軌跡
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朝方に、ヤムライハ、ピスティ、マスルール、(マスルールの後ろにシャルルカン)、シンそして私が例の見送りに出る。ヤムライハとピスティは少し寂しそうにしていた。
船に乗るときに、深々とお辞儀をし、「ありがとうございました」とお礼を言った少女に、迷いはなく、振り返らないその背中を見送った──。
******
「……何も解決はしなかったか、」
結局何も解決しなかったと、ジャーファルは嘆く。"ニホン"についても何かが分かることもなかった。彼女の電気を発生させる体質についてもだ。
はぁとため息をつくも、返ってくる答えはない。我々は最後まで、拒絶されていた。すでに一線を引かれていたのだ。心を開いて、全てを吐くなどという、そんなことは起こり得なかった。
「どうだ?彼女と話をしてみて」
「……シン。やはり見ていましたか」
「当然だろ?部下を見守るのが俺の役目だからな!」
「仕事しろ仕事」
少し睨みを利かせれば少し焦ったように、すまんと謝ってくる。しかし、今はその話をしたいのではない。はぁとため息をついてから、話を戻す。
「で、彼女が我々の味方になることはあるのですか?」
「今は分からん。だがいつかはなるさ。あの体質は、もしもの時に役に立つ」
「ですが……」
「随分と嫌われてしまったがな」
「……ッ」
あんた知ってていかせたな、とじろりとシンを睨むも、否定はできない。
「だが、足取りは掴めている」
ニヤリと笑うシンドバットに、ジャーファルはふっと笑った。
「あなたらしいですね、本当に。あの時交易に出てる二人を集めなかったのはこの為ですか」
「なんのことだかな。俺はただ、交易に出ている二人の存在を、彼女に知らせる必要がないと判断しただけだ」
「我が王ながら侮れませんね。ですが……どこまでもお供します」
──道を示せ。
前を向いて、踏み外さないように進むために。大いなる流れが、この世界に、新たに加わろうとしている。大きな分岐を乗り越えたからこそ、彼女は新しい希望を自分の手で見出すことができるだろう。
ザザザザ、と波をかき分けて、船が進む。
「で、嬢ちゃんはどこまでいくんだ?」
「ヒナさん」
「ははは、ヒナさんか。なんだか呼びなれてないから新鮮だな」
「すみません。……えっと、ヒナ、ホホさん?」
「呼びにくいならヒナさんのままでいいぜ」
「わっ、」
大きな巨体なのに、力加減が兆度よく、わしゃわしゃと頭を撫でられる。あまりの気持ちよさに片目を細めた。
ヒナさんというのは、シンドバットさんの言う、でかい人で。ヒナホホさんという。なんだかお父さんのような寛大さであり、ほっとした。
「最後につく…えっと、国ってどこですか?」
「そうだな…、確かオアシス都市のウータンだったな」
「ウータン……」
「なんだ?そこがいいのか?」
最後、ということはきっとシンドリア王国から少し距離のあるところであろう。自然と、最後と口にしていたことから、無意識に離れたいと思っているのだろう。
「はい、」
ビィビィと幾千にもわたるたくさんの生命が、道を照らす。折れるかと思われた彼女の魂は、再びまっすぐに伸び始めた。
きっと、これから彼女は生きるために生きようとするだろう。
彼女の選択は決して間違っていない。
そうなる運命なのだから。この先で、いろんな人に出会うだろう。そして、見出す。自分の生きる道を。
だから今は、どうか踏み外さないよう、強く生きてくれと、世界は彼女に語りかけた。
「……この気配は何かしらねぇ」
どうか、クスクスと笑う組織に飲み込まれないように。
そしてこの世界の、3人のマギ達は気が付く。どこからか加わった、不思議な生命体に。興味が湧くもの、危険視するもの、そして……
「ホント、生きる力は壮大だねぇ……」
既に、その存在を知っているものがいた。
fin
~第一章 完~