青春白書
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あのまま第二グランドにいても、生徒の注目の的であるし、何より先生に注意されてしまうから場所を移動した
さっきのことがあってから一乃君と青山君に、会うのが気まずく感じた。いつでもあえるのが同じクラスの特権だったのに、今は少しだけ憎らしく思う
"俺達は、もう……"
一乃くんの最後の言葉が引っ掛かる。そんな、最後みたいなこと言わないでほしかったなぁ、と考えて、少し泣きそうになった
現在地は保健室
ベットの上だし、カーテンしてあるから大丈夫だろうと思っていた
ジャッ
「ッ!?」
「──あれ、お前……なんでこんなところにいるんだ?」
唐突に開くはずのないカーテンが開いた。ビクッと心臓が飛び跳ねる
「あ、おい……。大丈夫か?」
そうして顔を出したのが──1軍の頼れる霧野さんだった
ぎょっとして体を起こせば、最近寝てなかったからかくらっと眩暈がした。倒れそうになったのを霧野さんがふわりと受け止めてくれたわけだが……
「ったく…お前と言い神童といい……無茶するやつらだな」
そんなきれいな顔でそんなセリフ言わないでください。私でなければ惚れていましたよ?
相変わらず紳士な霧野さんは、にこっと女の子受けの良さそうな笑みを浮かべていた
04.仲直りの方法を教えてください
──霧野さん曰く、試合中に倒れた神童さんの付き添いでここに来たらしい。神童さんはまだ寝ている。……眉間にしわが寄っているなぁと見つめていると、霧野さんがカタンッとイスを持ってきて、隣に座った
「心配か?」
「!」
「はは、そんな顔するなよ。お前のせいじゃないだろ」
「霧野さん、」
「ゆうび、お前も少し休んだらどうだ」
目の下、隈できてるぞ。と言われて、自分の手を見つめる
"使えなかったら意味がないんだよ"
吉良君に言われた言葉を思い出した
「ッ、いえ、休んでる暇なんてないですから」
「ダメだ」
「霧野さんこそ、ちゃんと休んでますか?」
「俺のことはいいから」
そんな顔してるやつに心配されたくない、とデコピンされる。地味に痛い。痛みとは裏腹になんだか懐かしさがこみあげてきて、じわりと視界が歪んだ
泣くな
そう思えば思うほど、先ほど皆が吐き出した、あの言葉の一つ一つを思い出した。きっと、あれが彼らの本音だったんだろう。"使えなきゃ意味ない"……今まで、そう思われていたんだ。必殺技の研究だって、結局は自己満足で、皆の役には立たなかった。嗚呼、本当に私は今まで何をしていたのだろう。よくわからなくなってきた
「ッ」
「……我慢するなよ」
「す、み、ませ」
ボロッと涙があふれた
堪えていたつもりだったが、間に合わずあふれてきた涙に自分でも驚く。しかし霧野さんは微動だにしなかった。まるで慣れてるように、そっと割れ物を扱うような優しい手つきで頭を撫でてくれた
「一乃達と、何かあったんだな」
「っ、すみませ、」
「あー、ったく、謝らなくていい」
"何かあった"だけならまだいい
壊れて、しまったかもしれないんだ
脳裏に焼き付いた、一乃君の哀愁漂う伏せ目。"もう……"とだけ言った一乃からはサッカーが嫌いになったようには見えなくて。もしかしたら、もしかしたらだけど、説得すればまた「仕方ないな」と言って受け入れてくれるかもしれない
今だったら、間に合うかもしれない
──そう思うと無性に彼らに会いたくなった。このままでいいわけがない
もしかしたら、と期待して
ぽんぽんと子供をあやすように、背中をたたく霧野さん。その優しさにほっと安心した。ついでに心も落ち着いた
勇気を出して、彼らに会いに行こう。そう決めた。霧野さんの手を掴んで制止させると霧野さんは察したように手を引っ込めてくれた
「あの、今ほかの皆はどちらへ?」
「ん?ああ、旧部室の後片付けだ」
「ありがとうございます」
「……行くのか?」
「はい」
間を開けてから頷くと「行って来い」と霧野さんは笑って手を振った。ぺこりと会釈して、ベットから降りた。
そうして保健室を出ていき、旧部室へと方向転換をする──その直後、神童さんが目覚めた
「っゆうび!今すぐ部室に集合だ、行くぞ」
「え、?」
ガッと霧野さんの腕がお腹にまわり、そのまま霧野さんの片腕にぶら下がって、そのまま連行された
*******
「……、セカンドはもう終わりだな」
「ッ」
