青春白書
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程よい疲れが残る中、朝練は行われた。本気のサッカーをやると決めた彼らの動きは素早いもので、感嘆の息が何度も出た
「「あ、」」
「あ、」
朝練が終わって、たまたまお手洗に行きたくて、廊下に出たときだった。ばったりと、出会た
「一乃君、青山君」
「ッ」
「……」
大好きな、人たちに
バツが悪そうに目を逸らす青山君。何かを言いたげに、眉を下げて視線を泳がせる一乃君。気まずい雰囲気が、その場に漂った。
「おはようございます、二人とも」
「「!」」
なぜか私は、笑って挨拶することができた
「……朝練、終わったのか?」
「ハイ」
「そうか」
「気が向いたら、いつでも来てくださいね。待ってますから──」
自然と出た言葉に、二人を勢いよくこちらを見た。目を見開き、そして二人はお互いの顔を見合わせる。そこで会話が途切れた。
でも一乃君や青山君は立ち去ることはせず、目線を泳がせては口を開閉させていた。その表情に、懐かしさが溢れ、口元を緩ませる
「ゆうび、……」
「はい?」
「あ、いや…その、」
なんでもない、と言って、私の隣を通り過ぎて行き、教室へ入っていった一乃君。
「久しぶりに名前呼ばれました、」
残された私は、緩みまくる口元を隠すように、手で覆った。名前を、呼んでくれた。セカンドを止めてしまったあの日以来のことに、地味に嬉しかった
彼女の後姿は、小躍りしているように軽かったとか
19.可能性の信憑性
「"ボルケイドカット"!」
「おうおう、今日は一段とやる気に満ちてるな。ゆうびの奴」
「ちゅーか、スキップして練習に来なかったっすか?」
「……意味わかんねぇ」
「なんかいいことでもあったんですかねぇ……」
車田先輩の言葉に、同じクラスである3人組が言葉を返していた。浜野、倉間、速水、と必殺技を繰り出してきた彼女を見つめる。
話に出てきた彼女は、今日は一段と生き生きとしていたのだ
「なんかイイことでもあったの?」
「あ、浜野君。……へへへ、ハイ」
「!」
ふにゃりと笑った彼女の顔に、ビシリと雷門イレブンの動きが止まった。……彼女がこの顔をするのは大抵"とある人物"絡みである
ピクリと聞き耳を立てて、言葉の続きを待つ
「一乃君と、青山君と。少しですがお話できたんです」
やっぱりか。と雰囲気が物語った。しばらく忘れていたが、彼女は一乃主義者だ。
……本人は憧れと言っていたが、本当に恋愛感情がないのか気になるところだ
「あー……。ちゅーか、その二人ならさっき俺も会ったよ?」
「!本当ですか?」
「うん。さっきサッカー塔のところでさ」
「そうですか」
またふわりと笑った彼女に、浜野は「やっぱ好きなんじゃん」と思っていたとか。
しかしそれを表情に出さないところに、彼の器用さが見える
一連を見ていた車田先輩たちも同様に息を吐いた
「また一乃絡みか……」
「またかよ。どんだけ好きなんだ」
「"大好き"でしたっけ」
「ははは、よく覚えてるな、倉間」
「ッ三国さん、車田さん!!」
「何してんの?」
「うるせーよ浜野!」
「えぇっ!?理不尽!!」
行われていた会話を聞かずに、ゆうびの足は天馬と西園たちの所へ向かっていた
「ゆうび絶好調だね!」
「今日は調子がいいです」
「……いいなぁ」
「?どうしたんですか、西園君」
「ねぇゆうび……。必殺技ってどうやってできるの?」
うるうると泣きそうな顔で見上げられ、きゅんっと胸打たれそうになったのを我慢する。彼は真剣なんだ。しっかりと聞いてあげなくては
「必殺技、ですか」
「うん。今一生懸命特訓してるんだけど……」
なかなかできなくて、と呟いた西園君に、昔の自分の姿が重なった
「……得意分野を生かして、何かしたいって言うイメージ、かな」
「イメージ、?」
「ハイ。身に着けて、こうできたらなというイメージをしっかり持つことが大事だと思います」
