青春白書
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「おーおー、今日もすっごいの出たね」
「……」
「……あの人って天河原中のキャプテンじゃないですかぁ」
「ちゅーかこんなとこで特訓してたのね」
「……うぜぇ」
「倉間ひど!」
あいつはバカだ。腹立つほど馬鹿だ。無視しようと決めこめても、そのバカさ加減にいつも振り回される。セカンドのことといい、一乃のことといい。本当に無茶苦茶な奴。
何度振り回されたことか、考えるのも嫌だ。……でも、そのバカに振り回されてる俺も、相当バカなのかもしれない
見下ろす河川敷
目の前に広がる光景に腹が立った
──あいつだ
あいつが他校の生徒と特訓してやがる。練習の後に、バカじゃないのと言いたくなる
ただひた向きに、ボールに食らいつき自分のテクニックに磨きをかけている彼女。
そんなことしたって、試合に出れないのに、無駄な努力じゃねぇかと怒鳴りたくなる
「うっわ、今の痛そう」
「あわわ、無茶ですよぉ」
「……チッ」
「ちゅーか、なんでそんなに不機嫌なのさ。倉間ぁ」
「お前が寄ろう」って言ったんだよ?と言う浜野をとりあえず殴っとく。黙れ
「……お前ら」
「「!」」
「来てたのか」
「……別に、たまたま通りかかっただけだ」
本当に、通りかかっただけだ。
後から来た神童と霧野はなぜか俺達の隣にくる
「ここずっと、ああやって特訓してるみたいだ」
「……あいつなりに努力してるんだな」
「……倉間君」
「試合に出たいのは、ゆうびだ」
神童、霧野、速水と、そして最後に神童が俺に言った。
どうせ三日坊主だろ、って思って興味本位で見に来たが……毎日毎日飽きもせず、河川敷にやってくる
……出してくれるかも分からないのに
「本当、バカじゃねェの」
試合に出るために、特訓を重ねるなんて。
勢いとはいえ、この間言ってしまった言葉を後悔する。「試合に出てない奴には分からないだろ」と
その言葉を言った瞬間、あいつの顔と言えば
「……」
マジ泣きしそうな顔だった
試合に出れない原因も分からずに、悔しい思いをしてるのはあいつだって同じだ。練習にも真面目に参加し、一年と一緒になって本当のサッカーを取り戻そうとしていたり
決して実力がないわけでもない
そして又来る日も。
いつの間にか、一人増えたり……
2対1という無茶苦茶なことしたり
「なんで監督は試合に出さないんだろうな」
「え、神童も知らないのか」
「……ああ」
「ちゅーか、円堂監督はこのこと知ってるの?」
「一応」
「えぇ!?そうなんですかぁ!?」
毎試合の度、あいつは目を赤くしてベンチに控えている。この間の万能坂中との試合の時だって、普段からは想像できないほどの大声を上げて、浜野に危険を知らせようとしてくれた
マネージャーの喝を聞き、はっとした。ベンチにいたって、同じサッカー部の仲間であるのに代わりはない。一緒に、戦っているのだから
「……帰る」
お前の努力も知らずに、勢いだけであんなこといって悪かったな。
アイツに伝わったかどうかなんて関係ない。バカなんだから、それくらい自分で考えろ。
「ばーか」
夕焼けが憎たらしいほど綺麗だった
ふと差し掛かったところに、溶けた液体の中に、当たりと書かれていたアイスの棒が落ちてあった。
その棒を見て、ふとアイスが食べたくなる
「浜野、アイス奢れ」
「ハイハイ、今日だけだよー」
「ははは、浜野君!」
「え、速水も?」
「だ、ダメですか」
「ちゅーか一番安いのね!」
仕方ないなーと言いながら、しっかり奢ってくれた浜野。
久々のアイスも、悪くなかった
fin