サッカー塔に集まった結果、2軍の皆の口から溢れてきたのは「サッカー部をやめる」だった。そう言って、誰よりも早く脱退を宣言したのは──吉良君だった。そんな、まさか。私のせいで?──そんな負の感情に支配された
「一乃、青山。俺達ももう……」
聞きなれた声が、発する言葉に頭を殴られる。反射的に顔を上げればそこには向坂君がいた
「向坂君…、?」
「悪い、」
フイ、と顔をそむけた2軍の皆。ここでもやはり、視線が交わることはなかった。その瞬間に鳥肌が立つ
──どう、して
「俺らも」
「!」
手をあげた、この間1軍に上がったばっかりの二人も脱退していく。その理由は"フィフスセクターが怖いから"だった
それでも青山と一乃は動かなかった。それが唯一の救いだった
脱退していく人に、車田先輩が喝を入れようとするが、それを神童さんが止める
「──今までありがとうな、」
そう言った神童さんの手は、震えていた
「ちょっと待ってください!」
誰かが、いってしまう彼らを止めた
しかし、その少年の言葉はみじめに負けてしまったみんなの心を深く抉った
"ガキだなお前"
そういわれた少年は、それでもと言葉をつづけた
「あのな、怖くなったんだよ"サッカー"が」
「怖い?サッカーが怖いんですか?サッカーって楽しいと思うんです」
「!!」
"楽しい"その言葉に過剰反応した。思わず振り返ると、そこには今朝の茶色い少年がいた
「俺たちが楽しいって思わなきゃ、サッカーがかわいそうですよ!」
──少年の訴えに、部室内が一瞬にして笑いに包まれた
笑い声を聞きながら、私の頭は真っ白だった。少年は、何もおかしいことは言ってない。私もそう思っていたのに。どうして笑っているのか、分からなかった。そんな中「行かせてやれ」と神童さんが言う
急に、ガタッと青山君が立ち上がった。思わず顔を上げて青山君を見ると、怖いくらいに無表情で、くらりと眩暈がした
「あ、おやま……」
「……お前は続けるのか」
「!!」
青山君が一乃君に答えを促す
心臓が飛び跳ねた
いやだ、いやだいやだいやだ。行かないで、行かないで、また、一緒にサッカーを、……したい
「──ッ」
ぎゅうっと自分の拳を、自分の膝の上でまとめる。かたかたと情けなく震える自分の体を恨めしく思った
「ッ、セカンドはもう終わりだ。俺も……」
"もうやめるよ"
怖くて、二人の顔を見ることはできなかった
でも、なんとなくだけど、二人はきっと私のことなど見向きもしないだろうと思ってた
「たった、これだけ……?」
「はい、ファーストが9人、」
すこし間をおいてから、神童さんが口を開けた
「──……セカンドが1人。これで全員です」
限界だった
「──!?ゆうびどこ行くんダど!!」
「止めるなよ天城。野暮な奴だな」
「あいつよく耐えたっすね」
「あちゃ~、大好きな一乃君が止めちゃったもんな~」
「ひぇええ、もうだめです。もう終わりです……」
サッカー部は今日をきかっけに、崩壊してしまった。どうしようもない事実は変わらない。2軍の彼らは、もう帰ってこない
「皆、どうしてですか……」
その事実を、認めたくなかった
第二グランドまで走ってきて、自分の顔がひどいぐらいにぐちゃぐちゃになった
涙と鼻水と、もうそれは最悪だった
悔しくて、悔しくて。今まで、皆で頑張ってきたのに、たった一度。たった一度負けてしまっただけで皆の恐怖心をあれだけ大きくするなんて……サッカーボール一つで、抉られた皆の心。フィフスセクターの手にかかってしまえば、皆からサッカーを取り上げるのは容易なことだったのだ
──"またいつものように?"無神経にも程があったと、今になって自分の不甲斐なさに腹が立つ。"お前は試合に出ていないから分からないよな"そう吉良君が言っていた。全くその通りである
私に、皆の気持ちが分かるはずなかったのだ
「ご、めなさ、い。ごめんなさ、──」
だからどうか、どうか。戻ってきてください
ブーブー、とこんな時に限っていつも着信が来る。習慣付いたそれは反射的に手に取って、通話ボタンを押してしまった
「ゆ、雪村ぐん"……」
『あ、出た──ねぇ君………って、え?』
「ゆ、き、むらくんん」
『吹雪せっ!?何してるんですか!!──ちょっと気になって──ブツッ』
ツーツー
ワンワン泣いた
沢山泣いた
fin.
(先輩!!余計なことしないでくださいよっもう!早くシュート教えてください)
(──雪村、彼女泣いてたよ)
(……は?)
