軌跡
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「王よ!」
「!?」
「なんですか騒々しい!」
バァンッとなんと騒々しく、荒々しく扉がひらかれ、ジャーファルが声を上げる。
扉を開けて入ってきたのは、例の少女──うたを背負ったヤムライハだった。きらきらと目を輝かせ、いつもの冷静さはない。王とその側近たちは思わず人物の登場に、真剣な面持ちになった。一体全体、何事だろうと。
「ヤムライハ、なぜここに連れてきたのですか」
「ジャーファルさん、王様!発見です!!見ていただけますか」
「お、おう?」
かなり興奮しているようで、ヤムライハはキラキラと目を輝かせながら、王に近づき、背負っていたうたの、だらりと力の入っていない手を見せつけながら、恐る恐る触れた
──パチッ
「!!」
軽めの音が静かな部屋に響いた。確かに、今の音は電光が走った音である。
「これは……」
「分かりません。ただ魔法ではないことは確かです」
「ふむ……」
「シン、いけません」
「なっ、いいだろジャーファル!」
「ダメです」
俺も試したいと言わんばかりに、少女の腕に手を触れようとするシンドバットだったが、ジャーファルに止められ、子供のように「ケチケチするなよー」とか言っている。
「人と人との間に電気が走るなんて今までなかったことだわ」
「ではヤムライハは、この少女の体質に興味が湧いたと?」
「はい!それに、さっき気がついたのですが……」
再びヤムライハがうたに触れた。しかし、今度は何も起こらず、普通に触ることができた。
「このように、何か条件が揃わないと発生しないみたいなんです」
「……はぁ、」
ジャーファルは一つため息をはき、ヤムライハを見る。「いいですか、」と何かを言おうとした瞬間、シンドバットが急に、ガタッと音を立てて立ち上がった。……嫌な予感がするとジャーファルは顔を引きつらせる。
「なんて未知な体質だ!こんなこと今までにないな……。ならその条件をうたが持っているわけか……なるほど実に興味深い」
「あんたねぇ……」
懲りないな、とため息を吐いたジャーファル。もうあの日を忘れたのかと言いたいようだ。
「俺は別にこの国にいてもらっても構わないんだがな」
「!」
不意ににこりと笑うシンドバットにジャーファルは言葉に詰まる。一時はとても疑ったが、真実はただの子供で、何かに巻き込まれたといえる女の子なのだ。正体があやふやなところや、他にも不審な点が多いため、近くにおいて監視しておきたいのもまた事実だが。
「……しかし彼女がそれを拒んだのでしょう。なぜ許可したのです?」
許可さえしなければ、言いたげな口ぶりにシンドバットは再び笑みを深くする。この笑みをする時のシンドバットは、まさしく一国を持つ王様そのものである。
「きっとまた戻ってくるさ」
「……いつもの勘ですか」
「いつもの勘だ」
ニカッと歯を見せて笑うシンドバットに、ジャーファルはまたため息をついた。今日も労苦が募っていくジャーファルだった。
「で、ヤムライハ。ピスティが迎えにいきませんでした?」
「はっ!」
「……その様子だと置いてきたようですね」
「す、すみません」
「はぁ……。今すぐにでも行ってきなさい。それにヤムライハ。あなた少しひどい恰好してますよ」
「ッ!!!」
走ってきたのだから、帽子は少しずれ、髪の毛はぼさぼさしていた。指摘されたヤムライハは少し焦ったように、身なりを整えた。
ジャーファルは何回目かのため息をはいた。
fin
(ところで……。なぜ彼女は気絶してるのです?)
(う。わ、私が勢いよく振り回してしまって……すみませんジャーファルさん)
(はぁ……)