月に代わってお仕事よ!



「確か書類仕事だっけ?」
「ええ、そうよ」
「うげぇ、つまんなそう……」
「本っ当につまんないわ!」

書類仕事を一手に引き受けているマーキュリーとゾイサイト。それを聞いたヴィーナスは、想像しただけで嫌気がさした。
そこに同調したのはマーキュリーでは無く、ゾイサイトその人だった。

「ゾイサイトでも音を上げるとはな」
「音を上げたくもなるわ!書類もストレスも溜まりまくりよ。どうにかして!」

マーキュリーと同じ様に頭脳派のゾイサイト。書類仕事も苦ではないはず。それなのにストレスを抱えていると訴え始め、クンツァイトは驚きを隠せないでいた。

「そんなに量、多いのか?」
「多いってもんじゃないよ!書類の山を片付けると、それ以上の書類をパラスが運んで置いていくのよ?」
「うわあ、悲惨」
「せっかくマーキュリーの顔が見えたと思ったら、また見えなくなる。あの子、出禁にしてやろうかと思ったわ」
「パラスが悪いわけじゃないのに……」
「結局、スケベ心が働いただけじゃねぇか」

ゾイサイトの説明に、最初同情していたヴィーナスとジュピターだったが、理由を聞くとただの下心の塊だった。
ネフライトが自身を棚に上げ、指摘する。

「私は楽しいわよ、書類仕事」
「マーキュリーはそうだろうな」
「ジュピターが美味しいお菓子持ってきてくれるから、その分捗るもの」
「くそぅ!せっかくマーキュリーと一緒の仕事だってのにぃ」
「ま、仕事だしな。楽しいだけじゃねぇって事だ」
「うるさい!お前はどうなんだよ、ネフライト?」

ゾイサイトとは違い、マーキュリーはマイペースだった。書類仕事を天職のように思っている。
差を感じているゾイサイトにネフライトが釘を刺す。すかさずゾイサイトは質問をする。

「楽しいぜ♡」
「チッ!やっぱり楽しいんじゃないか!」
「いや、だってジュピターと一緒だぜ?楽しくないわけねぇじゃん!サイッコーだよ」
「能天気で羨ましいわ」
「ジュピターも楽しいの?」
「まぁまぁかな?」

楽しいと豪語するネフライトにキレ散らかすゾイサイト。
そんなネフライトを見てヴィーナスもジュピターに楽しいのか質問をすると浮かない顔で答えが返ってきた。

「何でだよ?俺といて楽しくねぇの?俺はハッピーだぜ?」
「いや、ネフライトと一緒なのは楽しいよ。でも、正直仕事は楽しくはないね」

正直に暴露するジュピターにヴィーナスとマーズがヘッドバンギング並に頭を頷かせた。

「そうよ、例え旦那と仕事出来たって結局仕事は仕事なのよ」
「ましてや向いていない仕事は尚のことですわ」

ヴィーナスとマーズはこぞってアイドルや神社の仕事の方が楽しいと反論した。

「なんの仕事だっけ?」
「一応経営者の接待」
「それは面倒臭いわね」
「俺は刺激になって楽しいけどな」
「堅苦しいし、何言ってるか分かんねえ」
「ふふふ、正直ね」

経営にまるで興味が無いジュピターは経営者が喋っている事がさっぱり理解出来ずにいた。

「みんなそれぞれストレス溜まってんなぁ」
「ジェダイトとネフライトとマーキュリーだけは不満なさそうだけどな。あ、クンツァイトもか?」
「そりゃあ宇宙で一番愛している人と一緒に仕事してんだぜ?それだけでサイコーじゃねぇか」
「そうそう、嫌だなんて言ったらバチが当たるさ」
「俺は仕事出来れば何でもいい」
「チッ!」

嫁と仕事が出来る環境になり、それぞれより仕事が楽しくなる四天王だったが、クンツァイトだけは違うようで三人とは違う反応にヴィーナスは面白くなかった。

「いやでもクイーンも本当成長したよ」
「本当ね。こんなに彼女の仕事が大変だなんて思って無かったわ」
「そこはマスターの力も大きいだろうな」
「大半マスターが引き受けてそうだしな」
「特に書類仕事な」
「あの二人は一緒にいられるなら何だっていいのよ。昔からそうだったじゃない」
「ずっと一緒にいてよく飽きないわね」

四守護神は怠けたり勉強が嫌いだった月野うさぎを見ていた。それが、代わりに仕事をしてみると彼女が苦手なものばかり。成長を感じた。
対して四天王はキングの真面目さに言及した。甘えているのではないかと。
例えクイーンがキングに甘えていたとしても根を挙げず頑張っている。それは事実だ。
今回何度か二人の代わりに仕事をこなし、偉大さを改めて実感した八人だった。




おわり

20240404 四四の日

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