青春白書
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先ほどのボールを蹴ったのは、おそらく一軍キャプテンの神童さんだ。そろり、と神童さんの顔色をうかがう。フィールドにいる私たちを見下す神童さんは、少々怒り気味だった
「礼儀を知らない一年が……セカンドチームを倒したからっていい気になるな」
神童さんがちらりと一乃君たちを見た後に吐き出した言葉だった
そしてバチッと視線がぶつかる
「なにがあったゆうび」
「……すみません、私も、来たらこの状況で」
「え、雷門イレブンと知り合い!?え、君新入生じゃなかったの!?」
えぇっと声に出して驚いた少年。その反応を見た後、私から視線を外した神童さんは、視線をその少年へと向けた。
何が何だか分からない茶色い少年は、びくりと肩を揺す。なにかいわれるのだろうかとはらはらしていると、眉間にしわを寄せた神童さんは、ゆっくり口をあけた。
「いつまでそうしてるつもりなんだ。ここは神聖なグランドだぞ」
神童さんの言葉に、ようやくそこで少年と顔を見合わせる。
「そうしている……」
「つもり…、?」
二人とも我に返り、同時に離れる。バッという効果音つきで、はがれた。
離れたのを確認すると、神童さんはため息を吐いて、監督に向き直る
「監督、こいつらは?」
「……おそらくフィフスセクターから送り込まれたのだろう」
「!」
フィフスセクター
その名前を聞くと、どうもいやな胸騒ぎがする。ぎゅっと拳をつくり目の前にいるわらび少年を睨む
わらび君は待ってましたと言わんばかりに、ニィッと口角を釣り上げた
「──紹介しよう、これが新しい雷門イレブンだ。お前たちの、代わりだ」
指を鳴らすと、11人がそこに現れた
03.別れは突然でした
「これは提案ではなく、命令だ」
脅迫ともとれるわらび君の行動に、私たちは抵抗できなかった
わらび君が「新しい雷門イレブンだ」といい、連れてきた11人と1軍のみんなは雷門イレブンの存続を賭けた試合をしに、サッカー塔の中へ消えた。茶色の少年も、サッカー塔へ行ってしまい、グランドには私と、2軍の皆だけになった
静寂が、私たちを包んでいる。段々と気まずくなってきたので、それを打破しようと声を振り絞った
「あの、……ッ」
声を出したと同時に、ガッと胸倉を掴まれた。リボンが、音を立てて地面に落ちる
「は。ゆうびさ、来るのが、遅いよ」
「っ、吉良それはいいがかりだ!」
「一乃は黙っててくれよ」
「っ」
返ってきたのは、自分への不満だった。自分を咎めることばに、私は言葉に詰まってしまう、
「お前が最初からいたら、勝てたかもしれないのに……!!」
吉良君が私の胸倉を掴みながらそう訴えてくる。何か言い返さなければと思ったが、彼の顔を見たら、何も言えなかった
──彼は、泣いていた
「は、なんか言えよ……」
「吉良君、」
「こんなの、ただの八つ当たりじゃん!なんか言い返せよ!!」
グッと掴まれている手に力が籠っているのを感じた。朝練の時間、守って家を出たはずなのに、遅いといわれる筋合いはないのだが、それでも、他のみんなはちょっと早くきて、自主練を始めていたのだろう。
「……お前が、夜遅くまで必殺技の研究してんの知ってる」
「きら、く」
「でもな…!使えなかったら意味ないんだよ……!!」
「っ」
「サッカー部、なくなっちまったら意味ないだろ……!!」
何も言い返さない私に、吉良君は諦めたように手を放した。そして、吉良君はずるりとその場に座り込む。その様子を見ていた他の2軍の皆も、俯いていて自分の靴を眺めていた
"俺たちが弱いせいで"
"負けたから"
"存在価値なんてない"
吉良君の言わんとしていることが伝わった。それを理解したと同時に血の気が引いた
その妙な光景に、呆然と佇んでしまう
「サッカー部は、なくなりません」
「俺たちは負けたんだ!アイツに!!」
「き、きっとみんなが、勝ってくれます」
「無理だ、あいつは化け物並みに強い!ファーストチームでも……!」