(ゆうび、あんなところにいるぞ)
(風邪ひくんじゃね?)
さっきのことがあってから一乃君と青山君に、会うのが気まずく感じた。いつでもあえるのが同じクラスの特権だったのに、今は少しだけ憎らしく思う
"俺達は、もう……"
一乃くんの最後の言葉が引っ掛かる。そんな、最後みたいなこと言わないでほしかったなぁ、と考えて、少し泣きそうになった
現在地は保健室
ベットの上だし、カーテンしてあるから大丈夫だろうと思っていた
ジャッ
「ッ!?」
「──あれ、お前……なんでこんなところにいるんだ?」
唐突に開くはずのないカーテンが開いた。ビクッと心臓が飛び跳ねる
「あ、おい……。大丈夫か?」
そうして顔を出したのが──1軍の頼れる霧野さんだった
ぎょっとして体を起こせば、最近寝てなかったからかくらっと眩暈がした。倒れそうになったのを霧野さんがふわりと受け止めてくれたわけだが……
「ったく…お前と言い神童といい……無茶するやつらだな」
そんなきれいな顔でそんなセリフ言わないでください。私でなければ惚れていましたよ?
相変わらず紳士な霧野さんは、にこっと女の子受けの良さそうな笑みを浮かべていた
04.仲直りの方法を教えてください
──霧野さん曰く、試合中に倒れた神童さんの付き添いでここに来たらしい。神童さんはまだ寝ている。……眉間にしわが寄っているなぁと見つめていると、霧野さんがカタンッとイスを持ってきて、隣に座った
「心配か?」
「!」
「はは、そんな顔するなよ。お前のせいじゃないだろ」
「霧野さん、」
「ゆうび、お前も少し休んだらどうだ」
目の下、隈できてるぞ。と言われて、自分の手を見つめる
"使えなかったら意味がないんだよ"
吉良君に言われた言葉を思い出した
「ッ、いえ、休んでる暇なんてないですから」
「ダメだ」
「霧野さんこそ、ちゃんと休んでますか?」
「俺のことはいいから」
そんな顔してるやつに心配されたくない、とデコピンされる。地味に痛い。痛みとは裏腹になんだか懐かしさがこみあげてきて、じわりと視界が歪んだ
泣くな
そう思えば思うほど、先ほど皆が吐き出した、あの言葉の一つ一つを思い出した。きっと、あれが彼らの本音だったんだろう。"使えなきゃ意味ない"……今まで、そう思われていたんだ。必殺技の研究だって、結局は自己満足で、皆の役には立たなかった。嗚呼、本当に私は今まで何をしていたのだろう。よくわからなくなってきた
「ッ」
「……我慢するなよ」
「す、み、ませ」
ボロッと涙があふれた
堪えていたつもりだったが、間に合わずあふれてきた涙に自分でも驚く。しかし霧野さんは微動だにしなかった。まるで慣れてるように、そっと割れ物を扱うような優しい手つきで頭を撫でてくれた
「一乃達と、何かあったんだな」
「っ、すみませ、」
「あー、ったく、謝らなくていい」
"何かあった"だけならまだいい
壊れて、しまったかもしれないんだ
脳裏に焼き付いた、一乃君の哀愁漂う伏せ目。"もう……"とだけ言った一乃からはサッカーが嫌いになったようには見えなくて。もしかしたら、もしかしたらだけど、説得すればまた「仕方ないな」と言って受け入れてくれるかもしれない
今だったら、間に合うかもしれない
──そう思うと無性に彼らに会いたくなった。このままでいいわけがない
もしかしたら、と期待して
ぽんぽんと子供をあやすように、背中をたたく霧野さん。その優しさにほっと安心した。ついでに心も落ち着いた
勇気を出して、彼らに会いに行こう。そう決めた。霧野さんの手を掴んで制止させると霧野さんは察したように手を引っ込めてくれた
「あの、今ほかの皆はどちらへ?」
「ん?ああ、旧部室の後片付けだ」
「ありがとうございます」
「……行くのか?」
「はい」
間を開けてから頷くと「行って来い」と霧野さんは笑って手を振った。ぺこりと会釈して、ベットから降りた。
そうして保健室を出ていき、旧部室へと方向転換をする──その直後、神童さんが目覚めた
「っゆうび!今すぐ部室に集合だ、行くぞ」
「え、?」
ガッと霧野さんの腕がお腹にまわり、そのまま霧野さんの片腕にぶら下がって、そのまま連行された
*******
「……、セカンドはもう終わりだな」
「ッ」
サッカー塔に集まった結果、2軍の皆の口から溢れてきたのは「サッカー部をやめる」だった。そう言って、誰よりも早く脱退を宣言したのは──吉良君だった。そんな、まさか。私のせいで?──そんな負の感情に支配された
