軌跡
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──王宮内、とある一室にて
「……随分と上質な布だな」
「そうですね」
「王サマ、その娘"どこからの"なんです?」
「"ニホン"と言っていた」
「聞いたことないや」
「だな」
とある一室では、昨日のことを思い出しながら話し合いをしていた。その内容は、捕まえた刺客のことだ
昨日その場に居合わせた長髪の男ことシンドバットと、赤髪の目元が特徴的な人ことマスルールが、唸りながら話をしていた。そこに銀色の彼の姿はない
「シャルルカンもピスティも聞いたことがないか……」
「すみません王サマ……」
シンドバットとマスルールの他に2名。褐色肌の男、シャルルカン。金髪で小柄の女の子、ピスティがいた
「いや、いい。しかし……存在するかしないかすらわからない国か。実に興味深い話じゃあないか!」
きらきらと目を輝かせる王に、部下たちは一瞬吹き出しそうになるが、もしかしたら鬼のような顔をした銀色の彼が戻ってくるかもしれないので、一応耐えておく
「そういや、王サマ。なんで刺客だってわかったんすか?」
「そうだな……マスルールがね、」
「はぁ……」
「"雨のにおい"がする。と言ったんだ」
「!?」
「え、でもシンドリア周辺ここ一週間は雨なんて……」
「そうだ」
「ッ」
一瞬にしてピリッとした雰囲気へと変わる
転送魔法か?いやだとしても結界に引っかからないなんてことは100%ありえない。しかもここ数日雨など降っていないのに、さっきまで雨が降っていたかのような姿だったというのだ
彼女が来ていた服は大量の水分が含まれていて、しかもまだ新しい匂いだと、マスルールは言う。海から来たのではないかという案も出たが、匂いと、まずあの絶壁をあんな華奢な少女が、しかも無傷で泳ぎ切るなんてありえない話だった
解決どころか……なおも、謎が深まるばかりだった
「だからまず俺たちはあの子の存在を調べなければいけない」
「な、なるほど…」
だから一時的に身柄を拘束してるのか、と誰かが呟く
「適任なのがヤムなんだけど、そのヤムがいま出張でいないってところねぇ」
「そういうことだ」
「……ねぇ王サマ、私じゃダメなの?」
「「……」」
「いや、ピスティは……」
何かを言いかけたところで、部屋のドアが荒々しく、ばんっと開けられた
「ピスティはダメです」
「じゃ、ジャーファルさん……」
「そ、その様子じゃあ」
「……今回もダメです」
「そうか。こちらも一向に進まなかったよ」
「……そうですか」
「もう!ジャーファルさんなんでダメなんですか?もしかしたら女の子同士だし、話せることも──」
「シャルルカン、次の定刻……。お願いします。見張り組の隊長には声をかけてあります」
「お、おう。だ、大丈夫っすか?ジャーファルさ──」
「ケチー」と頬を膨らませるピスティを横目に、ジャーファルはシャルルカンを見た。シャルルカンもそれに気が付き、何かを察した
ジャーファルは、先ほどまで話の中心にいた人物のもとへいっていた。そう、尋問──否、拷問をしていたのだ。しかし彼女から出るのは嗚咽と、吐瀉物と、「どこ」やら「なんで」やらそういったものばかりだった
いくらジャーファルといえど、これでは埒が明かないと腹も立ってくる。むしろ精神的に削られてきているような気がするのだ。シロかクロかなんてわからない、もしかしたら、無実かもしれないし、本当にスパイで未だに猫をかぶっているだけかもしれない。……本当のことを証明する術を彼らは持ち合わせていなかった
なぜピスティがダメなのか
そんな状況で、ピスティに行かせてしまえば、もしかしたら逃げられてしまう可能性があると判断したためだ
まだ彼らは気が付かない、もしここでピスティに行かせていればあんなに複雑なことにならなかっただろうと……
でも仕方がないことである。気が付くのはいつも事が起きてからなのだから
fin