「そ、それでも練習は楽しいでしょう……?」
「……楽しい?」
間を開けて、誰かが口にする。その、何の凹凸もない一定のトーンに背筋が凍った。でも、ここで折れたら彼らとサッカーができないかもしれない。そんなの、嫌だった
自分も負けないように、声を出す
「そうで、すよ。今までのように、また皆で、」
「今までのように?」
「はい、」
「……は、そんなん無理に決まってるだろ」
"お前は試合出てないから、分からないよな"
"何を言っても無駄だよな"
「ッ!」
「俺たちは、」
その先は聞きたくなかった
「もう、」
──サッカーしたくない
「心が、折れたんだ」
吉良君が、そう言った。
最後まで一度も顔を上げることなく。呟くようにそう言った。その言葉が、ぐさりと自分に突き刺さる。まるで串刺しにされたように、心臓が痛かった
その一言を言うと、吉良君は立ち上がりどこかへと歩いていく
「待って下さ、」
「フィフスセクターに、逆らったら……こうなるんだもんな、」
「あ、の、ま、待って……」
一人、また一人と立ち上がってどこかへ歩いていく
そんな中で、誰も私を見ようとはしなかった。全身に鳥肌が立った。まるで、存在を否定されているような疎外感に襲われる
私の横を素通りしていく皆。とうとう泣き出してしまいそうになった。でも、ぐっとこらえる
周りを見渡せば、そこには一乃君と青山君しかいなかった
「ま、待って下さい。みなさ──、いちの、くっ」
「………」
青山君に手を借りて立ち上がった一乃君。何かを言いたげに視線を泳がせては、口を開閉させていた。──それでも決して視線が合うことはなかった
「……ごめんな、ゆうび」
「青山君、な、で」
なんで謝るの、?
「すまない」
「や、っ」
「俺たちは、もう……、」
──その時の一乃君の顔を私は一生忘れない
去っていく二人を追いかけるほど、私の体に力は入らなかった。声を出そうにも、のどが渇いて声にならなかった
薄暗い第二グランドには、もう私一人しかいなかった
ころころと風に乗って転がってきたサッカーボールを見つめて、ただただ立ち尽くしていた
fin.
(……それでも、今日の放課後には戻ってきてくれると、信じています)
「礼儀を知らない一年が……セカンドチームを倒したからっていい気になるな」
神童さんがちらりと一乃君たちを見た後に吐き出した言葉だった
そしてバチッと視線がぶつかる
「なにがあったゆうび」
「……すみません、私も、来たらこの状況で」
「え、雷門イレブンと知り合い!?え、君新入生じゃなかったの!?」
えぇっと声に出して驚いた少年。その反応を見た後、私から視線を外した神童さんは、視線をその少年へと向けた。
何が何だか分からない茶色い少年は、びくりと肩を揺す。なにかいわれるのだろうかとはらはらしていると、眉間にしわを寄せた神童さんは、ゆっくり口をあけた。
「いつまでそうしてるつもりなんだ。ここは神聖なグランドだぞ」
神童さんの言葉に、ようやくそこで少年と顔を見合わせる。
「そうしている……」
「つもり…、?」
二人とも我に返り、同時に離れる。バッという効果音つきで、はがれた。
離れたのを確認すると、神童さんはため息を吐いて、監督に向き直る
「監督、こいつらは?」
「……おそらくフィフスセクターから送り込まれたのだろう」
「!」
フィフスセクター
その名前を聞くと、どうもいやな胸騒ぎがする。ぎゅっと拳をつくり目の前にいるわらび少年を睨む
わらび君は待ってましたと言わんばかりに、ニィッと口角を釣り上げた
「──紹介しよう、これが新しい雷門イレブンだ。お前たちの、代わりだ」
指を鳴らすと、11人がそこに現れた
03.別れは突然でした
「これは提案ではなく、命令だ」
脅迫ともとれるわらび君の行動に、私たちは抵抗できなかった
わらび君が「新しい雷門イレブンだ」といい、連れてきた11人と1軍のみんなは雷門イレブンの存続を賭けた試合をしに、サッカー塔の中へ消えた。茶色の少年も、サッカー塔へ行ってしまい、グランドには私と、2軍の皆だけになった
