青春白書
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俺以上の泣き虫、と言えば彼女は怒るだろうか。俺は、泣き虫だと自覚してはいるが、それ以上に彼女は脆いと思う
なんて失礼なことを考えるが、ここ最近俺はあいつの涙しかみていない。練習の時まで、泣きそうな顔をされるのはキャプテンとして困る
チームメイトなのだ、仲間なのだと言いたいが監督が試合に出さない。なぜだか、わからないが
彼女が最近泣きそうな顔をする原因は100%そのことだろう
「……監督、本当に10人で戦うんですか」
「ああ、これでいく」
「……わかりました」
最終確認として円堂監督に聞いてみたが、やはり答えは変わらない。キャプテンなのに、何もしてやれない。罪悪感に襲われ、ちらりと彼女をみれば、やはり泣きそうな顔をしている
視線に気づくとすぐに、無理やり笑みを作った。そんな顔を、させたかったわけじゃない。自分の無力さに腹が立つ
「私は大丈夫です。神童さんアルティメットサンダー絶対決めましょう」
俺は彼女に聞きたい。肩を掴んで、声をあげて、理性などどこかへ忘れて「なぜ泣かないのか」と「どうして笑えるのか」と
「……ああ、そうだな」
そんなことをしても、きっとこいつは、また静かに一人で泣くんだろうな。頭を撫でれば、彼女は少しだけ微笑んだ
前半の人手不足に、誰もが色羽を求めた。心から、一人ほしいと。そんなときに剣城があらわれる。今まで散々掻き乱してきた剣城だ、今回ももしかしたらと不安に駆られるみんなだがそれも色羽の言葉に覆された
誰よりも試合に出たいのは彼女なのに
なぜ
「私は剣城君を信じます」
もし彼女がそう言わずとも、監督は剣城をチームに入れただろう。そしてきっと監督は最後まで彼女を入れようとはしなかっただろう
なぜだか俺にもわからない。監督は一体何を考えてるのか
「……っ」
「神童、気持ちはわかるが今は試合に集中するぞ」
「……あぁっ」
霧野の言葉に、気持ちを切り替える。視界の端に移った、震えた肩
すまない
その涙を拭いてあげることもできないなんて。
でも俺は、
いつまでも神童さんじゃなくて「神童」と、彼女と同じ立場になりたいと、二軍の時みたいに、いつも笑っていてほしいと
望んでいる
そして円堂監督と、久遠監督が色羽に「お前はジョーカー」だと言った
「ジョーカー」
その意味が何を表わしているなんて
「……まさか、」
今まで試合経験のない色羽のデーターをフィフスセクターに取られないように、試合に出していなかったというのか
"切り札"
として考えられるのは、それだけだ。敵は色羽を知らない。だけど、あんまりじゃないか?
あんなにもチームのために努力を惜しまない色羽への、拷問のようだ。
「だからだ、神童。あいつは貯めてためて爆発するタイプだ」
「だからってッ」
「時期に、化身が出るだろう」
「……!?」
「化身の可能性は前からあってな。フィフスセクターに目をつけられてはいたんだ」
「……だから出すわけにはいかなかった、と」
無言でうなずく久遠監督に、何も言い返せなくなる。時期に化身が。──でも、本当にそれでいいのか?
試合中に爆発されて、出た化身を頼りに戦えというのか
「それじゃ、ただの利用してるだけじゃない、ですか……」
サッカーが好きという純粋な彼女の気持ちを
俺も、色羽も泣き虫だと思う。だが、彼女は俺とは違う。ただ泣き虫なだけではない。理不尽な扱いを受けながらも、しっかりと前を向いて、努力を続けて、いつか絶対試合に出ると、信じているのだ
強さゆえの、泣き虫
今日、久しぶりに泣いた
fin