軌跡
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ザーと降りしきる雨に、自分の口からは「はぁ」と一言
『傘持ってくるの忘れてた。朝は覚えてたんだけどなぁ』
まぁよくあることだし、ちゃっちゃと帰ってしまえばいいやと私は思った
00、その日は雨だった
*******
すんっと鼻を掠める雨のにおいに、憂鬱になりながら早足で歩く
「うたー!」
『!』
ばしゃっと音を立てて走ってきたのは友人たち。いつもバカみたいに、ともにはしゃぎ、学んでいる仲間だ
ああ。なんで私はさっきため息なんぞ吐いたんだろう。今日は恵みの雨が降っているというのに
しっかり者の友達一人だけが、こんな日に傘を常備してて。呆れたような、ごみを見るような目で笑ってくる。でもちゃんと傘を差しだしてくれているという優しさに心が温まる
それに思春期の女の子が何人も入るのは無理な話。だけど、皆でぎゅうぎゅうするのも悪くない。
わははは、と響く自分たちの笑い声と罵声に周りのひとごめんなさいと謝罪を入れる
きっと、いや絶対うるさいだろう
こんな公然の目の前で恥ずかしいことをする、なんて心ではわかっているけど、楽しいのに変わりはない
ちらちらとむけられる迷惑そうな視線に、苦笑いをこぼしながらも、やめる気配はない。そのうちご老人の一人に「うるさいよ」って叱咤入れられるまで時間はかからないだろう
カンカンカンと音を立てて、歩道橋の階段を上る
──でも幸せだな
こうして心があったかい人に会えたのって偶然じゃなくて、運命だったのかなって時々思う
そんなこと友達には秘密だけどね
((ほら、うたーおいてくよ!))
濁った泥水に映ってたのは、平凡な日常。そして大好きな人たちの笑顔
水たまりに気が付くことなく、今日も、いつか雨の日もまた、足で踏み消して、前へ歩いて行くんだろうな
「ッ──うた!?」
ガクンッと踏み場がなくなったのを感じて、隣にいたはずの友人が遠ざかっていく。あはは、そんなあわてなくても、階段から滑っただけだよ。大丈夫、死なないと思う
「嘘、やだ、やだ!!まってうた、」
──え?
パーーーッという音に、ようやく気が付く。歩道橋に一台のトラックが突っ込もうとしていた。おそらくこのままいけば……
見えてきたのは懐かしい思い出だけで。本当にくだらなくて、幸せな人生だったなぁって改めて思った。──走馬灯かぁ
"死にたく、ないなぁ"
ビィイ、となにかの音がして。後ろを振り返ってみるとそこには──
いつも通りの風景が、見えてくるはずだったのに
全身が砕けたような音しか、聞こえなかった
終わりの始まり──
終わりは終わりじゃない。新たなる物語への始まりにしかすぎないのだ
私は、やっとスタートラインに立ったのだ
fin…
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