青春白書
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ゆうびは不思議な人だと、俺は思う。2年生なのに、倉間先輩たちとは少し違う。まるでほかの先輩たちとは違う空間にいたようなそんな雰囲気を持ち合わせていた。もちろん、サッカーの面でも尊敬してるし、昇格テストの時に見せた必殺技だってすごいと思った。
それでも、ゆうびを先輩だとは分かってても、呼び捨てにしてしまう自分がいた
「ねえ、ゆうびもそう思うでしょ!!」
「もー天馬ったら、毎度毎度失礼じゃないの。一応先輩なんだからね!──すみませんっ本当に」
「あはは、いいですよ葵ちゃん。私は気にしてませんし」
「先輩が、そういうならいいんですけど……」
「この際だから、葵もゆうびのこと呼び捨てにしちゃえば?」
「私は天馬と違ってちゃんと敬ってるの!」
「俺だってちゃんと敬ってるよ!ね、信助!」
「そうだよ!!ねっゆうび!」
「ふふ、」
「「!!」」
「──仲良いですよね、3人とも」
そんなお母さんみたいな顔をして笑われたら、何も言えない。
思わず葵と顔を見合わせると、葵も顔を赤くしていた
「色羽先輩って、お母さんみたいな表情で笑うよね。思わず私も照れちゃった」
「そうそう!なんかこう……ふにゃっていうか……」
「僕もそう思ってたんだよね!」
「は、はぁ……?」
そうなんですか?と反応に困ってるゆうびに、俺達は笑ってしまった
「……緊張感のないやつらだな」
「ちゅーか、バスの中なんだけどね~」
「……うっせぇ」
8.5.少年は語る
──初めて会った時、てっきり新入生だと思ってた。あの時。雷門サッカー部を潰した実力をもつ選手が蹴ったボールが、女の子に当たりそうになったのだ。彼女は悲鳴を上げるのでもなく、逃げることもなく。あろうことか、片足を出して蹴り返したのだ。
その女の子がゆうびだった
あの瞬間から、ゆうびのことは気になってた。物腰が柔らかくて、なんだかいい匂いがして、柔らかくて。そして、どこか消えちゃいそうで
「天馬君」
へにゃっと笑う彼女は好きだが、悲しそうに薄く、そして消えそうな笑顔は苦手だった
栄都学園との練習試合がある今日
皆の足をひっぱちゃいけないと、特訓で怪我をした俺に対して「ありがとう」と言ってくれた唯一の先輩。
普通に嬉しかった。でも……ゆうびなんだか悲しい顔だった。「応援してます。天馬君」と言われて、ゆうびの気持ちを背負って、試合に出るんだと改めて感じた。だから「うん、ゆうびの分まで頑張るよ」と返事を返した
試合が始まって、俺は少なくとも先輩たちのレベルの差を感じた。──でも、この試合中の先輩たちは、わざと気を抜いていたのだ
練習中の先輩たちなら、さっきのパスだって普通にとれていたはずなのに
「──なんでですかッ!キャプテン!!なんで本気で戦わないんですか!!先輩たちが本気を出せば、栄都学園の守りなんか簡単に崩せるじゃないですか!なのになんで……なんで本気を出さないんですか!!
先輩たちは負けてもいいんですか!?」
「いいのよ、負けても」
「え、?」
何も知らなかった俺は、音無先生の口から聞かされたことに驚いた。と、同時に本当のサッカーをしない彼らに腹が立った
「天馬君、」
思い知らされた俺を、ゆうびだって悔しいはずなのに、悲しそうに笑って声をかけてくれた。その笑みから、俺を元気付けようとしてくれてるのだと分る
ぎゅっと心臓を握られた気分だった
俺は、ゆうびの分まで頑張るって約束したのに。試合に出れなくて、うずうずしてるのはゆうびなのに。本気のサッカーができない先輩たちのために、泣いてたゆうびが。俺に、
「──ゆうび、俺……」
丁度後半のホイッスルと重なって、そのあとの言葉は言えなかったけど
"ゆうびの分まで頑張るから"
──だから、君には笑顔でいて欲しいな。君が泣いてると、なんだか俺も悲しいよ
「サッカーが泣いてるよ!」
********
「天馬、!」
「──あっゆうび」
誰よりも真っ先に駆けつけてきたゆうびを支える。ちょっと想定してなかったことに、びっくりした
ゆうびは、泣きながら、笑いながら。お疲れ様、よく頑張ったね、ありがとう、と。声を出した。だから、皆に気づかれないようにゆうびの背中を撫でた。──その直後に、水鳥さん、信助と俺に飛びついてきて、支えきれずに倒れちゃったけどね
もみくちゃになりながら笑ってるゆうびを見て、やっぱり君には笑顔が一番だと思った
「言ったでしょ?俺、ゆうびの分まで頑張るって!だから泣かないでよ」
「っ~~~」
顔を真っ赤にしながら、もっと泣き出すゆうびは小さい子供みたい
でも……、その泣き笑いを俺は可愛いと思った
fin.
(ゆうびの片目普通にあった……!)
(な、何あたりまえのこと言ってるんですか)
(へへへ、ごめんごめん)