静寂が、私たちを包んでいる。段々と気まずくなってきたので、それを打破しようと声を振り絞った
「あの、……ッ」
声を出したと同時に、ガッと胸倉を掴まれた。リボンが、音を立てて地面に落ちる
「は。ゆうびさ、来るのが、遅いよ」
「っ、吉良それはいいがかりだ!」
「一乃は黙っててくれよ」
「っ」
返ってきたのは、自分への不満だった。自分を咎めることばに、私は言葉に詰まってしまう、
「お前が最初からいたら、勝てたかもしれないのに……!!」
吉良君が私の胸倉を掴みながらそう訴えてくる。何か言い返さなければと思ったが、彼の顔を見たら、何も言えなかった
──彼は、泣いていた
「は、なんか言えよ……」
「吉良君、」
「こんなの、ただの八つ当たりじゃん!なんか言い返せよ!!」
グッと掴まれている手に力が籠っているのを感じた。朝練の時間、守って家を出たはずなのに、遅いといわれる筋合いはないのだが、それでも、他のみんなはちょっと早くきて、自主練を始めていたのだろう。
「……お前が、夜遅くまで必殺技の研究してんの知ってる」
「きら、く」
「でもな…!使えなかったら意味ないんだよ……!!」
「っ」
「サッカー部、なくなっちまったら意味ないだろ……!!」
何も言い返さない私に、吉良君は諦めたように手を放した。そして、吉良君はずるりとその場に座り込む。その様子を見ていた他の2軍の皆も、俯いていて自分の靴を眺めていた
"俺たちが弱いせいで"
"負けたから"
"存在価値なんてない"
吉良君の言わんとしていることが伝わった。それを理解したと同時に血の気が引いた
その妙な光景に、呆然と佇んでしまう
「サッカー部は、なくなりません」
「俺たちは負けたんだ!アイツに!!」
「き、きっとみんなが、勝ってくれます」
「無理だ、あいつは化け物並みに強い!ファーストチームでも……!」
「そ、それでも練習は楽しいでしょう……?」
「……楽しい?」
間を開けて、誰かが口にする。その、何の凹凸もない一定のトーンに背筋が凍った。でも、ここで折れたら彼らとサッカーができないかもしれない。そんなの、嫌だった
自分も負けないように、声を出す
「そうで、すよ。今までのように、また皆で、」
「今までのように?」
「はい、」
「……は、そんなん無理に決まってるだろ」
"お前は試合出てないから、分からないよな"
"何を言っても無駄だよな"
「ッ!」
「俺たちは、」
その先は聞きたくなかった
「もう、」
──サッカーしたくない
「心が、折れたんだ」
吉良君が、そう言った。
最後まで一度も顔を上げることなく。呟くようにそう言った。その言葉が、ぐさりと自分に突き刺さる。まるで串刺しにされたように、心臓が痛かった
その一言を言うと、吉良君は立ち上がりどこかへと歩いていく
「待って下さ、」
「フィフスセクターに、逆らったら……こうなるんだもんな、」
「あ、の、ま、待って……」
一人、また一人と立ち上がってどこかへ歩いていく
そんな中で、誰も私を見ようとはしなかった。全身に鳥肌が立った。まるで、存在を否定されているような疎外感に襲われる
私の横を素通りしていく皆。とうとう泣き出してしまいそうになった。でも、ぐっとこらえる
周りを見渡せば、そこには一乃君と青山君しかいなかった
「ま、待って下さい。みなさ──、いちの、くっ」
「………」
青山君に手を借りて立ち上がった一乃君。何かを言いたげに視線を泳がせては、口を開閉させていた。──それでも決して視線が合うことはなかった
「……ごめんな、ゆうび」
「青山君、な、で」
なんで謝るの、?
「すまない」
「や、っ」
「俺たちは、もう……、」
──その時の一乃君の顔を私は一生忘れない
去っていく二人を追いかけるほど、私の体に力は入らなかった。声を出そうにも、のどが渇いて声にならなかった
薄暗い第二グランドには、もう私一人しかいなかった
ころころと風に乗って転がってきたサッカーボールを見つめて、ただただ立ち尽くしていた
fin.
(……それでも、今日の放課後には戻ってきてくれると、信じています)