現世クン美奈SSログ


「やっぱり夏は花火よねぇ~」
「ああ、そうだな」

俺の横で手持ち花火をしながら美奈子が呟く。
花火をすると言うのは柄ではないが、やはり日本人だからやり出すと風流で良いもんだと単純に思う。
何より美奈子が楽しそうなので、それを見ているだけで満足でもあった。

だがしかし、美奈子と2人でやるのだと思っていたのだが、何故か人間のアルテミスとルナも一緒になってやっていた。
仕事から帰宅して一息ついていると美奈子から電話で、花火するから家に来いと呼ばれて来てみればこの2人が先に来ていた。
何故寄りにもよってこの2人なのかさっぱり訳が分からない。
別に不満がある訳では無いが、美奈子と2人だと思い込んでいたので複雑な心境だった。

「何故お前がいる?」
「俺達もやりたかったから」
「何カッコつけてんのよ?あんた達の仲が中々発展しないからでしょ?」
「発展って、別に私たちそんなんじゃ……」

何だこのやり取りは?と若干置いてきぼりを食らう。
今までの美奈子の行動パターンから、お節介を働いたのだろうことがこの置いてきぼりの会話から推測出来た。
そしてアルテミスの奴は何故か格好つけたがっているらしい。
つまりは美奈子主催で俺とこの2人の仲を取り持とうと言う事のようだ。
また美奈子のお節介が炸裂していると思うと気が重い。

「まだもたもたしているのか?」
「まだ付き合えても無いのよ!」

信じらんなーいと花火をしながら呆れる美奈子。
それより付き合えてないことに俺は驚いてしまった。
とっくにそういう関係なのだろうと思っていたから。
そりゃあお節介したくなると言うのも頷ける。

「一体お前は何をしていたんだ?」
「何って……」
「アルは悪くないの!私の問題だから……」
「どういう事だ?」
「長年、いい友人関係だったし、アルテミスを傷付けたこともあったし……」

要するに今更男としてアルテミスを見れないと言う事らしい。
長く友人関係を続けると確かにそう言った目で見る事は難しい。ましてや相手はアルテミスだ。余計に男としてはみられないのは分かる。
しかし、俺としてもこの先の事を考えるとこの2人には上手くいって貰わないと困る。誠に不本意ではあるが、ここは美奈子に協力するとしよう。

「あれはアルテミスがあぐらかいて余裕ぶっこいてたから仕方ないし、ルナは何にも悪くないのよ?」
「そ、そうだよ。俺が慢心してたから」
「何の話だ?」
「ルナが人間のイケメンにほの字になった話よ」
「ああ……」

確か人間の青年にマジ恋したけど、彼女がいて結局失恋してしまったと言う奴か。前に美奈子が話してくれたな。
まぁ身近にいるから必ず振り向いてもらえると言うのは思い上がりだ。それを知る為にもこの時のルナの恋は必要な事だったんだろうと思う。
しかし、それなのにまだ発展は愚か付き合えてもないとは……。2人とも奥手にも程がある。
その為のお節介美奈子と言う事なのだろうか。

「ルナ、私はルナには幸せになってもらいたいのよ!今まで苦労かけてきたんだもん!みんなだって同意見よ?」
「でも……」

とはいえ当の本人の気持ちがそっちに行かないなら俺達に出来ることはないと思うが……。

「もうその位にしておけ。困ってるだろ?」
「私たちばっかり幸せになって悪いんだもん」
「そっと見守るのも優しさだ」
「……面倒臭くなったな?」
「本人の気持ちの問題だろ?お前も振り向いて欲しいなら努力しろ!俺らが出来るのはここまでだ」
「フォーク投げたわね!」
「美奈、それを言うなら匙な?」

奇しくも美奈子の馬鹿な慣用句でその話はそこで終了となった。
そしてその間中していた花火も残すところ線香花火のみになってしまった。

「後は線香花火だけかぁ……やっぱり花火はあっという間ね」
「そうだな。線香花火だから更にあっという間だぞ」
「じゃあみんなで最後の火、誰が長く落ちないで付いてるか勝負しましょ!」

またか、と呆れたが何だかんだ付き合ってしまう俺も大概美奈子に甘いなと我ながら思ってしまう。
結局線香花火対決は何度やっても美奈子が一番最初に落ちると言う結果になってしまい、不貞腐れることになった。
金魚すくいと同じで繊細なもの故、ガサツな美奈子にはやはり向いてなかったのだろう。
まぁその次に俺が落ちてしまい、美奈子にその都度爆笑される羽目になってしまったが……。
何故元々猫の2人が上手いのか解せない。
猫じゃらしみたいなんだから食いついてすぐに落としそうなもんなのに。




おわり

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