「一乃、青山。俺達ももう……」
聞きなれた声が、発する言葉に頭を殴られる。反射的に顔を上げればそこには向坂君がいた
「向坂君…、?」
「悪い、」
フイ、と顔をそむけた2軍の皆。ここでもやはり、視線が交わることはなかった。その瞬間に鳥肌が立つ
──どう、して
「俺らも」
「!」
手をあげた、この間1軍に上がったばっかりの二人も脱退していく。その理由は"フィフスセクターが怖いから"だった
それでも青山と一乃は動かなかった。それが唯一の救いだった
脱退していく人に、車田先輩が喝を入れようとするが、それを神童さんが止める
「──今までありがとうな、」
そう言った神童さんの手は、震えていた
「ちょっと待ってください!」
誰かが、いってしまう彼らを止めた
しかし、その少年の言葉はみじめに負けてしまったみんなの心を深く抉った
"ガキだなお前"
そういわれた少年は、それでもと言葉をつづけた
「あのな、怖くなったんだよ"サッカー"が」
「怖い?サッカーが怖いんですか?サッカーって楽しいと思うんです」
「!!」
"楽しい"その言葉に過剰反応した。思わず振り返ると、そこには今朝の茶色い少年がいた
「俺たちが楽しいって思わなきゃ、サッカーがかわいそうですよ!」
──少年の訴えに、部室内が一瞬にして笑いに包まれた
笑い声を聞きながら、私の頭は真っ白だった。少年は、何もおかしいことは言ってない。私もそう思っていたのに。どうして笑っているのか、分からなかった。そんな中「行かせてやれ」と神童さんが言う
急に、ガタッと青山君が立ち上がった。思わず顔を上げて青山君を見ると、怖いくらいに無表情で、くらりと眩暈がした
「あ、おやま……」
「……お前は続けるのか」
「!!」
青山君が一乃君に答えを促す
心臓が飛び跳ねた
いやだ、いやだいやだいやだ。行かないで、行かないで、また、一緒にサッカーを、……したい
「──ッ」
ぎゅうっと自分の拳を、自分の膝の上でまとめる。かたかたと情けなく震える自分の体を恨めしく思った
「ッ、セカンドはもう終わりだ。俺も……」
"もうやめるよ"
怖くて、二人の顔を見ることはできなかった
でも、なんとなくだけど、二人はきっと私のことなど見向きもしないだろうと思ってた
「たった、これだけ……?」
「はい、ファーストが9人、」
すこし間をおいてから、神童さんが口を開けた
「──……セカンドが1人。これで全員です」
限界だった
「──!?ゆうびどこ行くんダど!!」
「止めるなよ天城。野暮な奴だな」
「あいつよく耐えたっすね」
「あちゃ~、大好きな一乃君が止めちゃったもんな~」
「ひぇええ、もうだめです。もう終わりです……」
サッカー部は今日をきかっけに、崩壊してしまった。どうしようもない事実は変わらない。2軍の彼らは、もう帰ってこない
「皆、どうしてですか……」
その事実を、認めたくなかった
第二グランドまで走ってきて、自分の顔がひどいぐらいにぐちゃぐちゃになった
涙と鼻水と、もうそれは最悪だった
悔しくて、悔しくて。今まで、皆で頑張ってきたのに、たった一度。たった一度負けてしまっただけで皆の恐怖心をあれだけ大きくするなんて……サッカーボール一つで、抉られた皆の心。フィフスセクターの手にかかってしまえば、皆からサッカーを取り上げるのは容易なことだったのだ
──"またいつものように?"無神経にも程があったと、今になって自分の不甲斐なさに腹が立つ。"お前は試合に出ていないから分からないよな"そう吉良君が言っていた。全くその通りである
私に、皆の気持ちが分かるはずなかったのだ
「ご、めなさ、い。ごめんなさ、──」
だからどうか、どうか。戻ってきてください
ブーブー、とこんな時に限っていつも着信が来る。習慣付いたそれは反射的に手に取って、通話ボタンを押してしまった
「ゆ、雪村ぐん"……」
『あ、出た──ねぇ君………って、え?』
「ゆ、き、むらくんん」
『吹雪せっ!?何してるんですか!!──ちょっと気になって──ブツッ』
ツーツー
ワンワン泣いた
沢山泣いた
fin.
(先輩!!余計なことしないでくださいよっもう!早くシュート教えてください)
(──雪村、彼女泣いてたよ)
(……は?)
(ゆうび、あんなところにいるぞ)
(風邪ひくんじゃね?)