青春白書
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なんだか今日は妙に胸騒ぎがした。そしてそれは案の定、暗雲を運んだ。部室にて、練習試合に出された勝敗指示を耳にする
「"3-0で雷門の負け"?」
「ッよりによってあの栄都学園にかよ!!」
──あいつらになんて、本気でやれば余裕で勝てるのに
そう言った車田先輩に、皆の顔色も暗くなっていく。これが、管理サッカーの現実だ
いつもいつも、私たちはそんなのを見ているだけだった。辛い思いをしているのは1軍だった皆である。そのことを噛みしめて、拳をぎゅっと握った
「え、ゆうびは試合に出ないの?」
「はい。とのことでした」
「ええっ」
「うう、なんか緊張するな……!信助!俺たちもゆうびの分まで頑張ろう!!」
「うんっ!」
無邪気に「初試合だ!」と喜ぶ二人。そんな天馬君たちの姿に、なんだか2軍の時の思い出が蘇る。自分たちも、何も知らなかったとき1軍の勝利をただ無邪気に応援していた
──無知って本当に残酷だ
私たちも、1軍の皆から見たらこうだったのかと思うと罪悪感が襲った
そんな最悪な雰囲気の中、今日の練習は終わった
07.お友達ができました
ノートのストックを買い終えて、夕暮れの道を帰路につく。はぁ、とため息をつきながら、私は今日の朝のことを思い出していた
「……やられました、」
避けられる、とは思ってたけどここまであからさまだとメンタル的に辛いものがあった
朝に普通に挨拶するのはいつも私からで、一乃と青山は少し気まずそうに「おはよ」と返してくれた。それだけでも嬉しかったのに、いつのまにか朝は、授業が始まるぎりぎりまで二人ともいないのだ
自分の足もとを見ながら歩いて──ふと不安がよぎった
もしかして、ずっとこのままだったら?彼らから避けられる日が続いて、もう二度と話す機会もないままクラスが変わってしまったら?──そんなの絶対に嫌だ。だけどそう思うと何故かどんどん不安になってきて、ぼろぼろと涙が落ちてきた
「ッ~~~」
つい足を止めて、その場にしゃがみ込んでしまう
「どうかされましたか?」
「っ!?」
ぬっと顔を出した見知らぬ顔。思わず声が出そうになったが、こらえた。ドッドッと心臓が脈立つ。その少年は詫びを入れるわけでもなく、そのまま続けた
「その制服…、雷門の人?」
「あ、ハイ。す、すみません…通行の邪魔してしまって」
「や、別にいいですけど。泣いてたんですか」
「泣いてません」
「目から何か溢れているのに?」
「鱗です」
「ぶっ、うろこ!?」
何それと笑った少年は、ツボに入ったらしく、声を押し殺しながら笑っていた
──器用ですね
少しはねている髪の毛を揺らしながら、一本だけ出てる前髪を払う少年。涙を人差し指でふきながら、顔を上げる。全体的にまだ浅いのか、少年の顔は薄ら笑いになっていた
「久しぶりに笑った気がする。君の名前は?」
「……あの、普通は自分からじゃ、」
「ああ、それもそうだ。俺は雅野麗一。帝国学園一年です」
「えっと、色羽 ゆうび。雷門中2年です」
「……すみません、先輩でしたか」
頬を掻いて、ニコッと笑った雅野君。改まって言わなくてもいいのに、と言えば「そういうわけには。」と返された。しっかりしてるな、雅野君
「なんで泣いてたんですか?」
「泣いてません」
「即答ですね。……なんだか総帥と話してるみたいだ」
「そ、総帥?」
「何考えてるのか分かんないところとか、…一人で背負ってるとことか」
何考えてるか分からないところ、?ぐさりと自分に突き刺さった。自分の気にしてることを初対面の人に言われた……!ショックはデカかった
「少しくらい話してもくれないんだから、」
