Baby Baby Baby
「でも、今更だし……跡継ぎ問題もあるじゃない」
「それには及ばない。現在、俺たちは地球、月、太陽。そして、ネメシス、この四つの星を守護している」
「一人で四つの星を守護するのは難しいわ。だから守護する星を分担して、あなた達それぞれで守ってもらおうと考えてます」
言われてみれば四つの星を一人では困難だ。
だけど、誰がどの星を守るの?それも揉めない?
「誰がどの星を守るの?」
「貴女にはネメシスを任せたいと思っているわ」
「私がネメシス……」
ネメシスは私が敵の手に落ちて一時期そこに住んでいた因縁の場所。
けれど、余り記憶には無いけれど他の人よりは全然詳しい。あの時の落とし前がつけられると言う事で言えばこれ以上の適任は私を置いていない。
「この子達が立派になるまでは勿論、四つの星を見てもらいます」
「ただ、スモールレディももう900年以上生きている。クイーンとしてやって言ったとしてもそう長くは無い。跡継ぎも暫くは見込めない」
そっか、なる程そう言うこと。つまりは私が女王となり伴侶を迎え、子供を産み育てるまで時間がかかる。それまでの応急処置。
私が突然成長が止まってしまって、いつ大人になるか分からない。それがパパとママを不安にさせていて、色々改革しなければいけなくなったのかも知れない。
「それに、一人は寂しい……」
「パパ……」
腕に赤子を抱き締め、緩んでいた頬が強ばりパパの顔が苦痛に歪んだ。
パパは六歳の頃、交通事故に合い両親と記憶をなくした。そこからはうさぎと出会うまで一人孤独に生きてきた。
私だって似たようなもので、両親が国のトップで忙しく一人でいる事が多かった。
誇らしく思う反面、寂しくないと言えば嘘になる。だからせめて姉妹が欲しいと懇願したのだ。
「私も、地球では弟がいて楽しかったわ」
ママも前世は例のルールによって一人っ子。
四守護神がずっと一緒とは言え、一人は寂しかったんだ。
地球で弟がいたのは、前世のママが望んだことだったのかもしれない。
「そりゃあ、あれだけ毎日派手に喧嘩してたら飽きなかったでしょうね」
過去に行って、全てを知っている訳ではなくほんの一部分しか知らないけれど、それでも月野家で暮らした日々の中でうさぎと進悟兄ちゃんを見てきた。
その事を思い出した私は少し皮肉った言い方をした。
「ふふっ今では素敵な思い出よ」
進悟がいたから今の自分が居る。誇らしげにママは笑ってそう続けた。
「じゃあ、第一王女だけに拘らず数人産んでもいい制度にしたのはパパや私のためって事?」
「ええ、単純にキングにいっぱい家族を作ってあげたかったし、スモールレディの負担も減らしてあげたかったの」
「そっか……」
尤もらしいことを羅列して横暴を働いたのだと思っていたけれど、やっぱり根底はうさぎの心が残っているんだなと感じた。
「パパ、抱っこさせて」
ここでようやく私は弟を抱っこしたいと申し出た。
パパから受け取ったその子は、暖かくて軽かった。
「「おかえり、スモールレディ」」
「ただいま、パパ、ママ」
「この子の名前は、ナイトよ」
「ナイト、初めまして。私は貴方のお姉さんで、スモールレディよ。早く大きくなってね!」
自分の事を棚に上げて何言ってんだろうとは思ったけれど、口から出てきたのだから仕方が無い。
「まぁ、スモールレディったら」
ナイトを抱きながら私は、時空の扉を開けてパパとママと共にクリスタル・パレスへと帰って行った。
おわり
20231010 赤ちゃんの日