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「……監督、本当に10人で戦うんですか」
「ああ。これで行く」
「……わかりました」
ちらりと遠慮気味に見た神童さんに、笑顔で返す。
なんてことだ、私としたことが。……試合前に気を使わせるなんて。選手としてあるまじき行為だ
「私は大丈夫です。神童さん、アルティメットサンダー絶対決めましょう」
「……ああ、そうだな」
いつぞやの"薄ら笑い"を意識して、声を掛ければ神童さんは、ぽんっと頭を叩いてくれた。……ちょっと嬉しかった。
「……なんで円堂監督は色羽さん出さないんですかねぇ、」
「知るかよ」
そんなわけで──いよいよ帝国学園との試合の日がやってきた。
剣城君は来ずに、私はベンチで。
雷門イレブンは作戦通り10人で試合に挑むことになった
チラリ、と帝国学園側のベンチを見れば、ちょうど見知った顔と目があった
「「あ」」
お互いに声が出てしまった。
……雅野君だ。彼は驚いたように目を丸くすると、今度は私の来ているジャージを見て眉をひそめていた
きっとあちら側も、選手の名簿くらいは目にしていて、私が選手であることは把握済みだろう
"出ないんですか?"
と口パクで言われた。……意外と分かった
"ハイ。今日もまたベンチです"
と返せば雅野君は、困ったように頭を掻いていた。が、しかしすぐに真剣な顔つきに戻る
だから私も、雅野君から視線をずらし、皆を見た
今日は試合で──雅野君は、敵だ
VS帝国学園・前半戦
試合早々、私たちは帝国学園の凄さを見せつけられた。流れるような連係プレーを見せつけられ、今までの敵とレベルが違うのをまず。
そして、ノーマルシュートの威力ときたら……。三国さんの必殺技を持ってしてでも、後ろに押されるほどの威力だ
反撃しようと、こちらも果敢にせめるが……、帝国の堅い守備に、なす術がない。
やはり雷門には、強敵相手に10人で戦っているという不利な点があるのだろうか。なんせ、そのために、攻めきれずに、帝国のペースに持っていかれてしまったのだ
強力なシュートが放たれ、緊張が走る。神童さんの指示で、全員でなんとか攻撃を一時的に防ぐことができた。
つまり、たかがノーマルシュートを、雷門は全力で止めなければ防ぐことはできないのだ
どんなにもがいても、一人フリーにしてしまう瞬間がある。
そんな彼らを見て、マネージャー達はぼそりと思うことがあった
「どうして監督はゆうびを出さないんだぁ?」
「それ、私も気になってた……」
「へ、?」
「どうなんだよ?なんか心当たりとかあるのか?」
水鳥さん、茜ちゃんがぐるりとこちらを見る。いきなりされた質問に、なんと答えていいかわからず、思わず狼狽えてしまった
「きっと……、」
私が、弱いから。
と言おうとしたが、円堂監督は"違う"と言ってくれた。きっと、何か訳があるんだ。そうだ、きっとそうに違いない。と自分に言い聞かせた
「監督は、剣城君を待ってるんです」
「理由になってねぇぞ?」
「そう信じてますから」
「……ま、アンタがそう言うならいいけどよ」
「ふふ、ありがとうございます。水鳥さん。茜ちゃん」
気を使ってくれて。
お礼を告げれば、水鳥さんは顔を真っ赤にして顔をそむけた。水鳥さんや茜ちゃんの気持ちが嬉しくて、顔が緩む
カシャッ
「今の顔……イイ……」
「!?」
「あ、茜ちゃん!?」
「お願いそれ消して!」と言えば、茜ちゃんは笑顔を浮かべて、フィールドに目を向けた。結局消してくれないようだ。……うう、絶対変な顔してたって……。
ガックリと肩を落とした私を慰めてくれたのは、葵ちゃんだけでした
そんなことをしているうちに、試合は展開していく。ボールを奪った瞬間に、雷門はすぐに"アルティメットサンダー"のフォーメーションに切り替わったのだ
これは、つまり……。勝負に出たということだ
しかし、一回目のアルティメットサンダーは成功しなかった
こぼれたボールを神童さんが"フォルテシモ"で押し込む。対する相手は……雅野君だ
雅野君はにやりと口角を上げると、必殺技なしで、神童さんの"フォルテシモ"を掴んだ
「そんな……!」
「シン様の必殺技が、止められた……」
戦力として一番秀でていた神童を止められ、雷門の士気は一気に下がる。そんな中、帝国はフォーメーションを変えてきた
