青春白書
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「ゆうび、変だと思った選手はいるか?」
「えっと、化身使いは勿論ですが……あの、」
「龍崎と、御門……か。他は?」
「……あの、MFの6番、」
「飛鳥っと」
「か、髪の毛の赤い……西園君と張り合ってた人、です」
「……あの4人か、なるほどな。分かった。とりあえず対策を」
とんとん、とバインダーをペンで叩く音に、ふぅっと息が漏れる。
あの時にふと言ってしまったことを、休憩で聞かれるとは思ってもいなくて。呼ばれたときは心臓が飛び出るかと思った
そんなわけで、円堂監督と春奈先生と私で、輪を作って選手の名簿を確認していた
「これだけやって上手くいかないのにどうやって成功させるんだよ」
選手たちの方で何か話し声が聞こえてきた。この声は倉間君だ。声のしたほうを見れば、なにやら雰囲気が悪い。そんな話し声を聞いた円堂監督が、皆の元へ歩いていく
残された私と春奈先生は不安げに顔を見つめあった
「諦めるな。諦めなかったものだけに、掴めるものがある」
円堂監督の言葉に、顔を俯かせる皆。──と言われても、どうすれば。と言いたげな顔をしていた
「あと、一人いてくれれば……」
速水君のぽつりとつぶやかれた言葉に、皆がこちらを見てきた。ダイレクトにみんなと視線がぶつかり、肩がはねた
じっと、懇願するような速水君やみんなの視線に居所が悪く、言葉に詰まった
「監督……」
誰がか、そう声を出した──
「俺を出してくれ!!」
時だった。
「ッ!?」
息を切らせてやってきたのは、なんと剣城君だった
みんなの視線は一気に剣城君へ集まっていく。荒い呼吸をしながら、剣城君は、とんっと自分の胸を叩き、まっすぐ見つめながら言葉をつづけた
「シードとしてじゃなく、一人のサッカープレイヤーとして、俺を出してくれ!!」
「そんなの信じられるかよ」
倉間君の言葉に、びくりと剣城君の肩が跳ねた。瞳は揺れ動き、相手を睨むようなあの表情の面影は一つも見られなかった
──ふと、昨日のことを思い出す。誰かを、大切な誰かを守るために……
そうだとすれば、することは一つ
「私は剣城君を信じます」
気が付けば、言葉が出ていた。ばちりと剣城君の後ろにいた天馬と視線がぶつかった。すると天馬は嬉しそうに笑ってくれ、一歩前に出た
「俺も剣城を信じます!」
「天馬……」
不満だってあるかもしれないけれど、剣城君のサッカーの上手さは本物なのだ
その強さも、サッカーが好きじゃなきゃ身につくものではない
──万能坂中との試合に、彼のプレーを見せつけられたのだから、否定の言葉など出てこない
「剣城君の、プレーは。サッカーが好きだからこそできるものだと、そう思います。だから私は、信じたいです」
自然と言葉が出ていて、自分がどんな顔をしているかは分からないが、つらつらと話す。
目の前の剣城君は、眉を下げて、どうしようもないくらい弱弱しい表情をしていた。
天馬に続いて神童さんと皆が「信じる」と肯定してくれ、最後に倉間君も「一人足りないしな」と受け入れてくれた
「よし!出ろ、剣城」
「──はい!」
後半戦
11人そろった雷門イレブンが、フィールドに立った
「信じ、てます。」
頬を伝った液体は、地面に落ちて行った
22.VS帝国・後半戦
剣城君を入れたことで、試合の流れは変わった。アルティメットサンダーに何度も挑戦するチャンスを得ることができた
1度目は失敗だった
でも2度目は──
成功した
「"アルティメットサンダー"!!」
あんなに堅かった帝国の守備を、アルティメットサンダーによって打ち砕く。守備がない今、絶好のシュートチャンスだ
そこに天馬が走りこんでいき、見たことない速さで風を纏った"マッハウインド"
そのシュートは、雅野君のGK技を破り、ゴールに突き刺さった
そのあとの展開は、みんなが本気で戦っていた。お互いが多くの必殺技を出し合い、ぶつかり合い、一つのボールを追いかけていた
点差は3-2
雷門中が、帝国に勝ったのだ。その影響力は、観客席に座っていた彼らにも伝わった
点数を取ったのは、まさかの全員1年生という事実に観客のボルテージは最高潮だった
「私がいなくても勝てる……んだ」
じゃあ、私のいる意味は?
ぐちゃぐちゃの気持ちが、喜びよりも大きくて、うまく笑えなかった
fin