「イメージ……、そっか!ありがとうゆうび!!」
「……西園君ならできますよ。応援してます」
「うん!!」
なでなでと西園君の頭を撫でれば、西園君は嬉しそうに頷いて、ボールに食らいつきに行った
「必殺技、かぁ」
西園君が何度も何度も食らいついていく姿を見て、私も体がうずうずした。
試合に出してもらえるように、私も……
「(……河川敷、使えるかな)」
頑張る人を見ると、私も頑張れそうな気がする。西園君の必殺技が完成するよう、祈った
結局、西園君の必殺技は今日の部活時間内で完成はしなかった
********
所変わって、河川敷。
今日も喜多君と西野空君に、付き合ってもらった。成果はぼちぼちで、どんな必殺技にするかもイメージできた
今は、特訓を終えて3人で帰路についている
「大分動きが良くなったな」
「ま、やった甲斐があったってやつぅ?」
「お二人のお蔭です。本当に、いつもありがとうございます」
「いや。ゆうびの飲み込みが早いからだ」
「ま、まだまだだけどねぇ」
「……西野空」
「へいへい。そんな顔しなくてもさぁ」
相変わらず間延びしている西野空君。
彼らの言い合いに苦笑いしながら、寄り道したコンビニの袋が音を立てる。
ついでに、アイスを3人で帰り食いだ。……私のおごりで
はむ、とアイスキャンディーを口に運ぶ
「ゆうびサン?」
「ッふ!?」
「ちょっとぉ、汚いんですけどぉ?」
「大丈夫かゆうび」
アイスを口に入れていたからか、んぐっと詰まりそうになる。げほげほと咽ている私を、西野空君は相変わらずだけど、喜多君が背中を摩ってくれた。……紳士!少しは見習おうか、西野空君
声をかけてきたと思われる人物は、パタパタと小走りで近づいてきた。段々とその人物が誰であるのかが判断できた
「すみません。あ、やっぱりゆうびサンですね」
「み、雅野君……?」
「覚えてくれてたんですか。嬉しいです」
声をかけてくれたのは、いつぞやの雅野君だった
にこっと受けの良さそうな笑顔を見せた彼に、西野空君がチッと舌打ちした
「ゆうびの知り合い~?」
「え、あ、ハイ。知り合いというか……」
「友達、ですよ。天河原中の西野空さんに……喜多一番さん?」
「……へぇ、僕らのこと知ってるんだぁ」
「止めろ西野空。……悪いが失礼しても?俺たちは今忙しいんだ」
「すみません。ゆうびサンがいたので声を掛けたくて」
「……」
「じゃあゆうびサン。またいつか」
「あ、は、ハイ!」
手を振ってどこかへ行った雅野君。いきなり現れ、いきなり去っていった。……忙しいか、今?
残された私たち3人は呆然とその場に立っていた。……と、いうか。なんですかこの雰囲気。何か悪いことしたかな……。一言で言うなら……お、重い
「ゆうび、あいつと知り合いなのか?」
「あ、ハイ。一度ここで会って、」
「アイツ、帝国の新しいGKだよぉ。知ってる?」
「……へ、?」
「……その様子じゃ知らないみたいだな」
ならいいんだ、と頭をぽんっとたたいた喜多君。いつの間にかアイスは溶けていて、とたりと手に水滴が落ちてきた
え。雅野君もサッカー部なの?
「帝国って確かぁフィフスセクターに一番近いトコじゃなかったっけ、喜多」
「……たしか、な」
「フィフス、セクターに一番近い……?」
二人の言った言葉に信じられなくなった
でも、雅野君は一年生なのに2年生の彼らを知っていた。……ということは、各校の情報を持っているということだろうか
「……やっぱ家まで送る。どこ?案内してよぉ」
「え、いいですよ!悪いですし……」
「こっちだ」
「えぇっ喜多君!?」
「(天河原中の喜多一番と西野空宵一。二人ともサッカー部だ。しかも……、ゆうびサンジャージだった。……もしかすると)」
「どうした雅野。もう用事は済んだのか」
「コーチ!!ハイ、お時間を下さりありがとうございました」
「……今の、雷門中と天河原中か」
「そうです」
「……そうか」
「「(まさか、ね)」」
その可能性が、ないとは言えない
fin.