座った大勢から立つために、ずりずりと足を引きずりますながら、平行に立てる。
「あ、は。す、すみ、ま、せ」
ぐっと足に力を入れて、精一杯地面を押した。ーーーーでも、再び視界が回る。ズシャリ、ジャラッとやけに静かな部屋に響き渡った。
「な•••で?す、すみませっ、ッ!」
ガシャン
ジャラジャラ
ズシャッ
立ち上がろうとしては転び、立って転び•••。数秒の間で少女の体はぼろぼろになった。膝の痂は捲れてしまい、また幾度にも渡る患部への衝撃に、色は、青く、黒みを帯び始めていた。
「や、た、立てます、たてる、たてるからっ•••」
どうか殺さないで
「っ!••••••王よ、」
思わずこぼれた、魔道士の言葉は、鎖の音に紛れて、誰にも届かなかった
目の前で繰り広げられる少女の行動は「悲惨」だった。
おかしい、おかしいなと言いながら何度も立ち上がろうとする姿はなんとも惨めで、加えて「すみません」と口走り、必死に立とうとする姿に、その場にいた全員が罪悪感を覚えていた
fin