軌跡
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「──そう、これが魔法よ」
「っすごいですね……!」
ふわふわと水が個室に浮かんでいる。その現象は明らかに非科学的で。この世界は、魔法というものが存在する世界だと知る。
こちらの世界は、まさか死後の世界かなと思ったが、死後にしては感触がリアルすぎるし、身の危険だって感じるからそうではないと仮説ができる。
「さっきも説明したけど、ルフという生命体に命令式をつくることによって魔法ができるの」
「ルフ……」
「ええ。そんなに珍しいかしら?」
「……はい」
ヤムライハさんが、夕ご飯を持って個室へきてくれて、私の話相手となってくれる。ひょんんなことからルフの話へとなり、魔法の話へと発展した。あまりにもすごいことに、私はすごく興奮したし、魔法についていろいろ知りたくなった。あまりにも新鮮な話ばかりでいろいろ質問していたら、ヤムライハさんは嬉しそうに答えながらも、「珍しい?」と聞いてきた。
「私の…、国、には魔法がないんです」
「うたちゃんの、国……確か"ニホン"、って言ったわよね」
どうしてヤムライハさんが知ってるんだろうと思ったが、そうか。知ってなきゃ私のところへはこないよなと自己完結する。
「私うたちゃんの国の話、聞きたいわ」
「……」
私の、国の話。日本の話。──私が死んでしまった世界の、話。ヤムライハさんになら、言ってもいいかなと口を開こうとした瞬間、コンコンとノック音がした。
「……入っていい?」
「ピスティ!」
「ピスティ、さん?」
ぎぃっと顔をのぞかせたのは、あの時制服を持ってきてくれた金髪の女の子だ。シンドバットさんもピスティと呼んでいたし、今、ヤムライハさんもピスティと呼んだからきっとピスティさんという名前なのだろう。
「も、も~ヤムばっかずるいよ~。私もお話したい!」
「……、」
「……ごめんね。やっぱり、いやだよね。君の大事なもの、あんなにしちゃったから、」
なるべく明るい声で振舞っていたが、今度はしゅんっと肩を落とすピスティさん。大丈夫だと、仕方なかったんですと、のどまで出かけて、言葉にならなかった。確かに、制服のことは、簡単に受け入れられるものじゃないけど……。
「あの、」
「!」
「私の話でよかったら、聞いてほしいです」
「うたちゃん……」
そう聞くとピスティさんはぽかんと口を開けて、ヤムライハさんを見た。ヤムライハさんは笑いながらこくりと頷く。
「う、うん!私はピスティ!聞きたいことがあったらなんでも聞いてね。お姉さんがなんでも教えてあげるよ!」
「……ありがとうございます、ピスティさん」
ぱぁっと表情を明るくさせ、とんっと胸に手をやって答えたピスティさん。その可愛さに思わず笑みが漏れた。ふふと笑う。すると、ぴしりとその場の雰囲気は凍る
「あ、す、すみません。気を悪くしました、よね」
「っあ、謝らないで!むしろもっと笑って!」
「そ、そうよ!うたちゃんは笑った方がいいわ」
「は、はぁ……」
ぎゃあぎゃあと今度は2人がフォローしてくれる。あの一瞬の間はなんだったのだろうと疑問に思いながら、苦笑いした。
「ピスティ、そういえばどうしてここに?」
「そうだ!忘れてたよ。うたちゃんに
ね、朗報だよ」
「朗報……?」
「うん!お風呂、入りたいでしょ」
にこっと満面の笑みでピスティさんは言った。お風呂、というワードに嬉しさがこみ上げる。今までは、タオルで体をふく程度で、あったかいお湯など夢にも思わなかったからだ。
「王様がね、女の子同士仲良く入ってきなさいって!」
「女の子同士……?」
「そ、私たちでお風呂入ろう!ヤムもこもりっきりで久し振りでしょ?」
「あ、そういえばそうね……、薬品くさいわ」
くんくんと自分の腕のにおいをかぐヤムライハさん。ここの世界観は一体どうなっているんだ……。電気はなくて、ろうそくで明かりとする。毎日風呂に入る習慣もなさそうだ。
「たぶんうたちゃん、まだ歩けないから私たちが連れて行くよ」
「……すみません」
「すぐ謝らないの!ヤム、お願いできる?」
「分かったわ」
もこもこした布をはいで、ヤムライハさんが私の肩に触れようとした──その時だった。
バチッ
「!?」
「痛っ!?」
「ヤム大丈夫っ!?」
触れようとしたヤムライハさんの指先に、電光が走った。音も大きく、肉眼でも見えるほどの威力だった。突然のことに唖然とする。
「い、まのって……」
静電気?
「ルフが引き起こした……、電気だわ」
ヤムライハさんが目をキラキラさせて、バッと私の肩をゆさゆさと揺らす。
「すごいわうたちゃん!!これは新しい発見かもしれない……人間と人間の間で電気が発生するなんて!!」
「あ、あ、あの?ヤムライハさん……?」
「こうしちゃいられないわ!行くわようたちゃん」
「ちょ、ちょっとヤム!?うたちゃんそんなしたら気絶しちゃ……」
「………」
「あー!!もうしちゃってる!!!」
ただ風呂に入ろうと、提案しようとしただけなのだが。こんなことになるなんて、とピスティはぽかんとした。そして同時に、なんで電気が発生したのか疑問に思う。今までそんなことなかったのに。と思いながら、うたが寝ていたベットに手を伸ばす
バチッ
「!」
ヤムライハと同様に電気が走った。思わずその布団をはぐが、そこにはこの間の布切れがあるだけで。謎が深まった
「……なんだろう、これ」
もう一度触っても、電気が走ることはなかった。
fin