未来クンヴィSSログ


「そんなに怒ってばかりいたら、皺が増えるぞ!」

クンツァイトに対して怒っているとそう言われ、ヴィーナスは益々怒りを顕にした。
美の女神に向かって、容姿を侮辱される事程屈辱的なことは無い。その言葉に、ヴィーナスは益々怒り、皺を増やす。

「なぁんですってぇ!怒らせてるのは、誰よ?」
「欲求不満か?」
「誰のせいだと思っているのよ!あんたが中々会いに来ないからでしょ?」
「だから会いに来てやっているだろう」

ヴィーナスに怒られたクンツァイトは、あっけらかんとしていた。
普段クンツァイトは、ゴールデンキングダムに住んでいる。ヴィーナスはクリスタル・パレス。
多忙な二人は、中々会うことは無い。
とは言え、クンツァイトは仕事や用事でクリスタル・パレスには毎日くらい来ている。
それなのに、ヴィーナスと会うことなく帰って行く。そのことに対して苛立ったヴィーナスは、遂にクンツァイトにキレたと言うわけだ。

「毎日来ているくせに会いに来ないって、どーゆーつもり?」
「用もないのに会う必要性を感じない」
「あるわよ!私はあんたの妻です!それだけで充分会う理由になるでしょ?」
「そんなものか?」

クンツァイトは理由が無いと会ってはいけないものだと思っていた。対してヴィーナスは、夫婦なのだから毎日会って当然と考えていた。
単純なる方向性の違い。しかし、大きな問題だった。

「あんたねぇ、私がずっと自分だけを想っててくれるって自惚れてるんじゃないでしょうね?私だってモテるんだから、努力しなさいよ!」
「肝に銘じておく」

自分はモテる事を主張するも、クンツァイトは業務的に答えるだけだった。
どう考え、どう思っているか。さっぱり伝わってこない。ヴィーナスは、益々腹立たしく思った。

「本当に分かっているの?あんまり放っておいたら浮気するって言ってんの!」

元々惚れっぽい性格でもあるヴィーナス。モテる上に、その気になれば男の一人や二人や三人や四人すぐに付き合えると豪語した。

「俺以外の男で満足出来るのか?」

追い詰めているにも関わらず、尚も余裕の姿勢を崩さない。

「随分と余裕ね!」
「俺以外の男がお前を満足させられるのか?お前を理解出来るのは、俺しかいないだろ」
「ムカつく奴!」
「お前、俺に惚れてるだろ?」
「どこから来る自信なのよ!」

クンツァイトに言われた通り、ヴィーナスはクンツァイトをとても愛していた。
だからこそ、自分ばかりが気持ちが大きくて一方通行みたいになっている事に、不満を持っていた。
それをも見透かされている用で気に入らない。

「ふっ図星か?」

形勢逆転して追い詰められて焦るヴィーナスを見て、クンツァイトは満足気に微笑んだ。
たまに見せる、自分にしか見せないこの顔にヴィーナスは弱かった。不覚にも、ドキッと鼓動が高鳴る。

「誰がずっと額に深いシワが寄ってて、白髪のアンタなんか!……ッんん」

手を伸ばし、額を人差し指で触りながらそう言うと、その手首を掴んだクンツァイトは、ヴィーナスの唇に初めから深く口付けた。
お喋りなヴィーナスには、黙らずには何より効果的だと長い付き合いでクンツァイトは熟知していた。

「ヴィーナス、愛している。誰よりも……」
「……バカ!」

唇を離すと、愛おしそうな顔でストレートにそう囁いてきた。
その言葉を聞いたヴィーナスは、返す言葉も失くし気持ちが満たされて行くのを感じた。

「ズルい……」

クンツァイトには敵わないと、抱き締められながら満足しつつも腹立っていた。




20230408 ヴィーナスの日&皺の日

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