青春白書
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"一乃君!"
ふにゃり、と笑う彼女。時には焦ったように名前を呼び、また時には叫ぶように呼ばれることもあった
でも最後には、笑顔で名前を呼んでくれる彼女に、自分はいつも弱かった。
よく青山に「甘やかしすぎ」と言われてたのも、懐かしく思う
「……元気そうだな」
「思ったより、ね」
「ああ……」
あの日、俺達はゆうびのことを一切見ないで退部をした。もし、彼女を見ていたらきっと……。
ぐっと拳を握る
彼女は相変わらず挨拶だけはしてきた。笑顔で、少しさびしそうに。それが俺にとって、とても辛かった
会うたびに、罪悪感に苛まれる。
あんなに慕っていた人を、俺たちは見捨てたのだ。一緒に戦ってきた、仲間を、一瞬で。自分可愛さに、裏切ってしまったのだ
だから、避けた
同じクラスの特権、なんて誰が言ったのか。こういう時に、同じクラスというのを恨めしいと何度思ったことか、考えたくもない
相変わらず彼女はサッカーを続けていた。試合には出ていないみたいだけど……練習には毎回出ていた
「一軍になったんだな」
大人になったなと出かけた口を押える。隣にいた青山がニヤニヤと俺を見てきた
「へぇ、一乃ってば親心?」
「な……!」
「……はは、ごめん冗談」
「……いや、」
親心。嘘ではないかもしれない
あんなに慕ってくれてたのに、あんなについてきてくれていたのに。あんなに、尽くしてくれていたのに。
今じゃ彼女は、一人で、立派に。前へ進んでいる
「なぁ一乃……」
「なんだよ」
「俺達、何やってんだろうね」
「……そうだな」
今日もこんな遠くから、名残惜しく、見ているだけなんて。
自分でも可笑しくて笑ってしまいそうだ
「サッカー部に、未練たらたらだな。俺達」
「……うん」
あの頃に、戻れたら。あの頃みたいに、またサッカーしたい。いや、でも……。またあの時みたいにフィフスセクターの手が迫ってきたら?……虫が良すぎるだろう、と自分が嫌になる
……彼女は、こんな俺達を見てなんと言うだろうか。また、笑顔で、変わらずに声をかけてくれるのだろうか
「ゆうびの笑顔が、みたいな」
「一乃……」
「はは、いっちょ前避けてるのに何言ってるんだろうな、俺」
「……あいつはいつでも笑ってくれるさ。一乃さえ元気なら」
「青山……」
「教室戻ろう。……俺も、一乃と同じ気持ちだよ」
アイツの、笑顔がみたい。
そう言った青山の顔は、泣きそうだった
自分で突き放したくせに、自分から避けた癖に。また前のように、なんて…。都合がよすぎる
「サッカー、したいなぁ」
「……うん、」
気づけば、二人とも泣いていた
キミの笑顔が見たい
どうしようもないくらい、またゆうびと一緒にサッカーがしたくなったんだ
「……どうかしてるな、俺達」
「そうだ、な」
こんなところで、泣きながら、傷の舐めあいなんかしてさ
そうして今日も、雷門イレブンがフィフスセクターの勝敗指示に逆らったというニュースが耳に入ってきたのだった
fin.