青春白書
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
「つ、剣城君?」
「……」
「あ、あの」
「安心しろ、フィフスセクターのところに行くんじゃない」
「あ、よかった……」
抵抗を一気に緩めて、剣城君の歩幅に合わせるように歩くスピードを上げる。すると彼は眉間にしわをよせた。あ、あれ?
なぜこんなことになってるかというと。
試合が終わった直後、剣城君はむんずと私の腕をつかみ、無言で歩きだした。つ、つまり私はわけが分からないまま、彼に連れ出されたわけで
不安だったが、どうやら連行されないようだ。本当によかった。……もし、連れて行かれていたら、今の私だったらすがってしまいそうだ。彼の「試合に出れる」という言葉に
「……少し疑ったらどうだ」
「え、」
「俺が絶対連れて行かない保証はない」
「……多分大丈夫な気がします」
「…オイ」
「だって、剣城君ですから」
「………はぁ」
ため息をついた彼は、歩くスピードを少し遅くしてくれた。そして手を離しくれた
「…今から合わせたい人がいる」
「人?」
「俺の、兄さんだ」
23.似てる人
「やぁ。はじめましてかな?」
「は、はじめまして」
「ふふ、緊張してる?」
「は、はいっ」
「はは……。それにしても剣城が女の子を連れてくるなんて」
「……」
「俺は剣城優一。君は?」
にこり、と笑いかけられた顔が、すごく優しかった。と同時に、どこか消えそうで儚げだった
「……色羽 ゆうびです」
そんな彼の笑みを見てたら、つられて私もいつものように"薄ら笑い"をしていた
「ふふっ」
「!」
「に、兄さん?」
急に優一さんが笑いだした。突然のことに、剣城君も驚いたようで、様子をうかがっていた。そんな剣城君の態度に私も驚く
「いや、君があまりにもかわいいから……」
「か、かわっ!?」
「兄さん……?」
「そんな怒るなよ、剣城。お前が連れてきてくれたんだろ?」
「お、俺は別に……!」
「君は剣城に聞いてた通りの人だね」
「え、あ、のッ」
ぼんっと音を立てて赤くなった私をよそに会話を進めていく優一さん。こ、これが大人の余裕ってやつか……!((違う
ぽんっと頭に重みが襲ってきた
「……な、」
「…む?」
「剣城を、よろしくね。色羽ちゃん」
「(あ………)」
またにこりと笑った優一さんに、また親近感がわいた。「またおいで。今度は一人でも大歓迎だよ」と言われて、再び顔が爆発するまであと数秒──
「……剣城君?」
「送る」
「えぇぇえっ!?いい、悪いです!!」
「……」
「む、無視しないでください!」
むっとして剣城君に言うと、剣城君はまさか私が反抗するとは思っていなかったようで、驚いた顔をしていた
すぐに、フンと鼻で笑うと前を歩きだした
あれ、私の家知ってるんだ
「……」
「……」
「……」
「……、」
おかしい
一緒に帰っているのに無言だ。気まずいったりゃありゃしない。耐えきれない
「……剣城君、今日はありがとうございます」
「!」
「剣城君のおかげだから、」
「……それは本心か」
「……え」
「答えろ」
私より少し前を歩く剣城君が、足を止めてじっとこちらを見てきた。その不思議な感覚に、思わず生唾をのみこむ
ああ、まずった。本心かどうか。本心からなのは本当だ。勝利したのは、剣城がいてからのことだった
でもなんで、剣城君が、そんな辛そうな顔しているのかな
「……本心ですよ」
「ッじゃあ、なんでんな顔すんだ……!」
「んな、顔?」
「………あの時も、お前はずっと、」
「うひゃぁ!」
がっと肩を掴まれ、剣城君が顔をうつむかせる。目の前には彼の旋毛が見える。肩にはぎりぎりと痛いほどの力が。しかし、剣城君の肩は揺れている
「……兄さんッ」
兄さん?
「ちょ、ちょちょっとまって、くださ、剣城君」
「ッ!」
「兄さんって、どういうこと──」
「……なんで俺が兄さんのところに連れて行ったかわかるか」
「……?」
「……お前が、」
兄さんと同じ笑い方するからだ
あまりにも酷似すぎて
お前に泣かれると困る
お前の涙は嫌いだ
「だから、俺はお前が嫌いだった」
頼むから、頼むから
「もう二度と、そんな顔するな」
「つる、つるぎく──」
こつんっと、おでこにい衝撃が走る。剣城君が脱力し、私のおでこに寄りかかったのだ。こ、これは……なんという、複雑な気分なのだろうか
剣城君の懇願するような顔はレアだから、とりあえず背中をぽんぽんと叩いた
そしたら、先ほど病室で見せたような柔らかな雰囲気へとなった。その様子からそんなに似てたのかな、と思う
「……聖帝に警戒しろ」
「ん、」
「……わかってるのか」
「多分」
「………」
今度こそ、剣城君が嫌そうな顔をして私から離れた。……なんか失礼だなぁ
「ふふ、ありがとう剣城」
「!!」
目を見開いた彼をおいて、私は小走りで家へ向かった
"兄さんににてる"
私って、優一さんみたいに笑ってたのかな
fin
(ん、て、え。雅野君からメールきて……うわぁ!?電話!?)