「え……、」
それは、選手を左右に振り分ける。という大胆なフォーメーションだった
そのフォーメーションは、反撃にはもってこいだった。
攻撃に参加していた神童さんが前線にいるため、中盤でゲームメイクをする人がいない。つまりは防戦一方になるという、雷門の弱点を突いてきたのだ
なんとかその場を、西園君のブロックで凌ぐことができたが……
その後も雷門にチャンスが巡ることはなかった。段々と10人で戦うという状況に、不満を抱き始めた雷門が、ざわざわと会話をする
「ちゅーか、なんで監督は黙ってんだぁ」
「知りませんよ……」
「一人、いるのにな」
「どうして監督はゆうびを出さないんだ?」
「そんなの知らないド」
「実力は、あるんだがなぁ……」
「とにかく」
「今は、この状況をなんとかしよう」
神童のこの一言で、また皆は突破口を探すことにしたのだった
監督の目線の先には、西園君しか映っていない。
そのことに気が付いたのはついさっきのことだった。監督が待っているのは剣城君もだが、西園君が上手く飛べない理由もしかり。
どこか緊張して動きが、硬くなってる西園君にとあるアドバイスをした円堂監督
その助言を聞いた西園君は今まで以上に高く、空に向かって飛んだ
その高さは帝国の選手を凌ぎ、"ぶっ飛びジャンプ"としてボールを見事に守りきった
「(こうして、見ると……)」
何かを見据えて円堂監督が、毎試合采配しているのだと分かる。答えではなく、道を示すことで彼を成長させた。……その采配のやり方は、久遠監督に似ている
「(だけど、)」
それと、これとは関係があるのだろうか。不安が募る一方だ。監督が、私を試合に出さない理由は、何なのか……
ギュッと下唇を噛めば、じわりと鉄の味がした。
"悔しい"
西園君が止めたボールを、皆がつなげようと必死に前へ攻めて行った。
……そうして彼らが選択した方法は、二度目のアルティメットサンダーだ。また、今回のアンカーは、倉間君だった
ずぅん
ゾクリ、と不安が押し寄せる。寒いわけではないのに、カクカクと膝が笑っていた。この反応は、初めて化身を見たときと、同じだ
「──!!」
そのまさかだった
龍崎、と言う選手が化身を出す。天河原や万能坂中と同様にシードなのだろう。が、なぜかどこにも拭えない不安が、もくもくと膨らんでいた
なんだか、底知れない不安が溢れてくる
「な、に?」
この違和感は
その直後のことだった。
今までのが、まるでウォーミングアップだと言わんばかりの変わりようだった
本気になったのか、追いつけるスピードではない。
10人で防げるわけでもなく、帝国の選手にシュートチャンスが与えられてしまった
"皇帝ペンギン7"という強力な必殺技を見せつけられ、先制点を帝国に与えてしまった
その後も雷門に手を打つことはできず、帝国にされるがまま
アルティメットサンダーも、完成しなかった
神童さんが化身をだし、先ほどの化身使いと戦うも、弾き飛ばされた
ボールは奪われ、また別の選手へとボールが渡る。
ずぅんっと来た
これは、化身だ
一体何人の化身使いがいるのだろうか。そもそも、帝国にはシードがいるのだろうか
そこで、違和感を覚える
「なん、でしょう、」
「ん?どうしたんだよ」
「い、いえ!」
「何だゆうび」
「え、円堂監督……!?」
「言ってみろ」
「……」
ぽつりとつぶやいた独り言に、返信が帰ってきた。水鳥さんだけならまだしも、円堂監督も入ってきたことに驚いた。しかし、無視するわけにはいかない。不本意ながらも、言葉を探しながら話す
「……なんか、帝国の、プレーに違和感があるんです」
「違和感?」
「どんな違和感だ?」
「は、ハイ、えっと……」
「天河原、中や、万能坂中……の時……は感じなかったけど……。あの、……誰が、シードだとか、分からない、んです」
上手い説明ができないが、唯一言葉にするならこれしかない。以前までの二校では、シードがあからさまな動きをしていたが、帝国ではそれが見られないのだ
「……そうか」
円堂監督はそれだけ言うと、また試合に視線を戻した
と、同時に三国さん必殺技が打ち砕かれ、2点目のホイッスルが鳴り響いた
未だに、不安の正体は掴めない
そんな中、前半終了のホイッスルが鳴った
fin.