と目を伏せた雅野君。その顔から、雅野君はその総帥とやらを心から慕ってるんだなぁと思う。その総帥さんは何かを隠して、さらにそれを背負っているようだ。間接的に知った総帥さんに一目でいいから見てみたいと思う
「あの、雅野君」
「何ですか?」
「聞いて、くれますか」
「話す前から顔ひどいですけど、」
「……涙なしには語れません」
「な!?、無駄に上手いこと言わなくていいですよっ!」
もちろん、サッカー部というのは伏せて、自分の友人関係として話を進めた。話初めから、涙は止めどなく流れた
初対面の人に、なぜか自分の悩みを吐き出してしまった。でも意外と話しやすくて。雅野君は黙って聞いてくれていて。また泣き出した私を言葉で慰めるでもなく、黙ってタオルを差し出してくれた。雅野君の聞き上手さに惚れ惚れしそうだ
「……聞いて下さりありがとうございます」
「俺は何もしてないです。そっちが勝手に泣いてただけで……」
「でも、聞いてくれました」
「……あー」
こういうのに慣れていないのか、雅野君は上を向いてガシガシと頭を掻いた。そうして黙りこくってしまった雅野君に、さぁっと血の気が引けた。も、もしかして怒った……?
「す、すみません……」
「──あの、話を簡略化しませんでした?」
「ッ!?」
終始流れていた涙が、ぴたりと止む。何故ばれた。咄嗟に視線を雅野君から外すと「やっぱり」と声が降りてきた。そうしてふぅと息を吐くと一言
「……小さい総帥だ」
「へ。?」
肝心なことは話してくれないところとか、本当にそっくり。と雅野君。ぽかんと口を開けている私に、雅野君は呆れたように笑う。結局雅野君の言う、総帥が誰か分からないまま、お互いの携帯番号を交換した。するとどこから携帯の音が流れる
「げ、」
一応自分のかな、と不安になったので確認するが私のではなかった。短い声雅野君の声が聞こえ、携帯を開き顔を青くした雅野君
「すみません、ちょっと呼び出しです。俺行かないと」
「あ、はい。」
「ゆうびサン。あんま泣いてばかりだと幸せ逃げちゃいますよ」
「き、肝に銘じておきます、」
「じゃあまた!」
手を振って、小走りで駅の方面へ消えた雅野君。私も手を振り返した。──別れた直後、すぐに携帯が鳴る。手に取って確認するとメールが一件。なんだろうと確認すれば雅野君からだった
「?」
差出人:雅野麗一
題名
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見て下さい。奇跡的な一枚ですよ
疑問に思いながらも添付されているファイルを開く。ダウンロードが開始されて10%、60%、100%。ぱっと出てきた画像に、思わず失笑するところだった
「な、なな、なんですっか、これ」
添付されていた写真には、アイスが写っていた
それだけならまだいいが、ただのアイスではなく…、空気がいい感じに抜け、目のようになっている。さらに加えて、その二つの目とアイスの元々へこんでいる部分が奇跡的にマッチして、薄ら笑いをしている。という写真だったのだ
吹き出すことはなかったが、可笑しくて口元が痙攣してししまう。堪え切れずに、一度だけぶほっと吹き出してしまった。憎めない可愛さに顔が緩み、気が付けば涙は渇いてた
そこではっと気が付く
──もしかして、気を使ってくれたのだろうか
「……ふふ、」
こんなの、雪村君に言えば自意識過剰と言われそうだったが、私にとってはとても嬉しかった。薄ら笑いを浮かべてるアイス君に、「ばーか。これからだろ」って言われてるような気がして……。諦めるもんか、とやる気をもらった
差出人:色羽 ゆうび
題名:Re;
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ありがとうございます
あのアイス君をぜひ総帥さんにどうぞ
-END-
「ブフォッ!!」
fin.
(薄ら笑いってこんなにも元気になる顔だったんですね。今度試してみよう)